第四十四幕:虹よりも七色の虹へ
時崎「高月さん、お気をつけて!」
笹夜「はい♪ 時崎さん♪」
時崎「どうしたの?」
笹夜「あ、あの・・・最後かも知れないから・・・名前で・・・」
時崎「え!?」
どうしようかと迷ったけど。高月さんのお願いも叶えてあげたい。
笹夜「・・・・・む、無理なら・・・」
時崎「ありがとう。さ、笹夜・・・さん」
笹夜「はい♪ ありがとうございます♪」
時崎「ひとつ話しておくけど、次は、今までどおりでいいかな?」
笹夜「え!? あっ・・・」
鋭い高月さんなら、俺の言葉がどういう事を意味しているのか分かってもらえると思う。
笹夜「・・・はい♪ 時崎さんのお言葉・・・大切にいたします♪」
時崎「ありがとう!」
笹夜「それでは、失礼いたします♪」
駅で高月さんを見送った時、過去の記憶と重なった。高月さんとはこれで最後ではないと確信している。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
七夏「柚樹さん! ご飯のおかわり、いかがですか?」
時崎「え!? あ、ありがとう!」
七夏「くすっ☆」
七夏ちゃんと朝食を頂きながら、昨日、高月さんを駅まで送った事を思い出してしまっていた。
時崎「・・・・・」
七夏「はい☆ どうぞです☆」
七夏ちゃんから、ご飯のおかわりを受け取る。
時崎「ありがとう。み、水風さん」
七夏「えっ!? 柚樹さん!?」
時崎「七夏ちゃんの事を、水風さんって呼ぶのも久々かなって」
七夏「くすっ☆ 驚きました☆ どおして急に?」
時崎「丁度、1ヶ月なんだよ」
七夏「え!?」
時崎「七夏ちゃんと出逢ってから1ヶ月!」
七夏「あっ、1ヶ月になるんだ。でも、あの時、私は最初に名前を言いました☆」
時崎「そうだったね。ごめんね。どおして名前なの?」
七夏「えっと『七夏』が、私の名前ですから☆」
時崎「もっともな答えだね」
七夏「初対面の人には、名前から教える方がいいよってお母さんが・・・」
時崎「どうして?」
七夏「えっと、名前だけだと、お家が特定しにくいからかな?」
時崎「でも、あの時、七夏ちゃんは苗字も教えてくれたよね?」
七夏「はい☆ 柚樹さんが先にお名前と苗字を話してくれましたから、私が名前だけって言うのは失礼かなって思って☆」
時崎「なるほど」
七夏「くすっ☆ あっ、柚樹さんなら、他の呼び方でもいいです☆」
時崎「他の呼び方?」
七夏「えっと、ここちゃーみたいにです☆」
時崎「あー・・・みのちゃーとか!?」
七夏「そ、その呼び方は・・・ま、まあ柚樹さんだけなら・・・」
時崎「ごめん。つっちゃー・・・さん!」
七夏「くすっ☆」
時崎「七夏ちゃんの事は、七夏ちゃんって呼ぶのが一番自然かな」
七夏「はい☆ えっと、お話し変わりますけど、柚樹さんは明後日の夜に出発ですか?」
時崎「ああ。出来るだけ、ぎりぎりまで七夏ちゃんと一緒にいたいから!」
七夏「あっ・・・」
七夏ちゃんは、嬉しそうだけど、少し寂しそうな表情を見せたような気がした。七夏ちゃんが楽しめるように考えなければ!
時崎「七夏ちゃん! 海!」
七夏「え!?」
時崎「今日、海へお出掛けしよう! 時間、あるかな?」
七夏「わぁ☆ ありがとうです☆」
時崎「じゃ、えっと・・・これから宿題だよね?」
そう話すと、七夏ちゃんは首を横に振った。
七夏「えっと、柚樹さんと一緒に居る時間を増やしたいから、宿題は後にしようかなって☆」
時崎「え!? 大丈夫なの?」
七夏「はい☆ 今度の土日に頑張ります! お母さんもそれでいいって話してくれました☆」
時崎「なんか、ごめん・・・」
七夏「全然平気・・・です」
時崎「!? 何か、気になる事があるの?」
七夏「えっと、宿題は殆ど大丈夫なのですけど、自由研究だけが、まだ決まってなくて・・・」
時崎「自由研究か・・・そう言えば、前にそんな事を話してたよね」
七夏「・・・・・」
思い出してしまった。自由研究のテーマを探そうとして、民宿風水の外へ出て、大きな虹を見て・・・でも、今の俺はあの時とは違う! もちろん、七夏ちゃんもあの時とは違うはずだ!
