28

「…誰でも…いい…応答…」



無線からノイズに混じって声が聞こえてきた。



「はいー」


「そちらの…状況…は…」



だんだんノイズが少なくなってきて声がはっきり聞こえてくる。



「魔物に襲われ壊滅状態ですー」


「魔物に?…人型なのは…いるか?」



んん?どっかで聞いたような声だな…まさかな。



「一人いますねー」


「そいつに…代わってもらえない…だろうか」



え…もしかして…この声ってエルー?いや、そんな事は…確かめてみるか。



「こちら程人でーす」


「テイト!?…なぜ…いや、やっぱりか」



うわぉ、なんて偶然。



んー…別に偶然でも無いか、俺は街や村を侵略して行ってるわけだし。



…って事はあの鷲はエルーのペットか何かか?



それか伝書鳩扱いでユニオンから支給されたか。



食べさせなくて良かったー。



「テイト、よく聞け!その街から今すぐに離れろ!」


「どして?」


「そこは王都以外で唯一テロ激戦区の街だったんだ」



ああ、だからあんな酷い有様だったわけね。



「…今日の朝……そこに…英雄…が……向かっ……」


「はっ?英雄?まて!おいエルー」



無線からはもはやノイズしか聞こえなくなった。



あいつは確か、英雄が向かってると行ってたな。



だがここから王都までは6日…馬を使って急いでも二日はかかるはずだ。



早くても明日の朝までには移動しなきゃならんか…



「なんだ!?この惨状は!」


「…それより魔物に驚け」



俺が街の入り口の方に移動すると、いかにも場違いな2人組が立っていた。



「おいあんた、何があったんだ?」


「お前…!敬語を使え!」


「いて!何も叩く事ないだろ!」



ミニコントを披露している2人組が俺の所へ近づいてくる。



「一体何があったんだ…ですあ?」


「…はぁ、ですか。だろ」



んだこいつら?ここの街の住民では無さそうだが。



「テロだ、結構大規模なテロがあってな…それを鎮圧した所だよ」


「テロだって!?テレビで知ってたが…こんな隣町にまで…?」


「…それ、本当ですか?」



…この片方の冷静な奴はなかなか鋭い、俺を探ってやがる。



「本当だ、消火も今さっき終わった所だ」


「でも、建物はめちゃくちゃだな…ひでぇ事しやがるぜ」


「全く同意見だ。一つ、聞いていいですか?」


「いいぜ」


「この魔物の群れは?あと、住民達はどこに行ったんです?」



おいおい、質問が二つになってるよ?まあ一つしか答える気は無いんだけど。



「魔物がテロ鎮圧を手伝ってくれたんだよ」


「マジで!?魔物にも良い奴がいるんだな!」



こいつは冷静な奴と違ってバカ丸出しで扱い易そうだな。



「ここの住民達は?の質問は無視ですか?」


「一つ、と言ったからな」



言葉遊びに付き合ってる暇は無いと思うけど、多少付き合ってもらうよ?



「そうですか…ではあなたからする血の臭いはどうごまかす気ですか?」


「ごまかすも何も…テロ鎮圧に犠牲は付き物だろ?」


「レイ、多分こいつが黒幕だ!」



冷静な奴が俺に向かって槍を構えた。



「お、おいおい…!ハカナ、何言ってるんだよ!この人はテロを鎮圧したんだろ!?」


「そうだな…確かにテロの鎮圧はしただろうが、こいつにそんなつもりはなかったのさ」


「何言ってるんだよ!意味わかんねぇよ!とりあえずソレ降ろせって」



バカな方が冷静な方を宥めている。



冷静な方は結構血の気が多いらしいな。



「こいつは…多分この魔物の親玉だ」


「は?何言ってんの?お前おかしいぞ?」



まさかこんな子供にバレるとは…まあバレた所でどうでもいいんだが。



「どうでもいいんだが、俺が親玉だとしたらヤバくないか?」



200余りの魔物に+親玉。



子供二人で勝てると思ってんの?絶対無理だろ。

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