5
俺が一人で考えてるとエルー達は少年の話を聞いていた。
「へー、国を救うために…ねえ」
「はい」
「王国騎士団のトップが黒幕だったなんて…中々の盲点ね」
「騎士団は王の信用を簡単に得られるから、野心が芽生えたんだろう」
なんか俺抜きで盛り上がってるし。
「で、その剣を託されたの?」
「はい、俺の先祖が使ってた物らしいです」
「それでおじいさんのツテのツテのツテのツテ、のエリアのツテでコッチに来たってわけか」
「だそうよ」
リザリーがいきなり俺に話を振る。
「簡単に説明してくれ」
「祖国が悪者に乗っとられそうだから、倒して国を取り戻すために…と剣を託された」
「ふむふむ」
「おじいさんのツテで修行の旅に出て、そのツテのツテのツテでエリアに出会う。そしてエリアのツテでコッチに来た」
んん?なんか複雑化したぞ?大丈夫か?
「で?俺に何の用だ?」
複雑化したあらすじからようやく本題に入れた。
「この剣を鍛えて欲しいんです」
「は?それならそこらの鍛冶屋に持ってけば?」
なんで俺なんだよ、確かに鍛冶スキルは超越してるけどさ…
趣味みたいなもんで本業じゃねえぞ。
「色んな所を回ったのですが…これは無理だ。と言われました」
少年から剣を受け取り鞘から引き抜く。
「うわ…凄く錆びてるね」
「かなり昔の物だから当然と言えば当然だけど…使い物にならないわね」
「かなりボロいが…手入れはしてなかったのか?」
剣はボロボロでかなり錆びている。
だが…良い剣だ、きっと元々は名剣と言われてたであろう材質の良さ。
刃の周りは錆びて使い物にならないが、刃の真ん中、芯の部分はまだギリギリ使えそう。
「コレ、もう無理じゃない?捨てて新しい剣を買ったら?」
「…コレ、持ってみたら分かるけど…良い剣だぞ。ほらよ」
俺は抜き身のままエルーに渡した。
「ん…確かに、見た目では分からないが持つと分かるな」
流石、剣を相棒にしてるだけはあるぜ。
リザリーとマキナは持っても何も感じないらしいが。
…ショコラだったら分かったかもしれんのに…
「ただのボロい剣にしか思えないよ?」
「同感」
「まあコレは仕方ないか」
こいつらは別に普段から剣を扱ってるわけじゃないし。
その割に二人とも剣の技術は凄いっていう。
俺やエルーと戦っても引けを取らないからな…
それでエルーが一時期かなり落ち込んでた時があった。
俺は相棒が剣斧槍だから特に気にならなかったけども。
「は~…コレを鍛えるって言ったら材料が凄い事になるぞ?」
「…材料、ですか?」
「当たり前だろ、このボロい剣をただ打ったら壊れるわ」
錆びてる上にボロいんだから何かしらの材料で強化しないといけんだろ。
「どれくらいですか?」
「ん~、どれぐらいのレベルかにもよる」
最低だと二種類
まあまあだと三種類
そこそこだと四種類
十分かな?だと五種類
最高だと七種類、だ。
「最低二種類、最高七種類…」
「材料は紙に書いとくよ」
そこらへんの棚から紙を取ってスラスラと書く。
リザリーが書き終えた紙を取って読み始めた。
「水晶鉱石、ゲル樹木液、輝竜鉱石、冷清水、鍾乳硬石、炎粉、重効樹液……ナニコレ」
「全部危険度Sの奥地からしか採取出来ない物ばかりだね」
「ハードルが高すぎやしないか?」
「多分それらの材料がこの剣を本来の姿に戻すと思われ」
俺の直勘だから当たってるかは分からない。
けど、そこそこの出来栄えにはなるでしょ。
騎士団のトップと戦うんなら武器だけでも上等にしとかないと、良い勝負にもならないぜ。
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