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「修行…?」「修行で他の世界に行くか?」「本当か?」「信じられんな」



みんな信じて無かった。



まあ事実なんだから信じる信じないは個人の勝手なんだけどね。



「そろそろくるぞ」



ヤツの影が濃ゆくなってきている。



「あ、そうだ…クレイン、これ」


「…なんです…?」



俺はポーチから小箱と照明弾を渡した。



「外に出たらまずこの照明弾を空に向かって撃つんだ、そして部下共の何人かが来るはずだからこの小箱を渡して『コードブラック』って言ってくれ」


「照明弾を撃って…部下の人にコレを渡して…『コードブラック』…分かりました」


「おい補佐官、この子…クレインを頼んだぞ?裏切るなよ」


「命に変えても守ってみせよう」


「王子、動けるな?俺とエルーで時間を稼ぐから補佐官やクレインと一緒に4人を外まで運びだせ」



まさか王子に命令する日がくるとは…それだけ切羽詰まってるんだけど。



俺が命令するや否や王子は二人を肩に担いで部屋を出ようとしている。



「待て待て!まだ早い!」



まだヤツは8割しか実体化してないんだぞ?



迂闊にこの部屋を出たらヤツに操られる可能性が出てくる。



「ヤツが実体化してる間は操ったり取り憑いたりはできん、合図出したら走れ」


「分かった」


「…あの…」



補佐官が二人を担ぐとクレインが小さく手を上げた。



「…私はどうすれば…?」


「あの補佐官に付いて行けばいい、そして外で照明弾だ」


「その後は…?」


「俺に任せてくれたらいい」



おおー!補佐官かっこいいね。



学生時代は俺を裏切ったくせに…人って成長するん…



「今だ!」



俺が叫ぶと同時にクレイン達は走り出した。



俺とエルーは剣を抜く。



「ぎぎぎぎぎ……ぎぎっ…」



ヤツは不気味に笑いながら体をクネクネと動かしている。



「あんなヤツだが奴よりは強いぞ」


「そうか…ならば!」



エルーは左側からデモゴルゴンを攻撃しようと駆け出した。



それを見た俺は右側から攻める事にする。



「ぎ…ぎ」


「なに!?」



エルーの剣が指二本で挟まれ、止められる。



俺の剣も同様に指二本で止められた。



「甘いな…っと!」



俺は剣を離しヤツの胴体に後ろ回し蹴りをくらわした。



「ぎ…?ヨワく…なッたナ」


「うるせぇ」



全くダメージが与えられなかったため体を回転させてヤツの顔に回し蹴りを放つ。



「ぎ…」



ヤツの顔に俺のつま先がめり込んでほんの少しだけ後ろに仰け反り、剣を掴んでいた指の力が緩む。



「ナイスだテイト!」



待ってました、と言わんばかりにエルーがヤツの両腕を切り落とした。



「ム…う…」



俺は地面に落ちた剣を取り、ヤツから一旦離れる。



「あーあ、これだけやってダメージ無しかよ」


「両腕を切り落としたぞ?」


「関係なし…はぁ、見ろ」



ヤツの下に落ちていた両腕が黒い霧に変わり霧散する。



それと同時にヤツの両腕が元通りになった。



「悪魔の体は四肢をもがれても直ぐに元通りになるのさ…羨ましいこった」


「やりずらいな…」


「まあ不死では無いからとりあえずダメージを与えておけば…!」



ヤツの姿が目の前から消えた。



正確には消えたように見えた、だが。



ヤツは一瞬にして俺とエルーの間に割り込んで来て俺らを殴り飛ばした。



殴り飛ばした、と言うのも俺たちが衝撃に耐えられず勝手に飛んだだけで、実際にはただ殴っただけだろう。



俺はなんとかガードして受身を取れたがエルーはどうだか分からない。



それを確認する余裕がない。



受身を取るとすぐ目の前にヤツがいて追撃をしてきたからだ。



「が…!」



剣で僅かにガードしたものの俺は壁を壊して隣の部屋まで吹っ飛ぶ。

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