第4話貴方の前で

貴方の前で 初めて泣いた

 あの日から


もう一年が 経ちましたね


私はまるで 子供の様に…

大事にしまってたはずの 玩具を失くしたかの様に…


ただただ 泣きじゃくっていたね



そして 其処から動けなくなった

そして 其処から刻を止めた


一片の変化も許さぬ眼差しで

 歩み続けると 当然の如く違和感だらけで


でも 止めてしまったから


貴方を見て 泣く事も

貴方を思って 泣く事も


何だか怖くなっちゃって 出来なかった


痛みを なぞる様に具現化し続け 何だか其れに救われる

消ええぬ 其れに安堵する


やっぱりちっちゃな 子供みたいね



一年後の蝉の音が アタシを そこ からグラつかせる

 

 其処から 這い上がりたいのか

 其処に 居たいのか 

底に… 痛いのか…




貴方の前で…


貴方の前で アタシはまだ泣いていますか?


貴方の前で どんな顔をしていますか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る