32
この前に聞いた話では…一回本名で研究を進めた事があって、ソレを元にした変な本が発売されかけたと。
あの美人研究者~とか可愛い研究者~のやつね。
アレ以来、研究者として活動する際はもう偽名しか使わない。と思ったってさ。
その偽名は世間に名を轟かせるらしく、研究者の中でその名を知らぬ者はいない…と言われるほど。
魔術を勉強し、魔術師を目指す子供達からしたら雲の上の存在らしい。
理事長がさっきそう言ってた。
…俺との差がありえないほど離れてるんだけど…
昔からの縁とは言え、このままコイツらの隣に居ていいのか?
明らかに不釣り合いのような気がするが。
マイナス思考に陥りながらもリザリーやマキナの説明に合わせてカチカチとボタンを押す。
一旦説明が一段落した所で、ようやくリザリーが自己紹介を始めた。
…遅ぇよ、最初にやれや。
「私が五大魔導博士の一人、アイリスよ」
リザリーは軽く頭を下げる。
女子生徒達がきゃあああ!とざわめき拍手喝采?的なアレ。
「私も五大魔導博士の一人だよ、ミリアね」
マキナはウインクしてから軽く頭を下げた。
今度はうおおお!と男子の声が体育館に響き渡る。
「「そして…」」
全然喋ろうとしない俺を見兼ねてなのか、二人が声を重ねるようにして俺の方を見た。
「はぁ…俺は助手のバニシュだ、よろしく」
ため息を吐いて立ち上がり、軽く挨拶してからドカッとパイプイスに座った。
助手の紹介とか要らなくね?まあいいか、もう終わったんだし。
生徒達も誰あれ?みたいな不思議な視線を送ってくる。
今更ながら、生徒達を良く見ると…どうやら中等部と高等部が集められてるようだ。
数にして500人ちょいぐらいか…?目測でな。
そしてリザリーとマキナの講義が再開した。
小難しい話は省くとして、大体30分ぐらいで終了。
「さて、何か質問はある?」
講義が終わったあとの質問コーナー。
多分コレだけで残り時間全て使うんだろうなー。
手を上げてたのは三人だけで男子二人に女子一人。
男子の一人はメガネをかけていた。
「じゃあそこのメガネをかけた君」
「はい、あ…マイク…」
司会からマイクを渡されてメガネ男子が質問を言う。
「先ほどの魔術発動の原理と素粒子の関係性による発表の一部について質問したいのですが」
「真面目でつまらないから却下、はい次は…あと一人の君」
俺が即答に近い感じでメガネ男子の質問を却下した。
んなクソ真面目な質問を生徒達の前でやる根性は凄いと思うけど…
ぶっちゃけ他の生徒は興味ナシだからね?
「え?もう俺?えーと…個人的な質問になるんだけど…」
「個人的でも構わないよ」
「俺、どっかの研究者に魔力の質が良いとか言われて、一般校から魔法学院に高等部から編入させられたんだけど…未だに魔術が全く使えなくて…どうしたら使えるようになりますか?」
「「努力」」
少年の悩み相談?的な質問を二人はスッパリと切り捨てるように言い放った。
「努力はしてる!それでも使えないんだよ!教師や専門家にも原因不明だとか言われるし…」
「原因不明?ただ努力が足りないだけだと思うよ?」
「そうね、じゃあ一日17時間集中してみましょうか。それを三ヶ月続けても魔術が発動出来ないんなら…ちゃんと原因を調べてあげるわ」
「じゅ、17時間!?しかも三ヶ月毎日続けんの!?絶対に無理だって!」
男子はリザリーの回答に仰天したらしく、無理無理!と首を激しく左右に振る。
「…ミリアの言う通りただ単に努力不足じゃねえか、才能が無いんならその分努力で補えよ」
「所詮は努力してる『つもり』だったのよ、才能うんぬんの話じゃないわ」
「そうそう、無理無理言ってる内は魔術を使えるようにはならないね」
二人は男子に対して更に追い打ちをかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます