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とりあえず研究所に移動。



「あら、帰ってたの?」


「昨日の夜な」


「で?どうだった?」



リザリーもさっきのマキナと同じ質問をしてきた。



「その前にエルーはいんの?できたらまとめて話したいんだけど」


「そう、ちょっと待ってて」



リザリーは席を立って研究所のどこかへと歩いて行く。



そして5分後。



「うわっ!!」



エルーが何かから逃げるように応接室に飛び込んできた。



「待ちなさい、まだ終わってないわ」


「待て待て、その薬はヤバイやつだろ!」


「この前、試作品と称して私に媚薬を飲ませたわよね?」



ぎくっ!とエルーの肩が小さく跳ねる。



「あの時はあいつがいたから良かったものの…」



まさか、まさかまさか…あの天界に行く前か?



いや…アレは夢だったハズ、多分俺と会う前だろ、うん。



きっとそうだ、あいつってのも女の子だろう…俺にそんなおいしいイベントがあるわけがないしな。



「マキナ」


「はいはーい」



リザリーに呼ばれてエルーを後ろから羽交い締めにした。



「くそっ!離せ!その薬はマジでヤバいんだって!」


「どういう効果なんだ?」



こいつがここまで暴れてまで拒否るとか…



ちょっと気になるんだけど。



「思考をちょこっと変えるだけよ」


「俺は今のままでいい!」


「…ああ、なるほど」



そう言えば性同一性障害用の治療薬的なのを研究してたな。



確か、俺の発言が研究の発端だったっけ?



『身体の通りの考えに矯正すればいいんじゃね?』だったハズ。



それで脳内ホルモンの分泌を調整する薬を開発してたな。



面白そうだ、俺も協力してやろう。



「ふがっ!?ふがふが!!」



俺は身動きが取れないエルーの鼻をつまんで無理やり口を開けさせる。



「ナイスアシストよ」



リザリーはエルーの口に粉薬を入れて水を流し込む。



そして口を閉じさせた。



「んぐ!?んー!んー!……っ!」



マキナに後ろから羽交い締めにされ、俺に鼻をつままれ、リザリーに顎を押さえられ…



無理やり薬を飲み込ませる、と言う結果に。



「げほ!げほ!ごほっ!ごほっ!!」



飲み込んだのを確認して俺らは一斉にエルーから離れる。



すると、すごい勢いで咳き込んだ。



因みに…少年は居心地悪そうにそれを困惑した顔で眺めてる。



「さて、ちょうど揃ったし…詳細を話して」



未だに床に蹲り咳き込んでいるエルーを華麗にスルーして、俺らはソファに座った。



「おいエルーうるさいぞ、少しは静かにしないと話せねえよ」


「ごほっ…!覚え、てろよ…!」


「ははっ、立場逆転ってな」



いつもの俺に対する仕打ちよりは断然優しいじゃねえか、だからそう睨むなや。



あの街で魔獣を倒した事や俺の息子?と会った事、その友達が犯人だった事を話した。



あ、あとついでに王女と再開した事も。



「ファインプレーよ」

「コレでまた貸しが作れるね」

「もう頭が上がらないんじゃないか?」



などの意見…意見?を言われた。



一体俺らはオーストラリアの王族にどれぐらいの貸しを作ってる事やら。



エルーの言うとおり、本当に俺らに頭が上げられないんじゃね?



「それにしても魔獣の数が異常だな…俺の時のほぼ100倍だ」


「私は何万体来ようが蹴散らせるわ」


「一回だけでいいから、魔獣の大軍と戦ってみたいな~」



孤軍奮闘って言うの?とマキナは楽しそうに笑う。



なんだこいつら…ヴァルキリーかワルキューレかなんかか?



あー、でもヴァルキリーとかワルキューレって戦いに命を捧げる女の事だよな?



その称号は処女じゃないとダメなのか?

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