クトゥル神話もの(仮)

@nyantest

第1話

朝、目を覚ます。

お店の裏手に流れるドブ川の悪臭が鼻についた。

この前、スーパーのテレビコーナーで下水問題を流していたのを思い出す。

自治体は排水を適切に処理しているといっているが、悪臭は年々、悪くなることはあっても、良くなっているとは思えなかった。

店長からもらった時計を確認すると15時を過ぎている。

今日は外にでて客引きでもしよう。

川から離れれば悪臭を嗅がなくても済む。

お店は4階建てで、1階を除く各階に2部屋ずつ部屋が設けられている。

各階を繋ぐ階段は1つ。玄関から入ると正面にある。

1階に降りると店長と白髪の老人が言い争っているようだった。

老人が私を指差した。

面倒毎に巻き込まれたくないな。

「このじいさんが、お前の父親だといってるんだが……?」

店長が振り向いて状況を説明してくれた。

昨日とった客との会話を思い出した。

客は学生時代の思い出を語っていた。私は彼の話を聞いて戸惑うことしかできなかった。

いくら頑張っても、店に来る以前の記憶を思い出すことができなかったからだ。

「嫌だったら、無理して話さなくてもいいよ。誰だって嫌なことはあるだろうし」

客は不機嫌そうに言って去っていった。

「その方とは初対面となります」

私の回答を受けて店長は老人を追い出す。

正直、失った記憶を取り戻したいは思わない。生活する上で困っていないのだから。


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