13
弱い奴のために強い兵器を作ったとして…
ソレを使ったから強い奴に勝てるとは限らねえんだよな。
…俺らが化け物の括りに入ってるってのもあるけどさ。
っと…いつも通り脱線しまくったな。
「んで、どうする?」
「とりあえず研究所に行ってみようか」
「そだね、見学って言ったら入れてくれるかも」
ソレが無理でも魔道博士って言えば入れてくれると思うし。とショコラは付け足した。
最終的には無理やり入るという手もあるし。
「んじゃあ行くか」
リザリーの手紙に書かれてあった方角に進むと本当に森みたいになっている。
「…森の中って言っても近すぎんだろ」
森みたいな場所に入って5分もしない内に研究所に着いた。
…いや、一応森の中だけどさ…森の入口でよくね?
「!誰だ!」
研究所の周りは鉄柵で囲まれており、その周りを警備兵が固めている。
「あ、研究所の見学に来ました」
「見学だと?そんな話は聞いていない」
「一応アポは取ったんですけどね?」
俺の言葉に警備兵は腰に下げてる無線機を取り出してどこかと連絡を取り始めた。
「…取ったの?」
「なわけないじゃん」
「…じゃあなんで…?」
警備兵に聞こえないようにコソコソと話す。
「こういうのはだいたい…」
「許可が下りた、こっちだ…中に入れ」
警備兵が鉄柵の入口まで案内してくれ、そのまま中に入った。
「な?適当に言えば入れるんだよ」
「それで入れなかったらどうしてたの?」
「そんときゃそんときだ、警備兵を殺して無理やりにでも入りゃいいんだよ」
どうせ雑魚しかいないんだから。と言って適当に研究所内を歩く。
…あれ?そういやこの研究所には受付みたいのがねえな…まあいっか。
「!…ああ、なんだ見学者の方々か」
三人で廊下を歩いてると前から歩いてきた白衣のおっさんが俺ら見て驚いたのち何かを理解して呟いた。
「こんなへんぴな場所までようこそお出でになったね?」
「いやぁ、最近話題になってる研究が気になりまして」
「どうぞ隅々まで見学して下さい、どうせこの研究はどうやっても真似できませんので」
おっさんはやる気なさそうなくせにイヤに自身たっぷりに言う。
「そんなに複雑なんですか?」
「複雑…と言うか、常軌を逸してて我々もあの指南書が無ければ研究を進められません」
「常軌を逸してる?」
「はい、あんなモノ誰が書いたんだが…と言うかスポンサーの人はあの指南書を何処で手に入れて来たのやらサッパリです」
恥ずかしい話、我々も何も分からないので…とおっさんはボサボサの頭を掻く。
「…そうですか」
「はい、あ…紹介が遅れました。僕はこの研究所の所長をやっております…」
「所長!こんなところに居たんですか…そろそろ休憩が終わりますよ、今日はスポンサーが見に来てるんですから急いで戻って下さい!」
おっさんと同じ白衣を着た若い男が大声で説教しながら小走りで近づいてきた。
「…今行くよ、じゃあごゆっくり」
「あ、見学者の方々ですか?これはお見苦しい所を……失礼しました」
白衣のお兄さんは俺らに軽く頭を下げて先に歩いて行ったおっさんの後を着いて行く。
「躾というか、礼儀正しさが教え込まれてるなー」
「んー…教え込まれてるワケじゃないと思うよ?」
「だいたい下っ端の研究者とか研究員は素であんな感じでしょ」
「マジで?俺にあの礼儀正しさは無いんだが…」
まあ下っ端以前に、俺は研究者とかじゃねえけど。
普通にただの魔物で、人間で言えば一般人みたいなもんだし。
調停の使者は職業じゃなく、魔王軍っていう一応は軍人だけどトップ不在だから今は職業かどうかも怪しい。
だって魔王軍としての仕事とかが無いから。
…あ、じゃあ良く考えたら俺ってニートだったんだ…
この前、勇者?にヤられそうになった魔王を魔界に還した時からずっとニートかよ。
って事は…人間最強の日比谷とか、アルバトロスは自宅警備員って事になるよな?
もう魔王城が自宅みたいなもんなんだから。
うわぁー…モノは言いようだけど、嫌な響きだなー。
自宅警備員。
げっ、じゃあ俺は放浪ニートか?
確かに公園とかで寝泊まりしてるし…
一般の方々とかリザリーやマキナやショコラ、エルーのように仕事をしてるわけでもなく、自由気ままにブラブラしてるだけだし。
…まだホームレスじゃないって分マシだけど。
それでも…
それでも!俺は社会の屑だったのか!!
働けるのに働かず毎日をムダにダラダラと消費してるだけ!
ただ人様に迷惑をかけてるだけの存在!!
ぐぬぅ……気づかなければ良かった…
なんて悲しい現実だ。
…今更ソレに気づいた所で人間社会で働こうなんて気は微塵も起こらないけど。
そうです、俺は所詮…底辺の屑なんです。
魔王軍の人達に呼ばれてるように負け犬です…へっ。
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