35

ちょうど右を向いた時に重傷の少年が視界に入ったが…無視。



「ほい、終わり」


「ありがとうございます」



テキパキと女の子の怪我の手当てをして応急セットと閉じる。



「さーて、風呂でも入ってくっかな…」


「え!?あの!シュイは…男の方は手当てしてくれないんですか?」


「え?なんで男を助けるの?俺はソッチ系じゃねえよ?つーか男なら自力でなんとかするだろ」


「…え…?」



女の子は信じられない…と驚愕した目を向けた。



「応急セットは勝手に使っていいからさ~」


「え!そんな…」



俺はヒラヒラーと手を振って隣の部屋に入り、風呂に入る。



念の為に二部屋借りたとは言え…必要なかったな。



どうせ俺は今日中には別荘に着く予定だし。



風呂から上がり服を乾かして女の子の様子を見に行く。



「うぅ…助けて下さい…」



不器用なのかやり方が分からないのか…少年の周りが包帯やら薬やらでしっちゃかめっちゃかになっていた。



「女の子にそんな泣き顔で頼まれちゃあ仕方ねえな…」



俺はため息を吐いてしたくもない男の傷の手当てをしてあげる事に。



「…この少年は結構重傷…いや、重体だな」


「…やっぱりですか」


「処置があと一、二時間遅ければ、肺炎とかその他諸々で死んでたよ」


「…助けていただいて本当にありがとうございます」



手当てのついでに傷の程度を診察すると、結構酷い。



内臓破裂二ヶ所

左腕と左脚の複雑骨折

肋骨と胸骨が二ヶ所骨折

その他色々な所の骨にヒビ

折れた骨が肺を少し引っ掻いてるし



「まあ…全治4ヶ月って所かな?」



出来る限りの応急処置をして外傷の診断結果を女の子に伝える。



「…この人はいつも無茶ばっかりするんです…今日だって」


「ごめん、興味無いや」



女の子が語り出そうとしたので、俺は立ち上がって部屋から出ようとした。



「ミデン!大丈夫!?」


「いてっ」



ドアノブに手をかけようとした瞬間にドアが勢いよく開き、俺の肩にぶつかった。



声を聞くかぎり、どうやら勢いよく飛び込んで来たのは女の子らしい。



「怪我してるみたいだけど大丈夫なの?」


「うん、私は比較的軽傷だから」


「わあぁ!シュイまでこんな酷い姿になって…!まるでミイラ男だよぉ…」


「キリ、少し落ち着いて」



アタフタと慌てている飛び入り女子を女の子がなだめる。



「うん…」


「あの人が私たちを助けてくれたのよ」



俺がぶつけた肩をさすっていると、なんか女の子に紹介された。



「あ!え?なんでこんな所に居るの?」



飛び入り女子を一目見ようと振り向くと俺を見て驚いている。



「それはコッチのセリフだろ…なんでお前がこんな所にいるんだ?」



…ついでに俺も飛び入り女子の顔を見て驚いた。



「違うよ!私のセリフだよ!」


「…えーと…キリ、この人と知り合い?」



女の子が俺とキリを交互に見て不思議そうに尋ねる。



「え?知り合いって言うか…」


「え?キリと知り合いなんですか?」



キリの言葉を聞いて意外そうに俺に尋ねた。



「まあ知り合いっつーか…」



俺もキリも歯切れ悪く?答える。



「??」



女の子はよくわからない、と言った感じで首を傾げる。












「…って言うか!なんでこんな所にいるの?おとーさん」


「え」


「俺は「ち、ちょっと待って!」」



俺が話そうとしたら女の子が遮ってきた。



「お、おとーさん!?おとーさんってもしかして父親の事…?」


「そだよ?戸籍上は、だから血は繋がって無いけどね」


「うそっ!見た目は私たちと変わらないじゃん!」


「そだね、おとーさんは私と5歳しか離れてないらしいし」



そう、実は俺の見た目は死ぬ前から全く変わってない。



だから見た目年齢で言えばキリやライナと同じ。



女の子はものすごく驚いたのか口が半開きで唖然としていた。



「で?三回目だけど、おとーさんはなんでいるの?」


「久しぶりにお前たちに会いに行こうと思ったら、豪雨の中でその女の子が助けを求めてたから助けた」


「…豪雨の中で傘も差さずにずぶ濡れで歩いてたの?」


「なわけないだろ、ちゃんと喫茶店で雨宿りしてたわ」



キリは呆れたような感じで俺の話を聞いている。



「話が合わないよ」


「分かりやすく言うと…喫茶店で雨宿りしてた、女の子の叫んでる声が聞こえた気がした、ダッシュで向かった、助けた、だ」



俺はジト目のキリに順序立てして説明した。

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