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「すまない…助かった」



エルーがお礼を言いながら立ち上がる。



「なんだテイトか…」



振り向いて俺を見た瞬間に少し脱力してため息を吐いた。



「なんだとはなんだ」


「後ろの女の子はなんだ、背後霊か?守護霊か?」


「人間だよ」


「そうか」



俺達は奴から目を離さずに臨戦態勢のまま会話をしている。



奴はと言うと…



奴も俺たちの方を見て何かを警戒しているようだった。



「メルガの奴…本気で俺らを殺しに来てるぞ、気をつけろ」


「正確には操られているけどな」


「何?正気では無いのか?」


「まあそうなるな」



まだ操られている段階だから大丈夫だと思う。



取り憑かれる段階までいくと一気に面倒くさくなるし。



「そうか…やはり」


「気づいていたのか?」


「メルガは軍人だ、軍規を破るような真似はしない」



エルーはえらく信頼した様子を込めて言う。



奴も俺らもお互いに牽制し合ったまま動かない。



奴を操るには将軍クラスの悪魔のはず…だが一体どこの軍だ?



俺を警戒してる辺り俺を知ってる奴だろう。



って事は七大魔王の傘下だと思うんだけど…くそっ、情報が少なすぎる。



せめてもう少しヒントがあればいいんだが。



………あー!ぐちぐち考えても始まらん!



ここは俺のスーパーな直勘に賭けるか。



「おいおい…七大魔王直轄の将軍様がいったい何の用だ?」


「ぎぎ…きさま…気づいてたのか…!」


「当たり前だろ、操り方が雑なんだよ」


「ぎぎ…さすがは…隊長格…!」



ぎぎ…?このしゃべり方…どっかで………ああ、思い出した。



「まさかデモゴルゴンがお出ましとはな」


「ぎ…ぎぎ…!…まさか…バレテルトハ…!」



急に奴の体が崩れるように倒れその斜め後ろから黒い影が現れる。



「エルー、今の内に奴と部下三人、王子をここまで連れてこい」


「アレは大丈夫なのか?」


「実体化するまでには時間がかかる」


「分かった」



エルーは特に何も聞かず行動に移した。



俺はその間に背のクレインを降ろす。



「あ…あの…」



クレインは状況についていけてないのか辺りをキョロキョロと見渡している。



「…テイトさん…?…って言うんですか…?」



そこ!?周り見渡して状況把握しようとしての質問がそこ!?



「あ、ああ…遠間程人って言うんだ」


「トオマ…テイト……トオマの方が名前ですか…?」


「違うよ、トオマがみょう…ファミリーネーム」


「…東洋の方、なんですね…!」



こんな状況でよくのんきに自己紹介なんてやってられるな。



リザリーの姪だけあって肝が据わってる、って言うか…けっこう神経図太いよー。



そうこうしている内にエルーと補佐官と王子がやって来た。



ちなみにドアの前ね。



「なあテイト…聞きたい事が山ほどあるんだが」


「アレは悪魔、奴を操ってお前達を襲った、目的不明、 出現理由、方法共に不明」



エルーに質問される前に先に要点だけ纏めて俺は言った。



補佐官や王子にも聞こえるように言ったから多少は現場把握ができるだろ。



まあ現れた理由は分からないけど、出現方法…つまりどうやって現れたのか?は分かる。



冥界や天界や魔界に行く方法なんて技術さえ確立してしまえばさほど難しい事じゃない。



俺は『影移動』で界門…つまりはゲートを開く事もできる。



ものすごい頑張った成果なんだけどね。



前まで武者修行とか言って魔界と天界と冥界に行かされてたし。



有無を言わさず移動させるっていうのは鬼畜の所業だよ。



下手したら一生魔界にいたかもしれないんだぜ?



思い出しただけでゾッとする話だ。



まあその時のアレで目の前の悪魔とは多少なりとも面識があるわけで…



俺が行った時は将軍なりたてだったっけ?『悪魔将軍悪魔将軍』連呼してた。



「なぜ、知ってるんだ?」


「修行目的で冥界に行った時にちょっとな」



エルーを含め、俺の言葉を聞いたみんなが複雑な表情をしていた。

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