20

「色々と世話になりました、ありがとうございました」



翌日、俺は朝早くから祖国に戻る少年の見送りに強制参加させられた。



「ふああ~…なんで俺まで…」


「一応剣を鍛えてあげたんだから見送りぐらいしなさいよ」


「剣を鍛えてやったんだからゆっくり眠らせてほしい…くあー…ぁ」



一週間ぶりにゆっくり寝れると思ったのに…



なんでこんな太陽が上がり始めるような時間帯に起こされにゃならんねん。



「それじゃあ頑張ってね」


「鍛練を怠るなよ」



それぞれ激励?の言葉をかけて少年が歩いて行くのを見送る。



「よーやく寝れるぜ…」


「さっきまで寝てたじゃない」


「たかだか7時間で眠気は取れない」



呆れたようにため息を吐いたリザリーをスルーして俺は研究所の客室の方へ向かう。



「じゃあお休み~」


「ああ」


「うん、お休み」



ヒラヒラー、と手を振ってドアを閉めてベッドへダイブする。



そして1分ほどで俺の意識は底へ沈んだ。
































































「あ」



俺は太陽がドップリと沈んだ夜…もはや深夜と呼べる時間帯に起きた。




…誰か来やがった…この研究所に侵入者なんて初めてだな。



ベッドから下り、背筋を伸ばしてから首を左右に傾けゴキゴキと骨を鳴らす。



「くあ~……ぁ…ふぅ」



なんでこんな草木も眠りそうな時間帯に来るんだよ…



ただならぬ気配は5つ、そうでもない奴の気配は3つ…侵入者は全部で8名か。



とりあえず気配が3つ固まってる場所へ向かった。



あ、もちろん気づかれないように気配を消してからだよ?



「おい…!……急げ…!…はや……!」


「分かっ……!こ……急……!」


「…じきに……だ……!」



研究資料室で三人の男が言い争うような感じで会話している。



俺は音もたてずに無名を抜き、男達に近づく。



「…あ…?…!!」


「!!?」


「うわぁ!!げぶっ!!」



一人目の男は背中に剣を突き刺してそのまま下に切り裂いた。



二人目はそのまま縦に真っ二つ。



流石に三人目には気づかれたが、横一閃で真っ二つ。



トドメとして上半身だけの頭に無名を突き刺す。



男達から流れ始めた血を少しだけ掬って舐め、死体と血は魔王城の保管庫(特製)に影移動させる。



こいつら…産業スパイって奴か?



あ、また新しく2名のデキる奴が増えた。



どうやらまたこの研究所に二名の侵入者が増えたようだ。



おそらくエルー達は既に起きて、なにかしらの対応をしてるだろう。



ん?あれ…?この侵入者達…何かを探すような動きじゃないぞ…?



…奴らが目指してる場所ってもしかして…!



研究所の最重要研究室…通称『アンノウンボックス』か!



その特別な研究室はこの研究所にいる人達ではリザリーとマキナ、エルー…例外で俺、しか入れない。



そしてアンノウンボックスは全ての研究所に必ず存在する。



普通の研究室の三倍ぐらいの面積があり、リザリー、マキナとその友達しか入れないらしい。



どうやらその中には俺の昔の研究資料を元にした極秘研究資料があるとの事。



因みに俺の昔の資料の原本とされる紙束はあの地下施設に…かなり厳重に保管してるはず。



実はあの紙束は俺が忘れないように走り書きした紙と、リザリー達が使った…覗き見自動書記の魔術で書いた紙を合わせたものだってさ。



覗き見自動書記の魔術『ピーピングオート…なんとか(忘れた)』



その名の通り、離れてる対象者の動向を事細かに紙に自動書記してくれる。と言う複合型中級魔術。



その魔術を使ってリザリー達は俺がしてた研究の内容を見てたらしい。



俺の昔の研究の原本はA4サイズの紙が約500枚綴られてるそうだ。



ソレを元に一般向けに改良してる資料…が敵の目的か?



あ、やべ…!そういや、あの魔札と魔石、手錠と魔法陣やハイブリッド体の研究資料もあったな!



まさかソレが目的じゃないだろうな…?



だとしたらヤバイ…先回りしなければ!



俺は敵より早く辿り着くため、影移動でアンノウンボックスに移動した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る