時崎「七夏ちゃん! 良かったら自由研究のテーマも、この後一緒に探さない?」
七夏「え!? 一緒に? いいの?」
時崎「もちろん! 今日の分の宿題はそれでどうかな?」
七夏「はい☆ 助かります☆」
時崎「じゃ、ご飯食べたら、早速お出掛けでいいかな?」
七夏「はい☆ よろしくです♪」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
朝食を済ませて、七夏ちゃんの出かける準備を待っている。
時崎「凪咲さん」
凪咲「あら、柚樹君?」
時崎「今から、七夏ちゃんとお出掛けします」
凪咲「海・・・かしら?」
時崎「それもありますけど、七夏ちゃんの自由研究のテーマを一緒に探そうと思って」
凪咲「まあ、ありがとう♪ 私も少し気になってたの」
時崎「そうなのですか?」
凪咲「まあ、何もテーマが見つからなかったら、お料理の事や、小説の感想とかありますから、なんとかなるとは思ってますけど」
時崎「俺は、それでも良いと思いますけど」
凪咲「でも、せっかくですから、新しい事が出来ればいいかなと思ってて」
時崎「なるほど。新しい事ですか」
凪咲「ええ♪」
時崎「意識しておきます!」
凪咲「ありがとう。柚樹君」
七夏「柚樹さんっ☆ お待たせです☆」
時崎「今日は、いつもどおりの格好だけど、よく似合ってるよ!」
七夏「ありがとです☆」
凪咲「柚樹君、お昼はどうなさいますか?」
時崎「どうする? 七夏ちゃん?」
七夏「私、海へお出掛けの用意も出来てます☆」
時崎「じゃ、お昼は一緒に外で頂くで、いいかな?」
七夏「はい☆」
凪咲「分かったわ♪ 2人とも楽しんでらっしゃい♪」
七夏「はい♪」
時崎「ありがとうございます。では、出掛けてきます!」
七夏ちゃんと一緒に歩く。一ヶ月前とは全然違ってて、お互いに自然な距離感が保てていると思う。
時崎「やっぱり、本屋さんがいいかな?」
七夏「はい☆ 柚樹さんも気になる事があったら、お話しくださいです☆」
時崎「ああ!」
七夏「えっと、先に雑貨屋さんへ寄ってもいいかな?」
時崎「もちろん!」
七夏ちゃんと、雑貨屋さんへ寄る。俺も自由研究のテーマになりそうな物が無いか探してみる。
時崎「これは・・・」
目に付いたのは、金属で出来た立体パズルだった。でも、これを解く事が自由研究に繋がるかな? この仕組みを考える事はテーマになりそうだけど、とても難しそうだ。軽く動かしてパズルを解こうとしてみたけど、これがなかなか一筋縄ではゆかない。
七夏「柚樹さん☆」
時崎「え!?」
つい、この立体パズルを解こうと集中してしまっていたようだ。
七夏「くすっ☆」
時崎「あ、ごめん。何か見つかった?」
七夏「えっと、これです☆」
七夏ちゃんが手にしていたのは、釣合玩具。いわゆる「やじろべえ」だけど、木の「やじろべえ」の上に、もうひとつ小鳥の「やじろべえ」があって、その揺れかたはとても複雑で不思議だ。
時崎「二重になると、とても複雑な動きになるね」
七夏「はい☆ ひとつだと分かりやすいですけど、ふたつ一緒になると簡単に予想ができなくなる事・・・これって不思議です☆」
時崎「自由研究のテーマになりそうかな?」
七夏「不思議なのですけど、それが説明できないと難しいのかな?」
時崎「とりあえず、候補のひとつにしておくのはどうかな?」
七夏「はい☆ そうします☆」
雑貨屋で、写真機を水から保護するカバーを見つけた。今日この後、七夏ちゃんと海へお出掛けするから、これは買っておくと良さそうだ。
時崎「七夏ちゃん、ちょっと待ってて」
七夏「はい☆」
写真機の防水カバーを急いで購入した。
時崎「七夏ちゃん、お待たせ!」
七夏「何か良い物、ありました?」
時崎「ああ!」
七夏「くすっ☆ 良かったです☆」
雑貨屋を出て、書店へ移動する。
七夏「えっと・・・あっ!」
時崎「ん? 何か気になる物あった?」
七夏「えっと、今日は小説ではなくて、自由研究の本でした。つい・・・」
時崎「小説も気になるのがあったら、見ていいと思うよ!」
七夏「ありがとです☆」
自由研究になりそうな本を探してみる。「泥団子」「つかめる水」「育つ水晶」色々あるな。そんな中---
時崎「色の科学か・・・」
