37

うーむ…ちょうどいい場所ではあるけど、魔獣が多くね?



俺が影移動した場所は軍事大陸の一番南側の街の外れ、街からここまでの距離にして約3kmぐらいの地点。



約3km先の魔獣がこちらに向かって来てるのが見える。



かなりの大群だ、数にして4桁オーバーぐらい。



プレハブの窓をコンコンと叩いてリザリー達を呼ぶ。



「え?着いたの?」


「嘘でしょ?………うそ」



リザリーはプレハブから出て、周りを確認して小さく呟いた。



「コレを移動させんの疲れんぜ…フルマラソンを走った後みたいに」


「まさかフルマラソン程度で音を上げるって言うの?体力が落ちた証拠ね」


「わー!いい場所!魔獣の動きも確認出来るね!エルーエルー…!」



雪もチラチラ降ってるからな、白い景色に魔獣の黒は目立つだろ。



マキナは少しはしゃぎながら二階に登って行く。



…子供か。



エルーもビックリしながら下りて来る…ってかお前は二度目だろ、なんで驚いてんだよ。



エルーと一緒に養成学校の在校生…学生達が周りを見て驚きながら出てくる。



出てきた後にあらかじめ聞いていたのか4列に分かれて並び始めた。



「では作戦をもう一度説明するわ…マキナはC班を指揮して真ん中から直線的に。エルーはA班を指揮して右側、私はB班を指揮して左側からお互い回り込む様に攻める」


「あくまで足止めが目的だから無理しないでね。後、少しでもヤバイと感じたら直ぐにこのプレハブに戻ってきてD班の治療を受ける事」



ふむふむ…ABCは12人でDだけ14人か。



「作戦開始時刻はあと5分後の1128だ、作戦終了時刻は3日後の1400とされてるが…伸びる可能性も有り、そしてもし敵を殲滅できたらその時点で作戦終了とする」



おお、三人ともなかなかサマになってるな。



…あれ?俺は?ただのアッシー君だから終わるまでそこいらで遊んでていい、とかか?



「俺は…?」


「あんたは好きになさい」


「好きに…って言われてもなあ…」


「とりあえず邪魔だけはしないで」



こいつ学生の前で俺の心を砕こうとしてる!



なんて危険なやつなんだ……今に始まった事じゃないけどさ。



「つーか、Dって治療班?多過ぎないか?」


「はぁ…あんたにしては珍しく鈍いわね、包囲網をすり抜けた時の保険よ」



ああ、突破された魔物を街に行かせないように最後の防衛線ってワケね。



「治療を行うのは4.5人ぐらいが適当な所かな?まあ防衛と持ち回りで担当してもらうんだけど」


「じゃあ俺は最終防衛線の役割っつー事で街で待ってるわ」


「最もらしい口実で逃げようとするな」



面倒くさいから逃げようとしたらやはりエルーにはバレた。



「一ついいですか?」


「何?」



俺らのやり取りを見てた学生の一人が手を上げる。



「先ほどから気になっていたのですが、なぜ当たり前のように部外者の方がココに?同行者は三人と聞きましたが」



そうだそうだ、と学生達がざわめき出す。



「見た所剣は差しているものの、普通の一般人の方の様ですが…本作戦は世間には機密事項だと言われてるはずです」



んだこいつ…リーダーか?こいつの発言で更に学生達がざわめいたし。



やっぱり俺の事はただの一般人にしか見えないか。



いくら腕が立つといってもまだ学生…青いな。



「ああ…そう言えば補足説明してなかったわね」


「今更だけど…一人増えるから、名前は…」



マキナはチラッと俺の方を見た、本名を言おうかどうか迷ってるようだ。



「面倒くせ…俺の名前は『ジュール』で、テイトはあだ名だからこいつら以外が呼んだら殺す」



俺の言葉に数名の学生が反応して構える。



「あんたね…学生を威嚇してどうすんの?」


「は?殺意も敵意も込めてねぇけど」


「程人君が殺すなんて言ったら分かる人は警戒するよ」



だって常に人を殺してるように全く不自然を感じさせないぐらい、自然に言うんだもん。と耳元で囁いた。



「ま、でもコレでこいつの実力は分かっただろ?まだなにかあるか?」


「いえ…先ほどの無遠慮な質問…失礼しました」



リーダー的な学生が構えを解いて頭を下げる。



「そう?…あ、時間だね」



マキナが先に歩きだしてその後にC班が続く。



…ん?魔獣の大群の方から何かが近づいてくる?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る