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さて、ちょっとだけ血をもらうぞ?
水たまりのようになった所から人差し指で少しだけ血を掬って舐める。
この量なら二時間って所か。
血を操る能力を駆使して血溜まりの血で女の子?を覆う。
「聞いてるかー?君が本当に生きたかったら…元の人間に戻りたかったら、強い意思を示せよ」
往生際が悪いほど生きたいという強い意思があるなら血は身体の中に入る。
だが生きる意思が弱かったらそのまま水たまりに戻る。
その血には邪魔物は排除するように命令したから、もし身体の中に入れば魔物の遺伝子は体外に排出されるかも。
俺自身で操作するわけじゃないからかなり楽。
だってあとは見てるだけだし。
ふぅ…もう30分は確実に経ってるよな~…あっち側はどうなってるかな?
「…き…た…い」
俺が女の子とは反対の方を見てると微かに呟いたような声が聞こえた。
「い…きた…い……生き…たい…!生…き、な…きゃ…!わた、し…は…こん、な…と…こで…死ね…ない…!死な…ない!!」
息も絶え絶えの状態で力強く叫ぶと、女の子?を覆ってた血が口や鼻、毛穴から身体の中に入っていく。
女の子?の方からドクン、ドクン、と何かが波打つような流動的な音が聞こえた気がした。
う、うっそーん…そんな事があんの?
俺は女の子から目が離せないでいる。
なぜなら…血が女の子に入って行った瞬間、俺の『邪魔物は排除』の命令が変わったのだ。
…魔物の遺伝子…いや、この場合は細胞…か?とりあえずソレを受け入れた。
女の子?の細胞が魔物の遺伝子or細胞を取り込んでオリジナルに改変させてしまった。
つまり……あの実験の数少ない成功例だ。
まさか目の前で目撃できるとは…!これは思いがけない、奇跡のようなラッキーじゃないか!?
うおぉ!あんな風に取り込むのか!
無理矢理取り込むんじゃなくて自分から相手に合わせて合体し、それから全体的に自分の細胞に寄せていく。
例えるなら上司と部下じゃなくて友達同士でのリーダー。
共存支配か…すげぇモン感じさせてもらったぜ…
ふと女の子を見ると気絶してるようだった。
ん?傷は癒えているな…どうやら俺の命令すべてに逆らったわけではないらしい。
『貴様…何物だ』
…んん?今どこからか声が聞こえたような…
キョロキョロと辺りを見渡すが人影はおろか生物の気配さえ無い。
『もう一度しか言わん、貴様は何物だ』
頭に直接響いてる…?………!?まさか!魔物の細胞か!?
まてまて…だとしたら超獣の遺伝子!?なんでまた人間の世界に…!?
超獣は魔界にしか存在しないハズだろ。
おっと超獣ってのは…そのまんま超強い魔物の名称ね。
魔王城だけでしか使われてない言葉だけど。
そういや…魔界の超獣の中の一体に不死に近い程の回復能力を持った魔物がいる。
細胞が一つでも残っているだけで体が再生する化物。
その魔物は確か全ての細胞に意思があるとか。
まさかその魔物の細胞…か?
「あんたこそ何物だよ」
おぅ…これって周りに人がいたら独り言を呟いている危ない人として見られるんじゃないか?
『我か?我は…』
…
……
………
ここからは割愛。
話をまとめると俺のニラんだ通りだった。
ヤバくね?俺、天才過ぎじゃね?やっぱりこのスペシャルな頭脳は天才の証だったのかもしれない。
とりあえずさて置き…なんで融合できたのかと言うと、この女の子の強い意思に惹かれて宿主にしてみようと思った、だと。
簡潔に纏めるとそれぐらいかな?魔物の意思は心の奥深くで女の子のこれからを観察すると言い残して消えた。
そんな事よりも、早く他の実験体で遺伝子融合の実験をしてみてぇな。
あの感じを覚えてる今なら…!
俺は女の子を抱えるととりあえず北側に向かって走った。
実験体がマキナ達に殺られて手遅れになる前に。
「グあぁぁ!!」
「しつこいなぁ!!」
北側を走り回りやっと敵を発見した時にはすでに終わりかけだった。
無傷じゃないけどほぼマキナの圧勝。
多少の傷は受けてたもののそれでもかすり傷程度。
「ストーップ!!」
動かなくなった敵にトドメを刺そうとするマキナを慌てて止める。
「え?なんで?…と言うかその女の子は誰?」
「後で説明する、後始末は俺に任せてリザリーの所に加勢に行ってくれ」
「えぇー…まあいいけど。後でちゃんと説明してよ?」
「ああ」
マキナが去っていくのを見て敵の状態を確認する。
まだ生きてはいるがマキナの攻撃がかなり効いているのか本当に動けないようだ。
ラッキー!と言わんばかりに俺は血を操って実験を開始。
…過程は省くとして、結果だけ言おう。
…失敗した。
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