色についての感覚は、とても繊細な事のように思ってしまう。大切な人と同じように楽しく過ごしたいと思うと、色に関しては、そうならない可能性がある事を分かっているからだ。でも、それは、色以外に関しても言える事なのだと思う。これは、俺にとっての自由研究なのかも知れないな。七夏ちゃんは・・・
時崎「七夏ちゃん!」
七夏「あ、柚樹さん☆ 良さそうなのありますか?」
時崎「そうだな・・・これとか?」
七夏「え!? カブトエビさん? 飼育?」
時崎「この水槽見てたら、水族館での事を思い出して」
七夏「くすっ☆ でも、これ小学生が対象みたいです☆」
時崎「この飼育キットそのものはそうみたいだけど、高校生としての自由研究は・・・」
七夏「高校生? どんな研究なのかな?」
時崎「どんな事が記憶を呼び戻す鍵となるのか?」
七夏「え!?」
時崎「思い出そうとしても思い出せない事って無い?」
七夏「あります」
時崎「だけど、何かのきっかけで、突然思い出せる事もあるよね?」
七夏「はい☆」
時崎「その鍵を見つける方法って? 偶然?」
七夏「えっと、難しいです」
時崎「でも、七夏ちゃんと出逢えたのも偶然なんだよ?」
七夏「あっ・・・」
時崎「その偶然を大切に想い続けるか、忘れてしまうか・・・でも、忘れたように思えても、実は忘れていなくて、思い出せないだけって事も多いと思う」
七夏「えっと、記憶の鍵が見つかれば無くならないって事?」
時崎「そう、記憶の鍵だね! それが、今、俺が手にしている---」
七夏「くすっ☆ カブトエビさん☆」
時崎「そういう事! ごめんね。難しい事を話してしまって」
七夏「いえ、私は、鍵は要らないかな?」
時崎「え!?」
七夏「想い続けてたら、忘れる事はありませんから☆」
時崎「そ、そう・・・じゃあ、これは元の場所に戻して・・・」
七夏「くすっ☆」
俺は、「カブトエビ飼育セット」を元の場所に戻した。
時崎「なかなか難しい」
七夏「くすっ☆ でも、柚樹さんのおかげで、なんとかなりそうです☆」
時崎「そう?」
七夏「自由研究のテーマを探す事も、研究のような気がしてきました☆」
時崎「なるほど、それは言えてる」
七夏ちゃんと海の近くにある喫茶店でお昼を頂きながら、自由研究の話題が弾む。けど、午後からは海で楽しみたいから、一旦自由研究の事は忘れるように話しを持ってゆきたい。
七夏「これから、海、楽しみです☆」
時崎「ああ!」
七夏「えっと、自由研究のお話しは、また後でもいいかな?」
時崎「俺も、七夏ちゃんと同じ事を考えてたよ!」
七夏「くすっ☆」
七夏ちゃんと考える事が似てくる事は、素直に嬉しい。七夏ちゃんに近いという事を、直接実感できるからだろうか?
時崎「お盆を過ぎてるけど、大丈夫かな?」
七夏「大丈夫って?」
時崎「クラゲが居たりしないかなって」
七夏「確かに、気をつけないと後が大変です☆」
時崎「七夏ちゃん、クラゲに刺された事があるの?」
七夏「私じゃなくて、昔、ここちゃーが・・・」
時崎「天美さんか・・・大変だったんじゃない?」
七夏「はい。手の指が凄く腫れちゃって・・・ここちゃー、すぐ興味本位で触ってしまうから」
時崎「何となく分かる」
七夏「でも、その時以来、ここちゃーも海の生き物には警戒するようになりました☆」
時崎「俺も気を付けなければ」
七夏「柚樹さんは、そう言うの詳しそうですから、頼りにしてます☆」
時崎「え!?」
七夏「くすっ☆」
時崎「じゃ、お昼食べ終わったら海へ!」
七夏「はいっ☆」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
街はずれの綺麗な砂浜と海。七夏ちゃんの家からそう遠くは無く、歩いて来れる場所に海があるのはいいなと思う。この街の海、何度目になるだろうか? 心地よい潮風と波音が、以前にあった出来事を呼び戻してくれる。
七夏ちゃんの水着姿は以前にも見てはいるけど、やはり楽しみだ。以前の記憶がより鮮明に蘇ってくる。そういえば、今日は浮き輪を持ってきてないのかな? まあ、七夏ちゃんは泳げる事を知っているから、特に心配は無い。
七夏「柚樹さん☆ お待たせですっ☆」
七夏ちゃんは、俺の記憶には無い姿だった。この前の若葉色の水着ではなく、青を基調とした水着、半透明のスカートが、優しく揺れてとても可愛い。俺は動揺を堪えながら話す。
時崎「あれ? この前のと違うね?」
七夏「はい☆ 去年、買いました☆」
時崎「そうなんだ」
七夏「2度目の初めてです☆」
