29
「まあ俺が仮に親玉だったとして、それがなに?テロは鎮圧してんじゃん」
「そうだよ…そうだよハカナ!悪い奴じゃねぇじゃん!」
「忘れたのかレイ…魔物はこの国を侵略に来てるんだぞ?」
「それは…!」
へー、やっぱり。噂って言うか情報はもう流れてるんだ。
まあだからなに?って感じなんだけど。
「今ここで倒しておかないと俺らの村まで来るぞ、それでもいいのか!?」
「う…それは…」
「俺は嫌だ。だからこいつはここで…!」
冷静な方が槍を手にし、俺に向かって突進して来た。
俺は軽く避けて足を払う。
「うぁ!」
バランスを崩した所で槍の後ろの方を掴みひねった。
冷静だった方は簡単に槍を離し、そのまま地面に倒れる。
「チェックだにゅ」
俺は倒れたそいつの頬をかすめるように槍を地面に刺した。
「あ…あ…」
俺の動きを見て勝てないと悟ったのか、バカの方は体が竦んで動けないようだ。
「どうする?お前もやるの?」
「う…うわぁ!」
バカの方は一目散に逃げ出した。
「さて…お前はどうする?」
俺は右手で冷静な方の服を掴んで持ち上げる。
「う…うぅ…」
ありゃ、こいつ漏らしやがった…そんな怖い目には会ってないはずなのに。
「そいつを離せ!」
また別の少年が現れた。
走って来たのか息は乱れている。
「聞こえなかったのか!そいつを離せ!」
「はいよ」
俺は急に現れた少年に冷静な方をぶん投げた。
俺が投げたのを受け止めた少年はそいつを地面に立たせる。
「忘れ物だぜ」
俺は地面に刺さってる槍を引き抜き、冷静な方に投げた。
一応刃先は俺の方に向いてるとは言え、冷静な方はうまく受け取れず腹に当たりうずくまる。
「お前…!」
少年は俺を睨む。
とても少年とは思えないような殺気を孕んだ目。
「お前が…街の人達を殺したのか!?」
「まあ鎮圧のために仕方なくな」
「父さんや母さん…ミチル達もか!?」
「知らんけど」
誰が誰だか分からんし、お母さんなら生きてるんじゃないか?
「殺す!」
少年は俺に飛びかかって来た。
冷静な方は逃げるタイミングを失い腰を抜かしている 。
少年は背丈に不釣合いな剣を振り回していた。
「少年さあ、もう少しクールになろうぜ?」
「うがあ!」
「お?」
少年のあまりの気迫に避けれず剣でガードしたが、少しよろめく。
「わお、勇者候補ってやつ?とても子供とは思えない力だぜ」
「殺す!殺してやる!」
少年は我を忘れ、ただ殺意の赴くままに剣を振っていた。
「が…があ!」
「!おおっと」
こいつは驚いた…この年で魔術が使えるなんてな。
こりゃ将来有望の才能の持ち主だ。
是非ともユニオン兵士養成学校に通わせないと勿体無い逸材だぜ。
「う…おお!!」
「うひゃあ」
火に水に雷ときたもんだ。
流石の俺も逃げるしかないぜ。
普通は凄くても二属性までしか使えないのに…つーかまず魔術が使える奴でさえ少ないのに。
俺はさっきの無線を取り出して適当にボタンを押した。
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