18

「メルガを発見しました」


「そうか、やはり無事だったか」


「いえ…発見し、運んでは来たのですが…」



三人組の一人が歯切れの悪い報告をする。



「どうした?」


「それが…五体満足ではあるんですが出血が止まらないです。このままだとあと一時間保つか…」


「なんだと!?…どうにか出来ないのか?」


「マナタラ補佐官とあとの二人が救命措置をしていますが、なにぶん出血箇所が多くて…」



多分俺と戦ったせいだろう。



奴は異常なまでに打たれ強いとはいえ、怪我をしない体ではないからな。



俺ならなんとかできるけど面倒くせぇ。



どこの世界に自分を殺そうとした相手を自主的に助ける奴がいるんだよ。



漫画の世界か?小説の世界か?アニメの世界か?



残念ながらここは現実だ。



弱肉強食の掟に従い天命を全うしな。



「テイト、なんとかならないか?」


「無茶振りもいい所だな」



言うと思ったが却下だ。



俺たちは敵だろう?



敵に塩を送ってどうする。



俺はエルーの顔を見ないように目を閉じ、腕で覆い、今から寝る…のポーズをとった。



「頼むテイト…アレでも仲間なんだ…」


「パス、今の俺じゃアイツに殺される」


「頼む…このとーり」




……


………あーもう!仕方ねえな!




「はぁ…分かったよ!」


「よし!今すぐメルガをここに運ぶぞ」



俺を拝むようなポーズから一転し、エルーは立ち上がってどこかへ行ってしまった。



あー…俺もまだまだ甘いな~…



男に甘くしても気持ち悪いだけなのに…



女の子にだったら喜んで甘やかすんだけどなー。



「衝撃を与えないようにそっと置くぞ……よし」



エルー達が奴を運んできた。



確かに全身血まみれで全然血が止まりそうにもない。



見た所俺が付けた傷では無いような気がするんだけどな?



「さて、マナタラ。少しばかり街のあった場所を調査してくれないか?4人で」


「4人で…ですか?」


「ああ、あいつの傷はおそらく爆発の後に付けられたものだ。十分に警戒してくれ」


「了解」



4人はエルーに敬礼して素早い動作で去って行く。



「仕方ないやるか…」



俺は自分の血を操り、血をつまようじ型に固める。



そしてそれを奴の首に刺す。



「うあ!?」



俺の血が奴の体内に入るとビクン!と身体を痙攣させうめいた。



「大丈夫なのか?」


「大丈夫大丈夫、任せとけ」



俺の血が奴の体全体に行き渡るまでわずか10秒。



行き渡れば即座に血が固まりかさぶたを作るようにしてある。



その効果はあったようで奴の体から出血が止まった。



そして奴の体から流れてた血を奴の身体に戻す。



「輸血は大丈夫なのか?血液型の問題は?」


「バカ、俺は血を『操れる』んだぞ?毒にも薬にも武器にも出来る」


「血液型も変えられるのか?」


「当たり前だろ」



当たり前…なぜそんな事を当たり前に出来るのか?



確かに操れるように努力はしたし特訓もした。



だが普通の能力では不可能だと思う。



魔物の能力の『血液操作』は液体から固体への形状変化が関の山だ…普通なら。



だが俺はそれ以上の事ができる…



うーん…妖怪ってファンタスティック。



「うぅ…」



お、奴が目を覚ました。



いや待て早すぎないか?



「エルーシャか…」


「なにがあった?」


「国軍の奴等だ!奴等…気に食わねぇ…!」



おお~、やっぱり国軍だったか。



奴は動かない体を無理やり動かし、立ち上がった。



「奴等…今度こそ全滅させてやる」


「待て、まだ満足に動ける程治ってはないだろ」



流石に血が止まったとはいえ傷が回復してるわけじゃない。



ふらついている様子を見てエルーシャが奴を引き止める。



てーか…あんだけ大怪我して、死ぬかもしれないぐらいの血を出しといて、よく動けるよな。



普通はそんなすぐに目は覚まさないし、立ち上がるどころか体を起こす事さえやっとだと思うんだけどな…



エルーもそこに驚かない…むしろ普通だ、みたいな感じなんだけど…俺が間違ってんの?



とりあえずエルーの方を見ると無理やり奴を座らせたみたいだった。

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