時崎「え!?」
七夏「えっと、柚樹さん、色々な衣装が見たいって話してくれたから☆」
この前なんとなく話した事・・・七夏ちゃんは、しっかりと覚えてくれている事に動揺は嬉しさで吹き飛んだ。
時崎「ありがとう! とっても嬉しいよ!」
七夏「よかったです☆」
時崎「髪も結ったの?」
七夏「はい☆ 軽くですけど、どうかな?」
時崎「とても良く似合ってる!」
七夏「ありがとです☆」
時崎「撮影、いいかな?」
七夏「はい☆」
可愛く眩しい七夏ちゃんを撮影した。これは後からでもアルバムに加えたいと思う。
時崎「ありがとう! 七夏ちゃん!」
七夏「はい☆ あ、泳ぎます?」
時崎「ああ! ちょっと待ってて!」
七夏「はい☆」
俺は、写真機を防水カバーに入れて保護をした。これで海に浸かっても大丈夫だけど、流石に汎用の防水カバーでは海中での撮影は難しそうだ。この写真機専用の防水カバーを、いずれ購入しておいた方がいいような気がしてきた。
時崎「お待たせ!」
七夏「はい☆」
七夏ちゃんは手を差し出してくれた。
七夏「柚樹さん☆」
時崎「あ、ああ!」
七夏ちゃんに手を引かれながら、一緒に海に入る。クラゲの心配も特に無さそうだ。海の水は思っていたほど冷たくなく、とても心地が良い。七夏ちゃんはそのまま沖へと進み、胸元あたりまで海水が届く。このまま沖へ進むと足が付かなくなりそうだ。俺は大丈夫だけど、押し寄せる波の高さによっては・・・七夏ちゃん、大丈夫なのだろうか?
時崎「七夏ちゃん!」
七夏「はい☆」
時崎「もし、俺が泳げなかったら?」
七夏「それは、大丈夫です☆」
時崎「大丈夫って?」
七夏「手を繋いだら、分かります☆」
時崎「手?」
なるほど。七夏ちゃんに言われて気付く。泳げない人は、手を引っ張られると、突っ張るような反応があるからだ。以前、海に来た時の高月さんの事を思い出してしまった。
七夏「柚樹さんは、私に合わせてくれたから、大丈夫だと思いました☆」
時崎「なるほど」
泳げるかどうかを直接訊くのは、泳げない人だった場合、心を傷つけてしまうかも知れない。七夏ちゃんの少し積極的な行動にもしっかりとした意味があった訳だと、今更ながらに思ってしまう。
時崎「そう言えば、今日は持ってきてないんだね」
七夏「え!?」
時崎「浮き輪」
七夏「はい☆ 今日は海の中を泳ぎたいから☆」
時崎「海の中!?」
手を離してこちらを振り返った七夏ちゃん。碧い海に浮かぶ「ふたつの虹」は、海に落ちる光の輝きよりも眩しく思えた。
七夏「くすっ☆」
七夏ちゃんと目が合う。水中眼鏡を付けたと思ったら姿が消え、海の眩しい光だけが残った。
時崎「七夏ちゃん!?」
俺も海に潜って七夏ちゃんを追いかけようとするが---
時崎「あいたたっ!」
海水が目に浸みてすぐに浮上してしまった。よく考えれば、塩分を多く含んだ海水の中で目を開けるなんて困難な上、水中眼鏡無しで素潜りしても視界は良好ではないだろう。意外と気付かなかった。
七夏「柚樹さんっ☆」
少し離れた場所に七夏ちゃんを見つける。七夏ちゃんは素潜りが得意なようだ。
時崎「な、七夏ちゃん!」
七夏「ゆ、柚樹さん!」
片目を手で押さえている俺を見て、七夏ちゃんはすぐに側まで泳いで来てくれた。
七夏「柚樹さん! 大丈夫!?」
時崎「大丈夫! 海水が目に入っただけだから」
七夏「よかった☆ これ、使います?」
七夏ちゃんは水中眼鏡を指差しながら話す。
時崎「ありがとう。七夏ちゃん、素潜り得意なんだね!」
七夏「くすっ☆ でも泳ぐのは、ここちゃーの方が速いです☆」
時崎「そうなんだ。七夏ちゃん、俺は大丈夫だから、海の中を楽しんで!」
七夏「ありがとうです☆ 柚樹さんからあまり離れないようにします♪」
時崎「あ、ああ!」
しばらく、潜行と浮上を繰り返す七夏ちゃんを眺める。海の水は透明度が高いから、七夏ちゃんを見失う事はないけど、さっきみたいに突然潜られ、さらに海の光が重なると見失うかも知れないから、気を付けなければならないな。
七夏「柚樹さん☆」
時崎「え!?」
七夏「くすっ☆」
呼ばれたと思ったら、再び七夏ちゃんの姿が消える。
七夏「柚樹さん☆」
時崎「え!?」
七夏「これ☆」
時崎「あ、綺麗な貝殻だね!」
七夏「はい☆」
太陽の光を受けて輝く貝殻・・・俺には虹色に見えるけど、七夏ちゃんには・・・いや、七夏ちゃんにも虹色だ!
