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「くくっ…!寝言かどうか、確めて見ろ…その身体でな!」



男が地面を蹴ったと思えば直ぐ横で拳を振り上げる。



剣でガードすると、手甲を着けてるわけでも無いのにギイン!と音が鳴った。



…チッ、ダークマターを覆う事によって硬度を出してるのか。



ギイン!ギイン!と音が響く中、俺は防戦一方だった。



「そこだ」



隙を見つけ、喉を狙って剣を突きたてる。



「効かぬわ!」


「…マジかよ」



全身ダークマターで覆ってやがる…人体には有害って事を知らないのか?



このままじゃジワジワと腐食していくぞ?



腕を伸ばした状態の俺に男が手刀で攻撃してきた。



なんとか体を捻って避け、距離を取る。



「相変わらず逃げ足は速いようだな」



男の口から発せられた声は人のものとは思えないほど、割れていた。



「これはこれはルシファー様じゃありませんか、そんな人間ごときに手こずるとは」



俺は語尾に(笑)が付かんばかりにバカにしたように言う。



「黙れ!虫けらが!」



ルシファーが叫ぶと辺りに強風が吹く。



「その虫けら一匹すら退治できなかった情けな~いのは誰よ、俺に向けたつもりが自分に返ってきてるぜ」


「黙れと言っておろう!」



ダークマターが針状になって何千本と俺の所に降り注ぐ。



やべっ!挑発し過ぎた…



なんとか剣で弾くも如何せん数が多い。



ダークマターが降り終わる頃には辺りが砂煙に包まれた。



あっぶねぇ…あと300本ぐらいあったらかすり傷ぐらいは負ってたかも。



まあすぐに回復するから意味ないんだけど。



「ぐ…貴様…まだ……うおぉ!」



まだ主導権争いが続いてるんかい。



一般人にしては異様なぐらいの精神力だな。



「ぐ…こいつを…殺すのは…俺だ…!邪魔するなぁ!!」


「なんでそんなに俺を殺したがんの?」



心当たりは星の数ほどあるけど…全く思い当たらない。



「倒すべき化物が人間と仲良くしてるなんて…許せるか!」


「心狭すぎだろ」


「あの時…貴様を殺せず、逆に返り討ちにあった俺に待っていたのは地獄の様な仕打ちだった」



いや、一人語りはしなくてもいいよ?別に野郎の過去なんて興味ないし。



「町から異端分子たる魔物を追い出した俺は本当なら英雄視されるハズなのになぜ…なぜ俺が異端分子の扱いを受けねばならぬ!!」


「当たり前だろ、俺は別に町民に迷惑をかけてたわけじゃないんだから」



むしろ町民の役に立ってたぐらいだぜ?



そんな奴に言いがかりを付けた上に追い出して殺そうとしたら…ねえ?



そりゃ異端分子扱いされるって。



「貴様みたいな化物が人の中でのうのうと息を吸ってるなど俺には許せなかった…それを良しとする町民も理解できない!」


「だから、迷惑をかけてないからだろ」


「黙れ!貴様は…その存在そのものが万死に値するのだ!」



男がまたしても襲いかかってきた。



さらに濃度の濃いダークマターを身に纏い。



…速っ!うっそーん…避けるのがやっとで反撃できねぇ。



男はさっきよりも速い速度で攻撃を繰り出してきた。



…くっそー…ダークマターによる強制リミッター解除かよ。



おおよそ人間ではありえない力と速さで反撃を許さず次々と攻めてくる。



それを剣でなんとか受け流したり避けたりしてるが、このままではジリ貧だ。



うーん…死神と戦った時と状況が似てるなぁ…デジャヴュ。



どうすっかなー、一か八か賭けて見るか。



「!?」


「隙あり」



乱打してくる男の拳を斜めに弾き空いた胴を思いっきり蹴る。



「いっ…!!」



痛ぇー!!硬過ぎて骨がベッキベッキに折れたー!



自分の骨が折れるほどの蹴りでも男は少しぐらついただけ。



男はニィ…と笑うと態勢不十分の俺に回し蹴りを食らわしてきた。



なんとか両手をクロスしてガードするもベキベキ…と音が鳴って吹っ飛ばされる。



痛ぇ…両腕も複雑骨折かよ、あのダークマターなんて硬度だ。



凄い濃度だな…だけどあんだけの濃度じゃ、そろそろ限界じゃないか?

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