けものフレンズ ~After Day~

八重垣みのる

第1話 海を渡る

「わっせ!わっせ!」


 海の波は穏やかで、日が照り返してきらきらと輝いていた。


「アライさん、少し休もうよ」

 フェネックが言った。

「ダメなのだ。カバンさんのために頑張って進むのだ!」


 カバンちゃんが乗っていたバスの電池がなくなってからというもの、ごこくちほーを目指し、サーバル達が乗ってきたバスでみんな代わる代わる漕いで進んでいた。


「アライグマさん、フェネックさん。ボクなら大丈夫です。そろそろ交代しますよ」

「そうだよ。わたしとカバンちゃんで漕ぐよ」

 サーバルも応えた。

「それにしても、ぜんぜん進んでないねぇ」

 フェネックは漕ぐのをやめて呟いた。

「ここら辺は潮の流れが変わりやすいから、気をつけないと流されるんだよ」

 途中で出会ったマイルカは横で泳ぎながら言った。


 その時、強い風が吹いた。カバンは帽子を飛ばされそうになって思わず両手で押さえた。

「あっ!」

 何か思いついたようだった。

「どうしたのかばんちゃん?」

「一つ思いついたことがあります。風を使って進めないかなと…」

 それからカバンは、じゃぱりまんを入れてあった袋を一つ掴んだ。


 それは風に煽られて袋はバタバタとはためいた。

「これで風を受けとめるようにすれば、漕がなくても進めるんじゃないかと…」

「すごーい!」

「やっぱり、かばんさんはすごいのだ!」

「やるね、カバンさん」

「ホセン ダネ」

 カバンさんの腕のラッキービーストも言った。

「ほせん?ですか」

「オオムカシ ノ フネ モ カゼ ノ チカラ デ ススンデ イタモノ ガ アルヨ」

「えー。ボス。知ってるなら早く教えてよ!」

 サーバルは思わずツッコミを入れた。

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