七夏「どしたの?」
時崎「いや、なんでもない!」
七夏「柚樹さん☆ どうぞです☆」
時崎「え!? 貰っていいの?」
七夏「はい☆ 柚樹さん、好きですから☆」
時崎「え!?」
七夏「虹色☆」
時崎「・・・ありがとう!」
七夏「くすっ☆」
頭では分かってはいたけど、心はまだ慣れていないらしい。でも、この感覚は何度でも味わいたい。虹色の貝殻を受け取ると、七夏ちゃんは再び海の中へ・・・虹よりも眩しく輝いているように見えるのはきっと・・・このままずっと楽しみたい。
海の中を楽しそうに泳ぐ七夏ちゃんを見ている。いつの間にかブイのように浮かんでいた写真機の防水カバーを手繰り寄せる。
七夏「柚樹さん☆」
時崎「どうしたの?」
七夏ちゃんが水中眼鏡を外して手渡してくれる。
七夏「七夏は沢山楽しめましたから、柚樹さんも海の中を見て☆」
時崎「ありがとう!」
七夏ちゃんから水中眼鏡を借り、海の中を見る。碧く澄んだ海の世界はとても綺麗で、七夏ちゃんが夢中になるのもよく分かる。俺は七夏ちゃんのように泳がなかったけど、しばらく海の世界を堪能する。海の中を泳ぐ七夏ちゃんが視界に入ってきた。とても優雅で綺麗に見えるけど「ふたつの虹」は隠れて見えない。それも見えれば、もっと魅力的なのだろうけど、見えなくても俺は知っている。そんな事を考えながら自然と七夏ちゃんを追いかけてしまった。
七夏「柚樹さん☆ あっ!」
時崎「あ、ごめんっ!」
七夏「・・・・・」
七夏ちゃんは、少し恥ずかしそうだけど、嬉しそうにも見えた。
時崎「とっても綺麗だったよ!」
七夏「えっと・・・」
時崎「海の世界!」
七夏「あっ! くすっ☆」
時崎「七夏ちゃんも!」
七夏「・・・あ、ありがとです☆」
七夏ちゃんに水中眼鏡を渡そうとする手の指が、ふやけてしわしわになっていた。
時崎「七夏ちゃん、まだ泳ぐ?」
七夏「七夏は、十分楽しめました☆」
時崎「良かった。じゃ、岸に戻る?」
七夏「はい☆」
今度は、俺が七夏ちゃんに手を差し出す。七夏ちゃんは、しっかりと手を添えてくれた。思っていた以上に、七夏ちゃんは泳ぐのが得意だった事が印象に残った。出来れば海の中を楽しく泳ぐ七夏ちゃんを撮影したかったと思ってしまうけど、その機会がまた訪れるかどうかは俺次第だ。
<<七夏「2度目の初めてです☆」>>
初めて・・・か。確かに初めての事が沢山あった。これからも沢山あるはずだ!
岸に上がり、七夏ちゃんは海風を受けて心地良さそうに休んでいる。
もう少しこのまま眺めていたいと思ってしまう。
時崎「七夏ちゃん! お待たせ!」
七夏「あ、柚樹さん☆ ありがとです☆」
時崎「ココアは無かったから紅茶だけど」
七夏「紅茶も好きです☆」
七夏ちゃんに飲み物を手渡す。
時崎「七夏ちゃん、泳ぐのが上手で驚いたよ!」
七夏「くすっ☆ 海の波に揺られたり、こうして海の風を受けてのんびり過ごすのも得意です☆」
時崎「のんびりも得意・・・七夏ちゃんらしいね」
七夏「はい☆」
これからも、まだ俺の知らない七夏ちゃんを見つけてゆきたい。
しばらくの間、2人で海を眺める。この海、初めてこの街に来た次の日に来ていた事を思い出す。あの時、俺が探していた少女は、すぐ隣に居て微笑んでくれる。
七夏「? どしたの?」
時崎「七夏ちゃんを探して、この海に来た事があったなと思って」
七夏「え!?」
時崎「初めて七夏ちゃんと出逢って、その次の日」
七夏「ごめんなさい。風水の連絡先を、伝えてませんでした」
時崎「それは構わないよ。今、こうして七夏ちゃんとお話しできてるから!」
七夏「初対面だと、どこまでお話ししていいのか分からないですから」
時崎「確かにそれは、分かるよ」
また再び2人で海を眺める。
七夏「・・・・・」
時崎「・・・・・」
七夏「柚樹さん☆」
時崎「ん?」
七夏「えっと、ありがとです☆」
時崎「ああ!」
しばらく時間をおいて、七夏ちゃんが「ありがとう」と話してきた。なんとなく返事をしてしまったが、この「ありがとう」には、どのような意味が込められているのだろうか?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
時崎「結局、これになったんだ」
七夏「はい☆ 小鳥さん、可愛かったから☆」
雑貨店で、さっき見つけた「小鳥のやじろべえ」を七夏ちゃんは手にしていた。
時崎「自由研究のテーマになりそう?」
