26

「へいへい…」



前半はさて置き後半は結構楽しんでたんだけどな~。


長ったらしい名前のメニューを言う時とかから。



「じ、じゃあ食べましょう!」



クレインがイスに座って無理やり昼ごはんの方に意識を逸らした。



「すっごい…これ、程人君が作ったの?」



出会ってから始めて話しかけられた…リザリーよりも落ち着いた、大人びた声だな。



あ、さっきの寝室での出来事はノーカンね。



「まあ今の時代、男でも多少は料理出来ないとモテませんからね」


「出来てもモテてないじゃない」



ぐさっと心に何かが突き刺さる。



「大体自分がモテるためってだけで無駄に人を巻きこまないで欲しいわ」



ぐさぐさっと更に何かが突き刺さった気がした。



…ぐおぉ…!心に痛みが…!小説の表現って実際に受けると、あの表現って結構生易しかったんだな~…って思うぐらい痛ぇ。



ちくしょう…人の弱点を攻めやがって…魔女め~…



「「「いただきます」」」



三人で合唱して昼ごはんに手をつけた。



俺は心に負ったダメージを癒やすためテーブルに突っ伏している。



自分の分は作ってる最中に味見用として食べたから、すでに胃袋の中だ。



「まあ中々ね」


「そりゃどうも」



全然褒める気のないリザリーの言葉に適当に返しながら食べ終わるのを待つ。



はぁ…どうせ洗い物も俺がやるんだろ?なんて人使いの荒い奴だ。



「手伝います」



空になった食器から片付けてると、一番最初に食べ終わったクレインが手伝ってくれる。



「そういえば…程人、後で話があるわ」


「なに?週末なら空いてるぞ」


「…内容がデートの誘いではない事は確かね」


「惜しい!」



二人に内緒にするような話だからてっきりデートだと思ったのに…



「カスリもしないわ、とりあえず後で上に来て」


「いやいや、もうベッドイン?早過ぎじゃね?もっと順序良く……ごめんなさい」



リザリーが投げたナイフが俺の頬を掠めて後ろの壁に突き刺さった。



「面白い冗談ね」


「だろ?」



今度はフォークを構えてるリザリーに対して俺はソレを受け止めるようなポーズを取る。



「面白くて思わず手が滑るわ」


「ふっ………ふぁ!?」



飛んできたフォークをかっこよく指に挟んだまでは良かったのだが…



あろう事かお姉さんが使っていたナイフとフォークも投げてきやがった。



まあギリギリでキャッチできたけど…かなり際どい。




そんなこんなで殺伐としたランチタイムも終わり、リザリーに言われた通り洗い物を済ませて寝室へ向かう。



「で?わざわざ呼びつけた用はなんだ?」



寝室に入るとリザリーはベッドの上に座り細長い脚を組んでいた。



こいつ家では短パンとかホットパンツとかミニのスカートとかで脚を惜しげもなく晒してるから目のやり場に困るんだけど。



上半身はまたノーブラで薄い生地のTシャツとか、後は胸を半分晒すような格好だし。



家だからラフな格好をしたいのは分かるんだけど…俺に一体どこを見れと言うんじゃ。



クレインみたいにもっとマシな格好せい。



「こういう格好をすると面白いぐらいに目を泳がせるわね」


「お前がもっと貧乳で貧相な体つきで太くて短い脚だったらこうはならない」



マキナもこいつも無駄にグラマラスな体形をしてるんだよな~…



そこまで巨乳ってわけでもないのに。



「それは褒め言葉として受け取っておくとして…クレインの事で相談があるの」


「は?そろそろ学校にでも行かせるのか?」


「勘だけはするどいわね…どこが良いと思う?」



リザリーはどさっと大量のパンフレットを俺の前に投げた。



「頭は良いんだよな?」


「ええ、昔は姉さんが勉強を見てたらしいの」


「魔力はどうだ?」


「それはあんたも感じてるでしょ?潜在しているわ」



ふむ…頭は良い、魔力はある、性格も悪くない……凹むわぁ~…



なんで俺の周りにはそんなのばっか集まるんだよ!全然類は友を……じゃねぇ!



「一応言うけど、兵士養成学校ナシね」


「そうだな…今からじゃ間に合わないだろ」



クレインが兵士養成学校のカリキュラムについていけるとも思えないし。



「んじゃあ……ココは?『ユニオン魔法学院』」


「…ソコはまだ当たってなかったわ」



は?当たってなかった?なんじゃそりゃ。



「ナターシャは色々とワケ有りで普通の学校には入れないの…邪魔が多くてね」



……まさか、まさかまさか…俺に暗躍しろって言わないよな…?



「ココなら全世界トップの魔法学校だから…いや、でも…」



リザリーがパンフレットを手に考え事をしながらブツブツ呟いている。



「そうか…!程人に障害を消してもらえれば…」



…チーン、はいキマシター…厄介事をすべて押し付けてくると言う魔女の十八番。



「ナターシャのために手伝ってくれるわよね?」



有無を言わせぬ雰囲気を纏ってニコリと笑う。



「…拒否権は?」

「その前に人権は?」



確かに今は人間じゃないけどさ…人権かぁ…それを言われたらどうしようもねぇな。



仕方なくがっくりとうなだれるように色々諦めた。



まあリザリーの笑顔が見れたんだから良しとするか…うん、ポジティブにいこう!ポジティブだポジティブ!

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