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…そろそろ乱入してくるかな?
してこないと俺がモノホンの変態に思われてしまうぞ。
気配の消し方はもはや達人の域に達してるけど…歩く時の微妙な衣擦れの音はまだ消し来れないか。
さっきからそこの壁に持たれかかってるのは分かってるんだぜ?
だからこんな勘違いされそうな小芝居を演じてるんだよ。
「そうそう…お前の純潔を…な」
「純…潔…?」
「分かりやすく言えば、しょ…」
女、までは発音できなかった。
俺の首にエルーの愛剣が突きつけられたから。
「テイト…お前」
「出てくるの遅ぇよ」
「なに?」
「見返りの時点で出てくるだろ、普通」
「…そうか、そう言う事か」
エルーは俺の言いたい事に気づいたのか真剣な顔から一転して気まずそうな…恥ずかしそうな顔で剣を鞘に納めた。
「え…?へ?兄さん?」
クレインは俺の言葉の意味や突然現れたエルーの事が理解できずにまだ頭に?マークを浮かべていた。
「兄さん、だってよ。可愛い妹ができたな」
「まあな」
「え?え?」
まだ状況が呑み込めずに俺とエルーの方を交互に見る。
そんなクレインを置き去りにしてリビング的な所に戻った。
「朝食よ」
「俺のだけかよ…」
「みんなはもう食べたわ」
「そうかよ…いただきます」
テーブルにある一人分の朝食を食べようとMy箸を取る。
卵焼きにスモークハム、ウインナーにソーセージ、漬物に……パン?
なんで漬物と一緒にパンなんだよ。
漬物なら白米だろ。
…まあ俺はパン派だからいいんだけど…パンに漬物乗せて食べんの…?
とりあえず皿のうえにある御菜を全てのパンの上に乗せてサンドした。
マキナがめっちゃ珍しそうに見てるんだけど。
そんなに見てると食いづらいんだけど…
先ずは一口………うん、中々美味いな。
そして二口目………うん、まあ、うん。
三口目……………げほっ!
うん、とりあえず、うん。
流石に真ん中に卵焼きを入れたのが功を奏したか…ハズレはやっぱり卵焼きだ。
真ん中だけを残して周りから食べる。
「どう…?」
「卵焼き以外は美味しいよ」
「卵焼きは?」
「…食ってから言うよ」
残ってる真ん中だけを食べるために自分に気合を入れるために精神を集中させる。
俺ならイケる、大丈夫だ。俺なら……イケる!!
サンドイッチの真ん中だけを全部口の中に詰め込んで片手で口を覆って無理やり食べた。
「ぐふっ!むぐむ…ぐ…!げふっ!もぐもぐ…!ごふっ!………ごっくん!!げほっ!げほっ!」
俺は無理やり飲み込んで盛大に噎せる。
一応マナー?的なアレで両手で口を抑えてるけど。
「げほっ!げほ!……うぇ…」
頭が少しズキズキする…少し気分も悪いし、目も霞む…
微妙な嘔吐感に微妙な倦怠感、寒気も少しするし…あぁ…意識が遠のきそうだ。
「だ、大丈夫?」
マキナが椅子から倒れ床に蹲ってる俺の背中をさすってくれる。
「あ…りが、とう」
「声が掠れてるよ…?」
声も上手く出せなくなってしまった…今回のも威力高いな、おい。
「ほ、ほら、飲み物!」
「う…」
マキナは慌てて冷蔵庫から飲み物を取りコップに注いで持って来てくれた。
優しいなぁ…うう、精神的に弱ってると優しさが身に染みるぜ…
好きになってしまいそうだ…likeからloveに変わりそう。
「大丈夫?」
「ん…もう大丈夫」
魔物になったからこれぐらいで済んだと思えば…マジで魔物になって良かった。
いや、でも…もしかしたら度重なるアレで体の抵抗力が上がってるのかもしれない。
「あら?まだ意識あるの?」
「ああ、まあな」
「今回は何を入れたの?」
マキナが心配そうに、そして不思議そうにリザリーに聞く。
「調味料と…研究し終わった薬品よ」
「薬品?」
「人体に害は無いハズ」
薬品…だと?マジかよ…混ぜるな危険。的なヤツだろ?
んなモン混ぜたら普通の人間だったら死んでもおかしくないんじゃねぇか?
「一応死なない程度ではあるんだけど」
「味見…したのか?」
「するわけないじゃない」
そんな当たり前の事を今更なに聞いてんの?的な雰囲気でスッパリ切られた。
「ま、死ななかったから問題は無いわ」
まるで女王様だな、サディスティックすぎるぞ。
…………俺だけに。
コレを愛情表現だとは認めたくないし、思いたくもない。
「どうしたんですか?」
「なんでも無い」
洗面所から戻ってきたクレインとエルーが俺とその側にいるマキナを見て不思議そうに聞いてくる。
…とりあえず全員揃ったな、これから昨日思いついたアノ事を話すとするか。
人類の未来のためになればいいんだが。
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