七夏「頑張って考えてみます☆」
時崎「俺も協力するよ!」
七夏「はい☆ 頼りにしてます☆」
時崎「まだ何も思いつかないけど」
七夏「くすっ☆」
時崎「この後、写真屋さんへ寄ってもいいかな?」
七夏「はい☆」
時崎「ありがとう!」
写真屋さんで、今日撮影した七夏ちゃんを現像依頼しようと思ったけど、明日中に仕上がるのは厳しいそうだ。現像ではなくプリントならすぐにできるので、その依頼を行った。このプリント写真は、凪咲さんへのアルバムの予備の場所に後で加える事になる。デジタルアルバムの方には、後で追加編集で加えておけば良いだろう。プリントできる写真も明日までが最後になると思うけど、デジタルアルバムには、出来るだけ沢山の思い出を詰め込みたいと思う。
時崎「七夏ちゃん、お待たせ!」
七夏「はい☆」
時崎「他に寄りたい所ある?」
七夏「えっと、今日はこれで大丈夫です☆」
時崎「じゃ、帰ろうか?」
七夏「はい☆ くすっ☆」
時崎「? どうしたの?」
七夏「柚樹さん、帰ろうって話してくれたから☆」
時崎「あっ、戻ろう・・・だね?」
七夏「七夏は、帰ろうがいいな☆」
時崎「じゃ、一緒に帰ろう!」
七夏「はいっ☆」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
七夏「ただいま☆」
凪咲「お帰り、七夏、柚樹君も♪」
時崎「ただいまです!」
七夏「くすっ☆」
「ただいま」と話す俺を見て、七夏ちゃんは嬉しそうに微笑んでくれた。
凪咲「潮風にあたってるはずだから、流してくださいませ」
時崎「七夏ちゃん! お風呂、お先にどうぞ! 俺は先に今日の写真を追加しておくから」
七夏「はい☆ ありがとうございます☆」
凪咲「柚樹君、ありがとうございます♪」
七夏「お風呂あがったら、すぐに柚樹さんに声をかけます☆」
時崎「ああ! 待ってる!」
部屋に戻り、七夏ちゃんの写真をマイパッドに転送する前に、
時崎「これも撮影しておこう」
七夏ちゃんからのプレゼント、虹色の貝殻を撮影する。
時崎「・・・・・」
もう1枚撮影する。
時崎「・・・・・」
もう1枚!
時崎「・・・・・」
七色の貝殻は、撮影する度に色が変わって記録された。普通の事なのだけど、こんな風に・・・。七夏ちゃんと貝殻の写真をマイパッドに転送し、デジタルアルバムに加えてゆく。プリントした写真は製本アルバムが出来たら加えようと思うけど、それは七夏ちゃんと一緒に行おうと思う。後は、七夏ちゃんへのアルバムのみだ。上手く出来ると信じて作業を再開する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
七夏「柚樹さん☆ お風呂お待たせです☆」
時崎「ああ! ありがとう!」
七夏「くすっ☆ 七夏、ゆっくり入ってましたから、お待たせして、すみません」
時崎「構わないよ。でも、よく考えたら、露天があったなと」
七夏「そういえば・・・です☆」
七夏ちゃんから、とても良い香りが広がってくる。
時崎「明日は露天に入ろうかな?」
七夏「はいっ☆」
時崎「え!?」
七夏「くすっ☆」
今の「はいっ☆」は・・・七夏ちゃんの考えている事が、まだ分からない。
七夏「明日は、露天の準備もしておきますね☆」
時崎「え!? あ、ありがとう!」
露天の準備・・・ようやく、七夏ちゃんの考えが分かった。これは、倒置法の域を超えていると思う。
七夏「柚樹さん☆ ここにお着替え置いておきますね☆」
時崎「いつもありがとう!」
七夏「くすっ☆ ごゆっくりどうぞです☆」
七夏ちゃんと同じ香りのするお湯に満たされてゆく。体が少しヒリヒリとするけど、とても心地良い。ここで過ごせるのもあと2日か、明日も七夏ちゃんと一緒にお出かけ出来るといいな・・・いや、七夏ちゃんと一緒にお出かけしたい! 後で七夏ちゃんにお願いしてみよう! 目を閉じてしばらくこの香りと温もりを楽しませてもらった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
七夏「あ、柚樹さん☆ 冷茶どうぞです☆」
お風呂を上がると、すぐに七夏ちゃんが声を掛けてきてくれた。
時崎「ありがとう! 七夏ちゃん、明日も時間あるかな?」
七夏「はい☆ 大丈夫です☆」
時崎「午後から、一緒にお出掛け、いいかな?」
七夏「はいっ☆」
時崎「七夏ちゃん、お出かけしたい所ある?」
七夏「えっと、七夏のお気に入りの場所かな?」
七夏ちゃんお気に入りの場所・・・あの場所の事だろう。「翠碧色の虹」の事を知ったあの場所・・・。
七夏「どしたの?」
時崎「よし! じゃ、午後からよろしく!」
七夏「はいっ☆ あ、お夕食も出来てます☆」
時崎「ありがとう!」
七夏ちゃんと一緒に夕食を頂いていると、凪咲さんも来てくれた。
七夏「お母さんも一緒に、お夕食どうぞです☆」
凪咲「ありがとう、七夏。柚樹君、いいかしら?」
時崎「もちろんです!」
凪咲「ありがとう」
凪咲さんと七夏ちゃんと3人でお夕食を頂くのは、久々な気がする。いつも凪咲さんは俺より先か後に頂いているからだけど、お客さんが居ない時は、一緒でもよかったのではと思ったりした。
時崎「凪咲さん、明日、アルバムが渡せると思います!」
凪咲「まあ! いよいよ完成なのね♪」
時崎「その予定ですけど、追加で七夏ちゃんを撮影している分がありますので、それを加えてからでもよろしいですか?」
凪咲「ええ♪ 柚樹君がご納得できるまで待ってます♪」
時崎「ありがとうございます。アルバムが完成するのは明日の夜頃になると思いますが、完成したらすぐにお話しします!」
凪咲「今から楽しみだわ♪」
七夏「くすっ☆」
時崎「七夏ちゃん!」
七夏「はい!?」
時崎「七夏ちゃんのマイパッドにも、アルバムのデータを送るから!」
七夏「はい☆ ありがとうです☆」
夕食を頂きながら考える。ここ、民宿風水で行わなければならない事は、他に無かっただろうか? 七夏ちゃんの虹の事以外で、出来る事があれば行っておきたい。
凪咲「柚樹君が、来てくれて色々とあったわね」
時崎「色々・・・ですか?」
凪咲「ええ♪ 色々♪」
時崎「・・・っ! な、凪咲さんっ!」
七夏「ひゃっ☆」
時崎「あ、ごめん! 七夏ちゃん!」
七夏「ど、どしたの? 柚樹さん?」
時崎「色々・・・色!」
凪咲「気付いてくれたかしら?」
七夏「???」
時崎「はいっ! 色々な事と言いながら色が無い!?」
凪咲「ええ♪」
大切なのは色ではなく・・・なんだ!?
時崎「大切なのは、色ではなく・・・えっと・・・」
凪咲「決めない事かしら?」
時崎「決めない事・・・」
七夏「答えが無いのも、答えのひとつかな?」
時崎「七夏ちゃん?」
凪咲「柚樹君は、答えを見つける事に一生懸命になり過ぎていないかしら?」
時崎「それは、俺がここに居られるのは---」
凪咲「違うわ!」
時崎「え!?」
凪咲「アルバムが完成しても、私は柚樹君がこのままずっと居てくれると嬉しいと思ってます」
七夏「お、お母さん!?」
凪咲「七夏もそうよね?」
七夏「え!? えっと・・・はい☆」
時崎「七夏ちゃん・・・」
凪咲「だから見つからなくてもいいの。私にも、七夏にも、もっと大切な事があるのよ」
時崎「凪咲さん・・・ありがとうございます」
凪咲「こちらこそ♪」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夕食を頂いた後、自分の部屋で改めて凪咲さんの言葉を考える。「見つからなくてもいい」・・・か。でも、俺は別の方法で見つけようとしている。少しでも可能性があるのなら、その事に一生懸命になるのは間違っていないと思いたい。七夏ちゃんへのアルバム・・・これで、七夏ちゃんの望む事が少しでも叶えば俺は嬉しい。そして、俺が喜べば七夏ちゃんもきっと喜んでくれるはずだ。民宿風水にお世話になって、この部屋が本当に自分の部屋のように思えるのは、凪咲さんに感謝しなければならない。
時崎「自分の部屋・・・か」
1ヶ月ほど過ごしたこの部屋。七夏ちゃんが案内してくれた部屋。遠くの海も見えるとても心地よい部屋。
<<七夏「えっと、お部屋は、こちらになります」>>
本当に自由に使わせてもらってたな。明日は、この部屋の掃除を念入りに行おうと思う。
トントンと扉が鳴った。
七夏「柚樹さん☆」
時崎「七夏ちゃん、どうぞ!」
七夏「はい☆」
時崎「七夏ちゃん、今日は疲れたでしょ?」
七夏「えっと、それ以上に楽しかったです☆」
時崎「俺も楽しかったよ!」
七夏「くすっ☆ えっと、明日は午後から一緒にお出掛けですけど、午前中はどうしようかなって」
七夏ちゃんの言葉が嬉しい。午前中も一緒に居てくれる事が伝わってくるから。だけど、七夏ちゃんへのアルバムの仕上げを行いたいから、どう答えたらいい?
