fruitmix natu side

フルミ製作委員会

第1話 「始点」

「アイドル?」


「そう!アイドル!私、アイドルになる!歌って踊ってみんなを笑顔にするの!」


「何言ってるのよ、子どもがアイドルなんて出来るわけないでしょ。ずーっとテレビでもやってるじゃない、ほら。」


テレビには、真っ白な天使のような衣装を身にまとった女の子のライブ映像が流れている。


昔自殺した14歳のアイドル、山本翼。


この事件は大きな社会問題となり、つばさショックと呼ばれるようになった。


今では18歳未満はどこの事務所も受け付けてはくれない。


この事件には不可解な点が多いことから未だに調査を続けている人達がいる。


「むう・・・」


母親には反対されたが諦めきれない。


たくさんの人の前で踊って歌って笑顔にして、そんな幸せな仕事、ほかに知らない。


そんなとき、生徒会長に呼び出された。


私立ピグぐま学園は小学部・中学部・高学部と分かれていて、それぞれに生徒会がある。


小学部の生徒会長は、城崎紅羅羅さんだ。


何かしたっけ、どうしよう・・・それしか頭になかった私に掛けられた言葉は、とても意外なものだった。


「日向夏さんね!実は私、アイドルプロダクションを立ち上げよう思っているの。子どもだけの、ね。よかったらあなた、うちのアイドルになってくれないかしら?」


「ほぇ・・・・?」


何言ってるんだろう、だって、子どもはアイドルなんて・・・


「夏さん私、思うの。アイドルって人を幸せにできる仕事だって」


私と同じ考え・・・・ でも・・・


「子どもはアイドルになれないって、」


「大丈夫!」


え、何が大丈夫なの・・・?


「私のママが全面協力してくださるって!」


紅羅羅さんのママって、あの black Angel の城崎茉麗!?


「ママは私のアイドルになりたいって夢を応援してくれるって言ってるの。

それに、文化祭での夏さんのステージ、素晴らしかったわ。もしかして私と同じようにアイドルを目指してるんじゃないかって。

変な社会の風潮のせいで子どもがアイドルになることはほとんど不可能な状況・・・。

でもきっと、私たちのようにアイドルになることを夢見ている子どもたちはたくさんいるはず!

大人になれればいくらでもやれると言う馬鹿な大人たちもいるけれど、子どもにしか出せない純粋なきらめきというものがあると思うの。今やるべきなのよ!

山本翼、知っているでしょう。あのママでさえ憧れの存在だと言っているのよ。今いるアイドルじゃ誰も勝つことはできない。それはやっぱり、子どもにしかない魅力があるからなのよ。だから夏さん!」


「はっはい!」


急に呼ばれてびっくりした・・・


「私と一緒に、このプロダクションを大きくしましょう!」


ここまでいわれたら仕方が無いよね。


溢れそうになっていた涙を拭って、はっきりと答えた。


「わかりました!」


私だけじゃなかったんだ。


子どもは無理だって押し付けられても、それでも諦めきれない思いを抱えてたのは。


私は一生、この人について行きたい。


夢なき夢は夢じゃない、よね?


「これからよろしくお願いします!クララ社長!」


「えっええええええええ!?」


こうして fruit・mix ♪︎はこんなにも簡単に出来上がっていった。

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