16
俺は影移動でリザリー達を所定の場所に送った。
「…大丈夫ですか?」
「全力の俺に勝てる可能性がある奴らだから大丈夫じゃない?」
俺の事を良く知ってるだけにあいつらとはあまり戦いたくない。
死にはしないが負ける可能性は半々ぐらいだし。
俺の手の内を知ってるからなぁ…
まあ俺もあいつらの手の内は知ってるけど。
それでも魔術を使える奴には切り札と奥の手がある。
魔術は応用が利く、そこらへんはあいつらのアドバンテージだ。
魔術を使えない俺との差…切り札が有るか無いかで戦況は大きく左右される。
俺が魔物になってなければ埋められなかった、一般人と魔術師のマリアナ海峡よりも深い溝。
…ソレを埋めるほどの力を手に入れたのは幸運か?
そのまま死んでれば何も無く楽だった気がするけどな。
イカンな…考えると弱気やネガティブになるのは俺の悪い癖だ。
だけど現実は見ないといけんし…
最強になる、と夢を見て必死に努力してた昔が懐かしいぜ。
まあ夢は覚めるものだから現実の壁にぶち当たって、引き戻されたガッカリ感はヤバかったけど。
夢は見るもんだからいずれは覚めるんだぜ?
それなら夢を見るよりまだ現実を見てた方がよっぽどマシじゃないか?
さて、ネガティブな事を考えるのは終わろう。
恩を返すために一働きしますか。
「なあ、人間は今どこにいんの?」
「毎日のように宴をしてるらしいから…バッカスの家の広場だと思う」
「あのヒゲ…まだ酒浸りしてるんかい」
酒の神様だかなんだか知らんが毎日毎日酒ばっかり飲みやがって。
見とけよ、この俺が痛い目を見させてやるわ。
俺はエリュシオンに警備状況を聞いて宮殿みたいな家に影移動した。
だが残念ながらバッカスの家では無い。
クロノスと言う名の、天界でも5本の指に数えられる程の神の家だ。
理由は宝剣を拝借するため。
天界は少し変わった事に…創世神、創造神、大地神、時空神、天空神の家に宝物庫があるんだよね。
そして…
大地神の宝物庫には盾
天空神の宝物庫には服
時空神の宝物庫には剣
創世神の宝物庫には秘宝
創造神の宝物庫には装飾品
と言ったふうにそれぞれ天界の宝が分けられて納められている。
なんで宝剣を手に入れる必要があるのかと言うと…
天使達を殺さないために。
天界のバランスを崩すと調停者がうるさいんだよね。
他の世界との均衡が崩れる、だのなんだの。
ほら、一応俺って調停の使者じゃん?
そこんとこ考えないといけないんだよねぇ~。
そんで、宝剣の『バーンアクセ』が必要になってくると言うわけ。
この宝剣の効果は『斬ったものを一定時間この世界から除外させる』と言うもの。
…但し天界の生物限定だが。
一回斬るだけで一定時間は消えるから、殺さないで邪魔物を排除するのにちょうどいい。
時間はこの前計ってみたら12時間だった。
12時間とか…十分過ぎるんだけど。
つーわけで、俺は今宝物庫の中にいる。
しかも狙いの宝剣の前に。
「侵入者を感知して来てみれば…貴様はこの前の…」
「ん?あー…クロノスじゃん、久しぶりー」
宝剣を手に取ると宝物庫のドアが開いて時空神が入ってきた。
「今度は何の用だ」
「ちっとばかし女神に頼まれてな、まあ恩返しってやつ?」
「そうか…だが何故『バーンアクセ』を持っていく」
「殺さずに騒ぎを収めるにはちょうどいいかな?って」
理由を説明すると時空神はそうか、と言ってドアを閉めて宝物庫から出て行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます