色彩という名の蝶。

スーツは夜空


 都会の人々はたくさんいるのに、他人に関心とか干渉しない。そのくせして人体に依存している、くろいはこのことばかりに気を配り、ブルーライトを浴び続ける。

 マスクはひつじゅひんなのは、他人に話しかけられないためなのです。いつからかつけ始めて、生まれた我が子にもつけるだろう。そうするれば会話をしない子になって、青い光を放つようになる。

 青い光を放つ子が増えて、さいしゅうてきにはこの国はシリウスのようになって、ばくはつして、ぜつめつする。

 だから都会の空は灰色で、街も同じように塗られて、光がはんしゃしないようにさせている。純白は自分にもひがいが起こって、漆黒だと夜空に見えるからって、灰色の世界を創りだしたんだ。

 それなのに光を放たない大人たちは夜空と同じスーツを着ている。我が子を光らせるために夜空となる。




 未来の日本人はみんな、マスクが顔にくっついている状態で生まれると思うんだ。それぐらい大切なものだと思うから。




 この世界の住人たちは、スマホさえあれば生きていける人種へと進化している気がします。CDやDVDはアプリ一つで全ての曲が聴けるようになり、赤いアイコンが通知を知らせる。想いを伝える手紙は、緑色のアイコンへとコンパクト化され、データが消えれば想いも消える。どっしりと鞄の中で存在感を放つ本も、いつの時か薄いカメラがついている箱へと変わってしまった。お店で気に入った服を彼氏と見に行くこともなく、ファッションアプリを開いて、「お気に入り」と「保存」を押すだけの休日になってしまった。恥ずかしながらも同級生から買い取った先輩の写真も、今では隠れて撮れるようにもなった。親友宅で泊まると両親に嘘をつきながら、人混みの激しい広場で話しかけるのを待つ必要もなく、クリックとスクロールだけで手軽な相手を探すことも出来るようになった。



 世界は光に反射させるために、僕の瞳を潤したんだ。でもカラコンで蓋を閉め、代わりに物言わぬ唇を潤した。言葉が光り、スーツに宿る。

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