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「うわー…ツイてねー」



俺が船から下りると同時に雨が降り始めてきた。



とりあえず走って近くの建物に避難する。



はぁ、たまには船の移動もいいよな。って気分だったから影移動しなかったのに…



雨が降るんなら直接屋敷に影移動すれば良かった。



せっかく久しぶりに別荘に遊びに行こうと行動に移した途端にコレかよ。



鬱やわー…



商業大陸からの移動だけで10時間もかかったのになー。



適当にそこらの喫茶店に入って雨が止むまで時間を潰す。






ところが雨は止むどころか更に強さを増してきている。



「…?」



窓際の席に座ってボーッと傘を差して歩く人や車に馬車の行き交いを見てると直勘が反応した。



…女の子が…叫んでる?



……ココから約1km先で助けを求めてるような…



流石にそれは俺の妄想かな?…だよねー。



とは言え、居ても立っても居られなくなった俺は会計を済まして大雨の中を走った。



何も無ければそれでいい…が、俺は自分の直勘を信じる。



「誰か!助けて!」



豪雨に近い雨の中を走る事約10分。



街の端っこ辺りで女の子がずぶ濡れになりながら叫んでいた。



地面に横たわる男?を抱えながら必死になって叫んでいる。



「どうした?」


「助けて下さい!私の所為で友達が…!」


「キキー!逃げられると思ったか!」



女の子が俺に縋るように訴えかけると、上から猿が降ってきた。



「なんだぁ?」


「れ、レイニー…!?こんな時に…!…はっ!いけない、逃げて!」


「キキー!ご飯だ!」



猿を見て悔しそうに呟くと俺を見て叫んだ。



猿は俺に向かって飛び込んでくると口をガパッ!と開けて噛み付こうとする。



俺は剣を抜き猿を横に一刀両断、斬り裂いた。



「キキー!タダの人間じゃないなー!」


「実体じゃない…?」




真っ二つにしたハズの猿が俺の後ろで元通りになっている。



「…悪魔か、じゃあまだこの剣では斬れないか…」


「キキー!お前…美味そうだ!」


「ダメ!ソイツに物理攻撃は…!」


「キキー…キっ!?」



再度飛びかかってきた猿を回し蹴りで吹っ飛ばす。



「残念、素手では悪魔に触れるんだよ…っと」


「ギッ!!」



吹っ飛んだ悪魔を追いかけ、止まって倒れた所で踵落としを食らわせる。



「南無阿弥陀仏…アーーメン!」


「ギュアっ!!?」



俺は適当に念仏を唱えサッカーボールのように猿を思いっきり蹴飛ばした。



そして女の子の所に行く。



「大丈夫?」


「え…?あ!はい!」


「怪我してるじゃん…えーと、仕方ないホテルにでも行くか」


「えっ!?」



俺の言葉に驚いてる女の子の腕を掴んで引っ張り、そこらのホテルにチェックインした。



当然男は肩に担いで、な。



「ほら怪我の手当てするから服脱いで」


「え?その…そこまでは…」



俺はホテルに備え付けられていた応急セットを取り出して、女の子の傷の手当てをしようとした。



俺って女の子には優しいんだぜ?



別に女の子の裸が見たいとか、麻酔で動けなくして押し倒したい…



とかは少しぐらいしか思ってないよ?



ソレに勘づいたのか女の子は遠慮するように俺から離れる。



「自分で出来るならいいけど…じゃ、俺は邪魔にならないように隣の部屋に行くかな」


「え…?あ、あの…!」


「ん?」



俺の反応が予想外だったのか、女の子は一瞬面食らったような顔をした。



そして引き止めたいのか俺の服の裾を掴む。



「や、やっぱりお願いしてもいい…ですか…?///」


「ぐふっ…!」



モジモジと恥じらったように上目遣いしてくる女の子の姿に、俺は速攻で右を向き鼻を押さえる。

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