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それでも辛うじて避けようと頑張ったのか、右腕一本だけで済まされた。



本当なら横一閃で斬り裂くはずだったのに。



「くそ…!こんな所で…!」


「わお…マジで?」



男が呟くと徐々に姿が変わっていく。



魔物の細胞を注入されたんかい、でも不安定だな。



斬り飛ばした右腕が生え、どんどん毛深くなり…さながら熊のように変貌した。



「ガアア!!」



熊のようになった男は吠えると同時に俺に向かってくる。



「おう」



さっきよりも速い動きで腕を振るい強靭な爪で攻撃してきた。



あれ?あの爪…もしかしたらさっき持ってた剣じゃね?



ははぁ…そういう事か。



剣もそういう風になるための特殊な素材で作られてたってわけね。



そっち方面の研究は中々進んでるなぁ…どうりでリザリーが攫われるわけだぜ。



おそらく、マキナが対峙してる相手は盾と鎧を身に纏ったまま変化するはず。



リザリーはその強度に驚いた所でスキを突かれた…って感じか。



魔物細胞抑制剤を欲しがる理由も理解できた。



こいつらはまだ不安定だから元に戻るかどうかは分からない、っつー事だろ。



昨日は運良く元に戻ったらしいがな。



あの急に消えた2つの気配がこいつらだったわけね。



こいつらが……リザリーを攫った。



「ガ、ガア……」


「はあ、そろそろ我慢の限界かな?」



抑圧してないから殺気を抑えるのも大変なんだよね。



抑圧してない俺が、親しい女の子を敵に攫われ…更にレ○プされると知ってここまで理性を保てたのは奇跡に近い。



…が、そろそろ限界だ。



野生の本能と言うべきか、熊になった男は俺を恐れている。



「ははっ、お前も哀れだからな…大人しくしてるんなら一撃で楽にしてやるぜ?」



ソレを聞いた熊になった男はダランと腕を下げ、戦闘態勢を解いた。



「約束は守ってやる」



素早く距離を詰め、七転抜刀で熊になった男を倒す。



「ふぅ…残る敵は何体かな?」



一回深呼吸して心を落ち着かせ、波のように押し寄せてくる殺意を何とか押し込める。



マキナが負けてるとは思わないけど、敵が敵だし…



この展開的に…ねえ?微妙。



俺は次の部屋に進もうとしてある異変に気づいた。



…この部屋の敵の気配が消えていない。



「グフゥー…!グフゥー!」


「ははっ…コレは試練かなんかか?」



この後に及んで俺の強靭な精神を更に鍛えよう、ってか?



ふざけんな。




俺はもはや殺意を抑えずに敵の所へ走る。



「グルファ!!」



俺の剣と敵の爪がぶつかり合い、激しい金属音が鳴り響く。



「ガアァ!!」



敵の噛み付きを避けて顎を蹴り上げた。



「グフゥ…!」



後ろへ仰け反ったスキを見逃さずに横一閃で斬り裂く。



そして更に上半身を斬り裂き、下半身も斬り裂く。



敵の体がバラバラになるまで斬り裂いた後に魔札を使って肉片を燃やした。



「くそ…20分ほど時間を取られたか」



俺は無名を鞘に納めて次の部屋へと走る。



「く…カ…か…」


「まだ?しぶといよ」


「ガフっ!!」



ドアを開けて中に入ると、マキナが二足歩行する亀のような生物の頭を殴り潰していた。



「あ、程人そっちは終わったの?」


「ああ、そいつ…まだ生きてるな」



俺は倒れた亀のような生物に近づく。



そして息を軽く吸って剣に手をかけ、七転抜刀でバラバラに斬り裂いた。



…思ったより堅かったな、だが斬れない程ではない。



「…え?程人どうしたの?」


「別に、さっさと終わらせたいだけだ」


「…もしかして…殺意に呑まれた?」


「なわけないだろ、歯止めが効かないんだよ」



今の俺はおそらく目に映るモノはマキナでさえ殺そうとするだろう。



だからマキナを見ないように目を伏せて次の部屋に向かった。

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