③
そして、次の日、『雪女』の本は、新着棚に置かれていた。
「誰か、借りないかな?」
そう言って、いつも通り、縁側でお茶を飲む三人であった。
「いつも、この一冊目が一番ドキドキするよね」
「うん」
三人でじっと客を見てしまっていた。
「みんな、平常心よ」
お母さんは、そう言って、私たちを元気づけるが、人には、気になることを我慢できないところがある。
(やっぱり、気になる)
客を何回も見てしまう。
☆ ● ☆
そして、三十分後、本は借りられた。
「いい感じね」
「そうね」
花ちゃんは、妙に落ち着いている。
「花ちゃん? 何か秘策でもあるの?」
「カンなんだけど、売れるいい本だと思うの『ざしきわらし』の様に、愛される本だと思うわ」
「でも、決めるのは、読者だし、わからないよ」
「そうかな? 青ちゃんの好きが詰まっているから大丈夫だよ」
「好きが詰まっているって? どういうこと?」
「青さんは、『ざしきわらし』の時も、書きたかったでしょう? それが、物語を好きって思う気持ちなの」
「私も、青ちゃんの好きをたくさん感じたの」
「私が、物語を愛している?」
にわかには信じ難い事だった。
(今まで、好きだったのか、疑問に思っていたけれど……私は、物語が好きなんだ!)
「そうだよね、私の好きって気持ちギュって入っている物、大丈夫だね」
笑顔でそう言った。
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