43
「?私の顔に何か付いてますか?」
「何も付いてないよ?前に比べて髪、サラサラだなーって」
最初に会った時は何日も風呂に入ってない所為か髪が傷んでキシキシしてたのに。
別に臭いとか変な匂いがする、とかは無かったけど…女の子特有の良い匂いもしなかった。
何の匂いもしない普通の状態って言うの?まあそのおかげであの時ムラムラせずに済んだんだけど。
シリアスな雰囲気でムラムラしてるって絵面的にどうよ?て話だしな。
「ここの所、美容院?に通わせてもらってるので…」
「女の子は髪が命だもんね」
「私たちも手入れしてあげてるわ」
「復活した…」
紅くなった顔が戻ったのか話に参加して来た。
「で、どうすんの?」
「…やっぱり破棄はできないわ」
「…うん」
「そっか…」
五年もかけた研究をおいそれと破棄します。とは言えんだろうし。
仕方ないと言えば仕方ない。
「悪いけど…私たちにも研究者って言う立場があるの」
「…自分勝手な理由で研究を破棄するなんて信用にかかわるからね」
「だよなー」
信用を失えば立場も危うくなる可能性だってでてくるわけだしな。
リザリー達みたいに功績を上げてるのならば尚更…か。
せめて軍審会にバレてなければ問題は無かっただろうに…なんともタイミングの悪い事だ。
「破棄する事自体には異論は無いのよ?」
「今の地位や権力と何百年先の事を秤にかけると…どうしても決心がつかなくなっちゃう」
「勘違いしないで、私達は地位や権力に固執してるわけでは無いの。ただ、利用価値が無くなるまで使おうってだけで」
「分かってるよ、どうせ俺らをフォローするためだろ?」
リザリーとマキナの言葉を聞く限り、私達は裏方…サポートに徹する。と言っているように聞こえる。
俺はここでピンと何かを思いつく。
「…ん?まてよ、自分達で破棄しなければ研究が無くなっても大丈夫なのか?」
「「「?」」」
俺の言葉にみんなが意味分からない、という顔をした。
…!そうか、その方法があったか…!
漠然とふわふわした思いつきがふとした閃きで固まり考えになる。
「俺が破棄すればいいじゃん」
「あんたバカ?そんな事してもどうしようも無いわよ」
「なんで?」
「なんで?って…私達とあんたは友達でしょ?自作自演に思われるのがオチよ」
リザリーはため息をつきながらアホの子を見るような目を俺を向ける。
ああー…その考えを見落としていた…
いい方法だと思ったんだけどなー…なんか他にいいアイディアはないものか…
うーん、と腕を組んで首を傾けて考える。
…俺がだめなら他の人を金で雇えば…いや、捕まったらシャレにならんし、いくら金のためとは言え捕まるのを良しとする人なんていないだろうから……
うーん…分身でも出来ればなー…一人にアリバイ残して、一人に変装させて破棄するのに……ん?変装…?
「そうか!その手が…!」
「今度は何…?」
「俺が変装して研究書類を燃やせばいいんだよ」
「変装?…確かに…それなら、イケる可能性はあるわね」
リザリーとエルーは顎に手を当てて考え、マキナとクレインはおおー!と言い、やったね!みたいなキラキラした目で俺を見た。
「でもあんた捕まるわよ?」
「脱走すればいいじゃん」
「脱走?上手く行くかしら…?」
「大丈夫だって」
不安そうな顔をしたリザリーに俺はいつも通りの適当な返事をした。
「まだ来週末までは時間があるし、細かい計画はおいおい練っていけばいいじゃん」
「…そうね」
「コレなら確かに破棄できるね!」
「ふ…俺ってやっぱり天才かもしれん…!」
「「「それはない(わ)ね」」」
三人揃ってものすごい早さで即答された。
「あ、あの、頭は良いと思いますよ?」
クレインは床でイジける俺に近づいて慰めの言葉をかけてくれる。
「ある意味ね」
「ある意味だな」
「ある意味だね」
「ある意味とか言うな」
俺の頭の良さに別の意味などないわ!
こいつらって本当に人を貶すのが好きだな。
けなされる身にもなれっつーんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます