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「そうね、本物を奪いに行きましょ」


「相手は悪党だから奪ってもモーマンタイだろ」


「情報ありがとね」



マキナは男を離すと先陣をきるように走り出した。



俺らは目的地が分からないためマキナについて行く。



「くくく!ココが貴様らの」

「そんな所にいると危ないよー」


「ぶべし!?」



急に現れた男の言葉を最後まで聞かずに蹴り飛ばして全く歩みを止めずに先へ進む。



「おっと、コレは頂くぜ?」



俺は出オチの男からコピー品を奪ってリザリー達を追いかける。



「良く来れたな!『魔操ノ香炉』の効果を…」


「退いてー」


「うおっ!?」



またしても急に現れた男は今度はマキナの蹴りをギリギリで避けた。



「ぐげっ!?」



その男に目もくれずにマキナとリザリーはスルーしたが、エルーがすれ違い様に綺麗にラリアットを決める。



「バカだなー」



呟きながら倒された男の懐を漁りコピー品をゲットしてまた走る。



「止まれ!ココから…」


「邪魔だよー」


「ぐわっ!」



今度は進路を塞ぐように男が立っていた。



それを文字通り一蹴して先へと進む一行。



「く…行かせて…」


「くれんの?じゃ、ありがたく」


「ぐふっ!?」



這いつくばりながらも懐から魔操ノ香炉のコピー品を出した男の胴を蹴飛ばす。



「油断大敵、敵は三人じゃないってね」



転がった香炉のコピーを手に取るも衝撃に弱いのか、さっきみたいにピシピシ…!とヒビが入って崩れた。



あー、やっぱり本物じゃないと強度の面がなぁ。



ガッカリしながらも走り出し、マキナ達に追いつけるようにスピードを上げる。



「ぐわあ!!」


「くそ…!もう一歩なのに…!」



マキナ達が止まってるのが見えたため、スピードを落として隣で止まると広場みたいな所に出た。



ちょうど中心部と最深部の間ぐらいか。



人と魔物が結構集まってて、なんか争ってるような様子だ。



「あ、あの時の少年だ」



最近異世界から来た少年が魔物と戦っており良く見ると近くにギルドマスター的な奴もいる。



「?知り合い?」


「最近話した噂の少年よ」


「ああ、あの異世界から来たって言う」



俺らは茂みに隠れながら人と魔物の争いを観察していた。



魔物は5体

ソレと戦ってるのは7人

おそらく魔物を操ってるのは一人

操者の後ろで魔法陣を囲んでるのが…………ひーふーみー、6人か。



うーん…待つのも面倒ダナー。



「ちょっくら助太刀してくるわ」


「え?じゃあ私も」


「…最初の目的は運動だったわね」


「そうだな、旧時代の遺物はオマケみたいなもんだ」



結局みんな茂みから出てそれぞれ適当に魔物を相手取る。



ギルドの人や邪神信仰団?の奴らは急に現れた俺らに驚いていた。



「やあ少年、また会ったな」


「あ、貴方はあの時の…!」



魔物にやられそうになった絶妙のタイミングで少年の前に出て敵の攻撃を無名で受け止める。



「雑魚は引っ込んでな」


「グギャ!?」



無名一閃で魔物を横に真っ二つにした後に更に縦に切り裂く。



この程度でてこづるなよ…リザリー達も速攻で終わらせてるし、対した強さじゃないだろうに。



「た、助かりました…!よし、一刻も早く儀式を中断させるぞ!」



俺らの協力で魔物を全て退治するとギルドマスター的な男は魔法陣の所へと走った。



「儀式の邪魔はさせんぞ!」


「ぬぅ!どけ!早くしないと…!」



邪魔はさせまいと魔法陣を囲んでた奴らが一人を残して壁になり、ギルドの人達を阻む



「くっくっく…!僅差で邪神は我らに微笑んだようだな!」



残ってた一番偉そうな奴が高笑いすると魔法陣が発光して、辺り一面を眩しい光で覆い尽くした。



「…妾を喚び寄せたのは其方かえ?」



光が徐々に収まっていき魔法陣の上に召喚されたモノの姿が露わになる。



紫に近い艶やかな黒の色のストレートヘアー


着崩した着物で豊満な胸やスラリと伸びた長い脚を惜しげもなく晒し


異様に整った顔なのに眠たそうな気怠い表情



全体的に痴女…?い、いや、妖艶という表現がピッタリな雰囲気を纏ったその姿。




紛う方なき我らが魔王様だった。

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