30
2kmは離したんだからあの場所から戻ってくるには早すぎる。
俺と同じ目的でもない限りはありえないんだけど…
…これが主人公イベントか。
トラブルメーカーめ。
「な、ななな…!なんだこいつ!?」
「グアァ!」
「うおっ!?」
熊のような魔物の突進を少年は寸での所で避ける。
「ちょっ…!ありえねえって!なんだこの生物!」
…どうやら魔物が存在しない次元から来たのか。
つー事は…コレで6人目になるわけだ。
前例の9人中5人は魔物が存在しない世界から来てたらしい。
残りの4人は魔物が存在したり、魔物以外の脅威が存在してる世界から来てたと。
宇宙生物だったり、機械が発展してたり…悪魔が敵だったり。
とりあえず俺たちの世界、次元とは全く別の世界。
俺が考えてる間も少年は必死に逃げ続けていた。
「グオオォ!!」
「増えた!?なんでやねん!」
「グアア!」
熊みたいな魔物とライオンのような魔物に挟まれた少年。
はたから見たらピンチだが、まだツッコむ余裕があるなら大丈夫だろ。
「ちょっ…!ナニコレ!俺めっちゃピンチじゃん!」
一人で叫びながら少年はジリジリと後ろに下がる。
「…ライアス」
「グガッ!?」
「ガ、カ…!?」
二匹の魔物が少年に襲いかかろうとした瞬間…
どこからか魔術名が聞こえ、二匹の魔物の躯を雷が貫く。
短い断末魔の後に二匹の魔物は黒焦げになって倒れた。
「危ない所だったわね…怪我は無い?大丈夫?」
「え?あ、はい」
どうやらリザリーが戻ってきた?らしいな。
助けてもらうタイミングばっちり、って…さすがは主人公イベントだ。
「なぜ学生がこんな所にいるの?この森は普通に来れる場所では無いわよ」
「…え?あー、いや…その…」
少年は質問したリザリーに見惚れて話をあんまり聞いてないっぽかった。
「…まあいいわ、近くの街まで案内してあげる」
「本当ですか!?」
「ええ、ただ少し待ってもらうけど」
それを分かってたのかリザリーはため息を吐いて助け船を出す。
「待ちます!こんな所から脱出できるんならいくらでも待ちます!」
「そう……遅いわね」
どうでも良さげに返事してキョロキョロと辺りを見渡しポツリと呟く。
…んー、そろそろかな?視線でバレる前に出て行くか。
「お、いたいた」
「どこまで行ってたのよ」
「ちょっとそこまで、魔物を撒くのに時間かかってな」
俺はあたかも別の場所から歩いて来た風を装ってリザリーと合流する。
「ん?なんで学生がこんなトコに居んだ?」
「さあ?」
「えーと…誰ですか?」
いきなり近づいて来た俺を少年は警戒するように怪しげな目で見た。
「俺?こいつの知り合い」
「一応幼馴染よ」
「お前は?ってかなんでこんなトコに居んの?」
まあ俺の一番の疑問はなんで言葉が通じてるか…って話だけどな。
見た目的には異国出身…東洋の顔立ちをしている。
学生服もブレザーとかじゃなくて学ランと呼ばれる黒い服だし。
昔で言う所の日本語?ってやつを喋ってるわけでもない。
今こいつが喋ってるのはおそらく世界共通語だ。
「えーと…俺は…」
俺の質問に視線を伏せて言葉を詰まらせた。
「ああ、こいつか。多分こいつだよ」
「え?……あ、そういうこと」
手をポンと叩いて少年を指差すとリザリーは顎に手を当てて少し考え、俺の言いたい事を理解したように呟く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます