お魚と紫の藻

ゆたりん

第1話 湖の平和な暮らし

あるところに大きな湖がありました。そこでは小さなお魚が群れで暮らしていました。

その湖には特に天敵もいなかったため、そのお魚の群れは平和に暮らしていました。

また水草も豊富で食べることにも困らずに毎日が平穏無事に過ぎていきました。


しかしそんなある日、湖の中の食べられる水草が生えている場所の近くに藻のようなものが出てきてしまいました。水草を食べるためには漂う藻の中を進まなくてはなりません。それにこの藻はちょっとだけ変な臭いがしました。

ちょっと我慢すれば水草にたどり着けるのですが、このままにしておくのもなんなので大人のお魚たちがせっせと片付けました。

パクっと藻を咥え、ペッペと湖の外に吐き出してそれを繰り返すことですぐに藻はなくなりました。


しかし、しばらくするとまた藻が出てきてしまいました。今度は前のよりも量が多いようです。藻が濃すぎて臭いし水の濁りもヒドい有り様です。

そこで今度はもっと多くの大人のお魚たちが作業に加わり、前と同じようにキレイにしていきました。

これで一見落着といけばよかったのですが、それから毎日のように片付けても片付けても藻が出てきてしまいました。水草を食べるためにはこの藻をなんとかしないとなりません。臭いもさることながら、藻による水の濁りで迷子になりかける子供も出てしまっていたからです。

そこで大人のお魚たちは決まりを作って、毎日藻の掃除をすることにしました。


そんなある日、藻の掃除中に一匹のお魚が行方不明になる事件が起こります。群れ総出で探しましたが、いくら探しても見つかることはありませんでした。

「きっと鳥にでも捕まって食べられたんだろう」

と大人のお魚たちは話していました。


さて、それからしばらくすると藻の中に紫色をした藻が混じってくるようになりました。そして少しずつ紫色の藻が増えていき、藻の半分くらいは紫色の藻になりました。

大人のお魚たちは不思議に思っていましたが、特にいままでの藻と変わらないように見えたのであまり気にもとめませんでした。

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