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「お帰りなさいませ」


「おう、ただいま」


「ただいまー」



別荘に着くとメイドが出迎えてくれる。



「お久ー、子供達は?」


「お久しぶりです、子供達は学校なので夕方ぐらいには帰ってきますよ」



ん?学校…?キリはココにいるのにか?



「キリ、お前学校はどうした?」


「ミデンちゃんから電話がきたから早退した!」


「…おい」


「あの学校ではキリちゃんの所属してる組織の活動のためなら、ある程度は融通が効くんです」



俺が問い詰めようとしたらメイドの一人が庇うように説明してくれた。



「組織?ギルドじゃないのか?」


「名前が違うだけで活動内容は一緒だよ」


「じゃあギルドでいいじゃねえか」


「役割がちょっと違うの」



はあ?活動内容は一緒なのに役割が違う?



…意味わからん。



とりあえずソファに座るとメイドの一人が飲み物を持ってきてくれた。



「私たちの組織は悪魔祓い専門なの」


「…悪魔専門ねぇ…」



そりゃ確かに普通のギルドとは異なるな。



ユニオンのギルドはほぼなんでも屋だけど。



庭の草むしりからピッキング、魔物退治や悪魔祓い…冒険者ギルドは基本的に依頼ならなんでも受け入れる。



流石に犯罪に加担する内容の依頼は受け入れないが。



でもユニオン以外の国には犯罪専門の違法な裏ギルドも存在する。



だけどもユニオンはそういったのはかなり厳しいため、裏ギルドを発足されたら一週間以内には潰す。



おそらくこの国にもいくつか裏ギルドは存在するだろう。



…子供達のためにも今の内に潰しておいた方がいいかな?



それは流石に過保護すぎるのか?



…うーん、関わった時に潰せばいっか。



ってか今流したけど、なんでコイツ悪魔祓い専門の組織に入ってんの?



「なんで悪魔祓い?エクソシストにでもなるつもりか?」


「エクソシストになるつもりは無いけど…なんとなく、かな?」


「まさか悪魔に襲われてる人を助けた、とか言わないよな…」


「え!?」



俺がため息を吐きながらテンプレ的な事を言うとキリが驚いたように声をあげる。



「なんで知ってるの…?もしかして見てた?」


「うそーん」



俺はコイツらの主人公属性を舐めていた。



ライナは魔道に堕ちた友達を助けようとして


キリは悪魔に襲われてる人を助けて業界入り



ハイブリッド体のあの娘は実験対象にされ、異能の力を手に入れる。



ライナとキリは冥界系統に関わってるなぁ…



「あのミデンを助けたんだけど…実はミデンは転校生だったの」


「は?」


「ある悪魔を探してるって言うから協力してあげようかなー?って思ったんだよ」



…おいおい、コレだけでなんかの小説が書けるんじゃねえか?



なんか王道からは少しズレてるけど…それでも王道だろ。



「あの少年は?実は偶然悪魔に取り憑かれたのを助けてあげたー…とかじゃないよな?」


「…おとーさんホントにどっかから私の事見てるんじゃないの?」



……なんだろう、コイツを主人公だとしたらあの二人はメインキャラクターか?



そして俺はサポートタイプのモブ?



ゲームとかで良く出てくる、主人公とパーティメンバーに修行をつけてあげるキャラか?



そういうキャラに限ってまた無駄に強い設定だからな。



まあゲームじゃないし、コイツにはメイド達がいるんだからそんな展開にはならないっしょ。



「にしてもレイニーデビルねぇ…聞いた事ねえな」


「悪魔が実在するなんて世間にはあんまり知られてないからねー」


「どれくらいのランクだ?」


「んーと…下級から中級かな?」



ああ、通りで俺が知らないわけだ。



俺は特級とその上からしか分からないし。



上級とその下なんて雑魚もいいとこだから名前なんて覚える価値も無い。



「ねえおとーさん、久しぶりに手合わせしない?」


「ん?別にいいけど」


「お話し中すみません、お客様がお見えになってます」



ソファから立ち上がるとメイドの一人が客の存在を知らせてくれる。



「だれ?」


「ミデンちゃんです」


「誰?」


「キリちゃんのお友達ですよ…さっきから話に出てるじゃないですか」



名前に聞き覚えがなく聞き返すとメイドの一人が呆れたようにため息を吐いた。



「人の名前を覚えるのは苦手なんだよ」


「ソコは相変わらずですね、お通ししますか?」


「ん~…今から修練場に行くんだよね」


「じゃあミデンちゃんも連れて行こうよ!」



言うや否やキリは玄関へと駆け出して行く。



「…元気だなぁ」


「キリちゃんは活発的ですからね」


「って事はボーイッシュ系か…」


「妹達はみんな系統が違いますよ?それがまた面白いのですが」



メイドはクスクス笑いながら歩く俺の背中を見送った。

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