03

「ありゃ?」



全力で回避行動に専念してると海から少女…いや少年?が上がってきた。



一応ココは港の船着場ではあるけども、明日の午前中までは貸切?的なアレで一般人の立ち入りは禁止されている。



王族に万が一の事が無いように…と言う上の提案だったらしい。



海の中からヒョコっと顔を出した少女?は俺とリザリーを見た瞬間にまた海に引っ込んだ。



そしてコンクリートに手をかけて顔を半分だけ出し俺たちを見ている。



余裕そうにからかい、笑いながら攻撃を次々と避けてる俺。

(両手両足拘束されてる)



からかわれてイラついたり照れたりして攻撃を次々と繰り出すリザリー。

(上着を脱ぎタンクトップのショーパン姿)



とても常識とはかけ離れた状況に少年?も目を丸くしてるようだ。



しかもリザリーは俺に攻撃を当てる事に集中してるのか、少女?に気づいてない。



「うーん…ふげっ!」


「やっと掴んだ」



俺の変則的な動きに慣れてきたのか、リザリーの拳が腹に減り込んだ。



「ふふふ…さっきからよくも私をからかってくれたわね」


「だって楽しいし」


「…これはお仕置きが必要ね」


「いや、全然必要無い…うおっ」



動きを捉えられた俺、一撃目をスレスレで避けてれても……次の攻撃は避けられなかった。



動きが読まれてる。



結局両手両足が拘束されてるから逃げ回るパターンが限られてくるんだよね。



曲がる、捻る、前転、側転、後転…コレだけでしか回避行動が取れないんだぜ?



まず、歩けねぇし走れねぇ。



俺の驚異的なボディバランスを持ってしても、ピョンピョン跳ね回るだけだ。



しかも走るよりも速度が遅いからすぐに捉えられるっていう…もはや無意味。



と言うわけで、またしてもリザリーのサンドバッグ化しました。



やっぱりこの状態で煽ると危険だね。



最初っから分かりきってた事だけども。



あ、でもこの状態でも一般人…ヤクザとかヤンキーとかスポーツの格闘家ぐらいなら余裕で倒せるよ?



「ところで…あの子は何時からいたのかしら」



サンドバッグと化して投げ技や関節技を受ける事10分。



俺の動きを捉えて余裕ができたのかリザリーは未だにこっちを凝視している少年?に気づいた。



「さっきからだよ…痛てて、ったく」



普通の一般人ならさっきのも合わせると…少なくとも30回は死んでるぞ。



怪我が治るのも遅くなってきたし…首関節は流石にヤバイって。



それでもリザリーに反撃してない俺、マジ紳士。



「マジで死んだらどうすんだよ」


「大丈夫よ、ちゃんと回復の度合いは見てるから」



それって逆にタチ悪くない?



まあ動きが鈍らないように鍛錬するのは良い事だけどさ…



俺の身にもなれよ。



……いや、煽ったのが原因だから自業自得か。



「ねぇ君、ココは立ち入り禁止になっているはずだけど?」


「あ、あの…ゴメンなさい!その…!どうしても、魚が取りたくて」



リザリーが優しい笑顔で少女?に近づくと海から上がり凄いビクビクしながら返事をした。



「ざまぁ、怯えられてやがんの」


「黙りなさい、このマゾ豚野郎」


「ぶひぃ…」



刺すような視線で制された俺は冗談混じりに鳴き真似をする。



「マゾ豚…?」


「アレはね、痛めつけられると喜ぶ変態さんなのよ」


「ヤメろ!そんな子供に間違った情報を与えるな!」



リザリーは少年?の頭を撫でながら変な情報を刷り込もうとした。



「変態でしょ?」


「否定はできん!が、肯定したくない」


「うわぁ…変態さんなんだ…」



ゴミを見るような目で見られた……この反応は多分女の子だ。



変態にさん付けする辺りが女の子っぽい。



なんだろうこの心がギリギリと締め付けられるような痛みは。



肉体的ダメージを与えてなお、精神的にもダメージを負わせる気か!



「あの変態さんは放置して、あっちでお姉さんと話しましょうか」


「うん!」



早くも少女の心を掴んだリザリー、俺を犠牲にして自分の心証を上げるとは…恐ろしき魔女め。

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