時崎「ありがとう! 午前中は、お部屋を片付けようと思ってるんだ」
七夏「お部屋・・・くすっ☆」
時崎「え!?」
七夏「確かにお片付けの方が良いかなって」
時崎「ごめん。ほぼ1ヶ月の間、自由に使わせてもらったから!」
七夏「私もお手伝いします」
時崎「ありがとう! でも、自分でなんとかしたいから」
七夏「え!?」
時崎「自分で散らかしたんだから、自分で片付けたい」
七夏「くすっ☆ はい☆ 私、待っている間に宿題を進めますね☆ 何かあったら声をかけてくださいね☆」
時崎「ああ! ありがとう!」
七夏「それじゃ、柚樹さんも夜更かしは控えて、早めにおやすみくださいませ☆」
時崎「・・・はい」
七夏「くすっ☆ おやすみなさいです☆」
時崎「おやすみ、七夏ちゃん!」
再び、七夏ちゃんへのアルバム作りを再開する。明日の午前中はお部屋の片付けも行いたいから、作業に集中する・・・あともう少しだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
時崎「・・・よし! これで後は糊が乾けば!」
トントンと扉が鳴った。
時崎「七夏ちゃん!?」
直弥「時崎君!」
時崎「え!? は、はい!」
直弥さんだ。俺は慌て気味に扉を開ける。
直弥「こんばんは。夜遅くにすまないね」
時崎「いえ、どうぞ!」
直弥「いや、すぐに済むからここで構わないよ」
時崎「はい」
直弥「凪咲から聞いたよ。アルバム、明日完成するんだってね」
時崎「はい。明日の夜頃になりますけど」
直弥「ありがとう!」
時崎「お礼はその時でも---」
直弥「すまない。明日から、C11の回送で出張なんだよ」
時崎「え!? 回送?」
直弥「蒸気機関車イベント期間が終了したから、機関車を元の場所に返す事だよ」
元の場所・・・今の俺の気持ちと重なってしまう。
時崎「・・・・・」
直弥「時崎君!?」
時崎「あ、すみません」
直弥「時崎君も明後日、この街を発たれると聞いたから、お礼は今しか言えないと思って、ありがとうございます!」
直弥さんは頭を下げたあと、敬礼のポーズをとった。
時崎「な、直弥さん。そんな、こちらこそ、大変お世話になりました!」
俺も頭を下げて、敬礼のポーズをする。
七夏「柚樹さん? お父さん!?」
時崎「な、七夏ちゃん!?」
直弥「七夏、起こしてしまったか、すまない」
七夏「柚樹さんの声が聞こえたから・・・」
時崎「うっ・・・ごめん」
七夏「くすっ☆」
直弥「七夏、もう遅いから、早く寝なさい」
七夏「はーい☆ おやすみなさいです☆」
直弥「おやすみ、七夏」
七夏「柚樹さんもです☆」
時崎「ああ! おやすみ、七夏ちゃん!」
七夏「くすっ☆」
直弥「それでは、これで失礼します」
時崎「は、はい!」
直弥さんが、わざわざご挨拶に来てくれて、俺はまだまだだと思わされた。直弥さんが明日から出張だという事を知らなかったとしても、俺が直弥さんだったとしたら、同じ事が出来ただろうか。七夏ちゃんを始め、凪咲さんや直弥さんのように心遣いや配慮が出来るようになりたい。そう言えば以前、直弥さんの部屋にお邪魔した時、分解されていた鉄道模型の車両があったけど、元に戻っているのだろうか? 七夏ちゃんに訊いてみようと思ってそのままになっていた。もし、七夏ちゃんがお手伝いをしていたとしたら、俺も一緒に手伝ってあげたい。明日、七夏ちゃんに訊いてみよう。今度は忘れないよう、マイパッドのメモに記しておく。
主 「おやすみ。七夏ちゃん」
大切な人へ心を込めて想うと、自然と言葉になっていた。明日も色々な事がありそうだけど、思い残す事が無いよう、そして、七夏ちゃんと楽しみながら過ごせる1日となるように頑張りたい。俺にとって七夏ちゃんは、虹よりも七色にそして、優しく輝いてくれる存在になっていると思うのだった。
第四十四幕 完
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次回予告
思い出は、想い続けると色褪せる事は決して無い。
次回、翠碧色の虹、第四十五幕
「思い出は七色の虹へ」
想い続ける事で、その時よりも色鮮やかな思い出へと変わる事だってきっとあるはずだ!
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