第18話

俺はクラスを確認するため掲示板に向かった。怪我をしている身からいえばクラス分けを掲示板に貼り出すのはやめて欲しい。

人が掲示板前に多く集まって前に進めないし、腕に当たったら痛いし。

どうせならもっとでかい字で書いて欲しかったな。など恨み言をつらつらと考えてると

人混みが掃けていった。

まるでモーゼが割った海のように真っ二つに。その真っ二つに空いた空間に一人の人間が悠然と歩いていく。

その歩いていく人間、少女につい見惚れてしまった。既視感を覚えながら。

えっとあの黒髪、どっかで見たな。どこだっけかな。

あれ程の美少女なら忘れないはずなんだけどな。高スペックの頭脳を持つ俺は記憶の中枢から彼女の情報を引っ張り出す。

あ!思い出した。

俺の腕が骨折した原因を作った奴だ。(完全な自業自得だが)

あの時の美少女が同じ学校、そして同学年だったとはな。

俺がじっと彼女に熱い視線を向けていたからか、こちらに振り向く。そしてゆっくりと歩いてくる。

「あら、春休み中に自転車で事故を起こした人じゃない」

若干高圧的だがその話し方から気品さを伺える。

良いとこのお嬢さんなのだろうか。

そんなどうでも良いことを考えてると再度声をかけられる。

「あの時救急車を呼んであげたの私なのよ?」

少し厚かましい言い方に俺は、怪我をした人に救急車を呼ぶのは当たり前じゃないのか?と救急車を呼んでくれたと、疑問半分嬉しさ半分だったがそれでも礼は言っとかないとな。

「あの時はどうも。おかげで骨折だけで済んだよ」俺は骨折をした左腕を少し上げながらニヤリと笑い、皮肉げに言った。

すると彼女もふっと小馬鹿にするように笑った。

「本当よ、道路に倒れてたんだから。

下手したら車に轢かれてたわよ」

後に気づく衝撃的な事実。

まじか、死んでるとこだったじゃん。

「ありがとな、命の恩人さん。それじゃあ」

本当に感謝はしてるがこの女と話すと疲れそうなので早々に立ち去ることにした。

「ちょっと待って、名前教えて」

思いがけない一言に内心驚いたが俺は歩みを止め、振り返らずに言った。

「千草茜」

「私は紅珊瑚。よろしくね」

「ああ」

別れの挨拶も短く、俺はまだ確認していないクラス分けを見るため掲示板に再び向かった。

注目度ナンバーワンの紅と話してたという効果があったのか、他の生徒も俺を注目している。なんだよ、今日は注目されまくりだな。

掲示板前の生徒もちょうどよくばらけ始めたので容易に確認できた。

えーと何組だ?

順番に確認していこうと思ったが俺の名前は

すぐに見つけられた。

「ふーん。一組か」

分かりやすくて良いな。ついでに藍の名前も探すか。俺は藍の名前を探そうとしたが、

その名前はすぐに見つかった。

ていうかすぐ下にあった。

あっれれー?おかしいぞー?

クラス分けは身内と同じクラスにならないって聞いたんだけどな。

眼鏡の小学生もびっくりの事実に思わず笑ってしまった。ついでに言うとさっき話した紅とも同じクラスだったことは今の俺は知る由もなかった。

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