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わお、もう魔獣共が動き始めた系?



ここから少し行った雪原の向こうで大量の黒い影が移動し始めていた。



だんだん日が上に登るにつれてその影もこっちに近づいてくる。



…ありゃざっと見ても一万は軽く超えるぐらいの大群だな。



夜に攻めてこなかったのは数を増やすためだったのか…



多分だけど昨日の10倍ぐらいはいるんじゃねえ?



「程人君どうしたの?」


「アレ、見えるか?あの黒い影…全部魔獣だぜ」



ここからおよそ5km先、あのスピードだと…ココに来るまであと一時間ぐらい。



「…うわー…」



魔獣共の数を見てマキナが言葉を無くす。



「学生達とアレを足止めってもう無理じゃね?」


「うーん…そうだね、聞いてた内容と違うし」



リザリーに相談してくる。とプレハブに走って行った。



一応俺も行くとするか。



「……うそ…」



俺とマキナの説明を受けて外に出たリザリーが魔獣の数を見て呟く。



「コレじゃ依頼の内容と食い違うわね…程人」



またか…なんかあったら俺の名前を呼ぶ癖を直せよ!



「…はぁ、なんだ?」


「なんであんなに増えたのか…原因を知らない?」


「繁殖でもしたんだろ」


「たった一夜で?可能なの?」



俺は仕方なくリザリーに説明する事にした。



魔獣は負のエネルギーの塊だって言ったよな?そのエネルギーを分散させるとどうなる?…結果は増える、だ。



ただし…これは簡単に説明する理屈で、ちゃんと説明するとかなり長くなるぜ?



もちろんエネルギーを分散するわけだから本体は弱くなる、まあ一時的にだがな。



昨日の夜に襲ってこなかったのはおそらく…一時的に弱ったエネルギーが元に戻るまで待ってたんだろう。



悪魔や魔獣は夜にエネルギーが活発化するのが主だし。



リザリー、マキナ、エルーは俺の説明を聞きながら考え込む。



エルー…お前ってスーッと輪の中に入ってくるよな。



「エルー、上に連絡して頂戴『内容が説明と食い違うため、依頼を破棄する』と」


「別に構わないが…魔獣の大群はどうする気だ?」


「アレを使うわ…昨日みたいにダラダラ時間を稼いでるのは性に合わないの」


「…そういう事か。交渉は俺に任せろ報酬は弾ませるようにしてやる」



二人の会話を蚊帳の外状態で聞く俺とマキナ。



エルーがプレハブに戻ったのを見てリザリーがマキナに話しかける。



「マキナ、学生達に街までの撤退命令をお願いできる?久しぶりにアレを使うから巻き込まれないようにできるか心配なの」


「え!?アレを使うの?…やっぱり持って来てたんだねー…分かった!」



マキナもプレハブ所へ走って行き残されたのは俺とリザリーの二人。



今までのやり取りを聞いてると大体どんな状況か理解できた。



多分リザリーは魔獣の大群を相手に時間かせぎ…なんてコスい事よりも、一気に全滅させる事を選んだんだろう。



アレってのは俺の予想…魔剣だと思うが、もしかしたら予想を裏切って魔札を使った大魔術かもしれん。



「…なによ?」


「は?」


「言いたい事があるならはっきり言いなさい、…そんな顔をしてるわよ」


「いや~、お前がニーナを使うなんてどういう風の吹きまわしかなー…と」



リザリーはやや不機嫌そうに俺に突っかかってきた。



それから40分後。



魔獣の大群はもう1km地点まで近づいていた。



エルーはまだ上と交渉中、学生は数名を残して後は街へ撤退。



あの大群を見ても、撤退しない。と言い張った養成学校のランキング上位者達……なかなかに肝が座っているじゃないか。



つーかあのリーダー的なやつってランキング三位なんだ…かなり強いじゃねえか。



でもまあビビるのは仕方ないでしょ、まだ子どもなんだから。



つーわけで、今ここに残ってるのは全員で10名。



俺、マキナ、エルー、リザリー、学生達。



人間9名+αVS魔獣の大群(五桁オーバー)と言う世紀の一戦が幕を開けようとしていた。



とりあえずエルー待ち。



「リザリー、交渉成立だ」


「報酬は?」


「20億+後付の条件…で良かったか?」


「上出来よ、流石はエルーね…貴方達、下がってなさい」



エルーの報告を聞いたリザリーが学生達を50mほど後ろに下がるように促す。



「ニーナ、起きなさい」



剣を鞘から抜き話しかける。



『んん…?何よ、主…久しぶりね』



頭の中に直接声が聞こえているような感覚…



美人なお姉さんが寝起きで億劫そうな感じで言ってるように聞こえる。



辺りを見渡しているのを見る限り、どうやら学生達まで聞こえてるようだ。



『あれ…?この感じ…!まさか…!?』


「気づいたようね、あの魔獣の…」


『創造主!?創造主が近くにいるわね!?どこ!?マァイクゥリィエイタァー!!』



どうやらリザリーの言いたい事はニーナには伝わらなかったらしい。



「おう、ここだ…久しぶりだなニーナ」


『キャー!!創造主、久しぶりー!長いこと会ってないような気がするわ!キャー!』



ニーナはまるで若い女の子のように声がはしゃいでいる。



『あれ?でも主から創造主は死んだって聞いたような……ま、いっか!』


「ニーナ、久しぶりで積もる話もあるでしょうけど…今は力を貸して」


『え?もしかしてあのうっざい魔獣の群れをなんとかするの?』


「そうよ」



ニーナはようやくリザリーの話を聞くようになったらしい。

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