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「あ、でも程人君ってあと二週間は動けないんだった」


「そういえば全治一ヶ月だったっけ」


「あと二週間かおあずけかー」



アルバトロスはガックリとうなだれた。



演技なのか本心なのか分からない辺り女って怖い…と思う。



「じゃあまた明日来るね、お大事に」


「うん、ありがとう」



軽く手を振って部屋から出て行くアルバトロスをベットの上から見送る。



「やっと出て行きやがった…」



俺は安堵のため息と一緒に言葉を吐く。



30分ぐらいは居たんじゃないのか?用が済んだらさっさと出て行けばいいものを…



でもモデル並みの女を間近で見れるだけ目の保養だよね。



性格はアレだけど。



やっぱ女っていいなー。



精神的…実年齢的には50代だろうけど、肉体的…見た目は10代後半。



見てるだけで目の保養になるし、喋ってると楽しいし。



アルバトロスももうちょっとおしとやかになればなー…



何時間いても気にしないんだけど。



いかにも男の本音って感じだよなー。



さて、アルバトロスがいなくなったからやっと下半身を治せる。



「すー…ふぅー…すー」



俺は深呼吸して気持ちを落ち着ける。



そして小棚の上に置いてある折りたたみ式のナイフを取り、指を少し指先を切って血を吸う。



「よし」



俺はナイフを小棚の上に置いて気合いをいれ、再生作業を始めた。



方法は秘密。



ほら、ちょっと説明し難いから。




まあそんなこんなで5分かけて骨盤まで回復した。



「ふぅ…」



疲れた…とりあえず一旦休憩しよう。



「忘れ物しちゃった」


「っ!?」



ガチャっとドアが開きアルバトロスが部屋に入ってくる。



俺は驚きのあまり声も出ない。



「小説借りようと思って…」



アルバトロスは本棚を物色し始めたため、俺の方は見てなかった。



俺はとっさに布団をかぶって治した部分を隠す。



この女…!タイミング図ったかのように来やがって…



もしかして見られてた…か?



「この本、借りてくね」


「ちゃんと返せよ」



アルバトロスは物色した10冊以上の小説を持って出て行こうとする。



「ん…?」



部屋を出る直前に俺の方を見た。



「んんん…?」


「なんだ?」



俺の方を見て訝しむ表情をするアルバトロス。



「なんか…さっきと違うような…」


「なにが?」



俺はいかにもなにもありませんよー的な態度を装う。



だ、か、ら…用が済んだらさっさと出てけよ!



「ねえ…もしかして治ってる?」


「は?」



俺の言葉を待たずにアルバトロスは素早い動作で近づいてきて布団をめくる。



「やっぱり!ねえ、なんで!?」



アルバトロスは嬉々として俺に顔を近づけてきた。



ちょ…!近い近い!もうちょっとで鼻が当たる…!



モデル並みの美人にここまで顔を近づけられるとなんだか照れるわけで。



「ちょい離れろ」


「あ、ごめん」


「全く」



冷静を装うけど心臓はバクバクしているわけで。



アルバトロスもなんだか照れたような顔でそっぽ向いたわけで。





…!フラグか…!?今まさにフラグが建っているのか!?



どうする俺!?どうしたらいい!?



…うん、ちょっとは落ち着こうか。



「ねえ、なんで治ってるの?」



俺が心を落ち着けようとしてると、アルバトロスが興味津津といった表情で聞いてきた。



「さあ~?」


「ごまかさないで」



ドゴッ!と音がして俺のベットの隣にあった小棚が破壊される。



小棚があった場所には粉々になった残骸が小さい山になっていた。



顔からダラダラと冷や汗が出るのが自分でも分かる。



「魔物でも再生能力を持ってるのは少ないのに…!」


「あー…えっと…」



俺はこの場をどうしたら切り抜けられるのか必死で考えた。



「俺の…能力、かな?」


「凄い!凄いよ程人君!」



考えた結果、普通に話す事にした。



だって…ねえ?



下手したらまた死にかけるかもしれないし…



「じゃあ下半身も再生できるの?」


「え…?あ、ああ…」



アルバトロスのあまりの剣幕に気圧される俺。



なーんか…将来奥さん出来たら尻に敷かれそうな気がする…



…気のせいであってくれ。



「じゃあさ!治して!」


「へ?」


「私の目の前で治して!」



アルバトロスは興奮した様子で目をキラッキラに輝かせて俺に顔を近づける。



「いや、目の前はちょっと…」


「お願い!」


「少しばかりグロテスクだから」


「大丈夫!」



アルバトロスは全然引く様子がない。



これだけは譲れない!みたいにひたすら押してくる。

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