27
「どうだった?」
「ん、大丈夫そうだったぞ」
光陰矢の如しと言うべきか…アレから10日。
詳細はごっそり省くとして…結果だけ言うとクレインは『ユニオン魔法学院』に入れた。
あっちは兵士養成学校とは違って本格的に魔術が習えるため、普通の学校みたくエスカレータ式になっている。
その学校の中等部の一年生として編入したわけだ。
一応マンションみたいな寮があったが、全寮制ではないらしい。
名門貴族や名のある資産家が通うだけあって学費は半端じゃなかった。
リザリー曰く…コロシアムで稼いだ金を使うらしいから金銭面に問題は無いとの事。
よくもまあ偉い所の坊ちゃん嬢ちゃんが集まるめんどくさい学校に行こうと思ったよな…
俺ならもっと普通の所に行くのに。
そして、今日その学校の潜入から帰還した。
…と言うかそのまま魔王城に帰ろうとしたら呼び戻された。
「そう、安心したわ」
やっぱり姪の事だから心配だったんだろうな。
ちなみにリザリーのお姉さん…クレインのお母さんは軍で情報管理系の事務仕事に就いている。
…これもひとえに俺の暗躍のおかげと言ってもいいかもしれない。
リザリーとマキナのコネだけでは…おっと、この話はまた今度でいいか。
まあなにはともあれ、クレイン家的にはハッピーエンド?みたいな感じ?
ほぼ俺の頑張りのおかげなんだけど。
やべぇ、俺って正義の味方かもしれん。
って言っても俺の正義は『女の子の笑顔…幸せ?』なんだけど。
つまりは女の子の味方…?になるのか?
別にその後にヤれりゃあなんでもいいんだけどさ。
やっぱり人生最大の楽しみは性交でしょ!
くっそ!死ぬ前に一回ぐらいシたかった…!
人生最大の楽しみを経験する前にアーメンするとは……俺もつくづくツイてねぇよな。
「…と、…、て…と、…い…程人?」
「ん?何回も呼ばなくても聞こえるって」
oh…考え事をしてたから呼ばれてるのに気づかなかった。
とりあえず聞こえてたフリをしよう。
「そのわりには反応が鈍かったわね」
「そのまま内容言うと思ったんだよ」
訝しむように見てくるリザリーにしれっと答える。
「本当に…?まあいいわ、今マキナからエマージェンシーコールが入ったの」
「魔獣か?最近多いよな」
俺が学校に潜入してる時も良く噂されてたな…最近色んな国で魔獣の動きが活発化してるとかなんとか。
「今回のはちょっと勝手が違うみたい、なんでも実験動物が暴れてるとか」
魔獣じゃなくて実験動物ぅ?なんでそんなモンがこんな所で暴れてんの?
「私達の近くにある研究所から脱走したらしいわ」
俺の表情から考えてる事を読み取ったのか疑問に答えてくれた。
「さ、行くわよ」
「軍か治安部隊に任せとけば良くね?」
「全く歯が立たないそうよ…軍の出動要請まで来てるみたいだし」
軍が出動するんなら俺達必要なくね?と思ってるとガッと腕を掴まれてそのまま引っ張られる。
こうなったら抵抗するだけ無駄なのでそのまま研究所まで大人しく連行された。
「あ、リザリー!来てくれたんだ!」
「状況は?」
「今の所7割ぐらいは避難済み、暴れ出した実験体は全部で5体」
マキナとエルーがいる研究所までリザリーの家から歩いて大体40分ぐらいの距離がある。
マキナは全ての研究所の近くに別荘を建てたが、結局出勤がめんどくさい。と言う理由で研究所に泊まり込みしてるらしい。
泊まり込み、と言うよりも住み込みと言った方がしっくりくるけどな。
だって全部の研究所を居住スペースを作るために改装させたぐらいだし。
かかった費用はリザリーやエルー、サマハルト達が少し出してくれたって聞いたけど。
そして妥協せずに何十億もつぎ込んだおかげで全ての研究所には30人は軽く住める居住スペースが完成したんだとか。
金を持ってる奴の考えてる事は良く分からん…
ってか良く考えたら前の研究所もそんなんだったな。
「程人、あんたは東側」
「へいよ」
「エルーが西側、マキナが北側だから…私はこの周辺を担当しようかしら」
どうやらエルーはもうすでに実験体討伐にでているらしく、マキナに代わってリザリーが陣頭指揮を取り始める。
「あれ?程人君あの槍は?」
「ああ、あれ?全っ然機嫌が良くならなくて…仕方なく置いてきた」
「まだ許してもらえないの?もう結構経つんじゃない?」
「今回は相当ご立腹らしい、帰ったら今度こそ完璧に手入れしないとダメかな?」
取り返してから今までは普通の手入れだけだったからな~…いつもは手入れすればすぐ機嫌が治ったのに。
「あはは、魔剣や妖刀じゃない分余計に大変だね」
「全くだよ」
ここで魔剣や妖刀の説明しておくと…
ごく稀に武器に『ナニカ』が宿っている時がある、それが魔剣や妖刀と呼ばれてる武器。
『ナニカ』とは悪魔だったり、天使だったり、妖精だったり、精霊だったり…またはそれ以外だったり。
とにかくそんな存在を宿してる(取り憑かせてる)武器の事を言う。
魔剣や妖刀にはもちろんちゃんとした意思があり、持ち手が弱い場合は人格が乗っとられる…と言う良く聞く話だ。
だが俺の愛槍はちょっと違う。
魔槍では無い事は確かなんだけど…意思がある。
存在を宿してるわけじゃないが、なぜか意思を感じるように思う。
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