ぱーくゆらしあん大特区:だいへいげんにて

「あー、テステス、皆さん聞こえますか? こちらセイリュウ、東方の石板巨塔の準備完了です。ビャッコさん、西方はどうですか?」

「こちらビャッコ、私も万端だ。やはり、この天空を介した通信装置とは、霊力を温存したまま遠くの者と会話ができて便利だな。それにしても……まさか、この姿でこの地に足を踏み入れることになるとはな」

「ビャッコが感慨深くなるのも無理はないのじゃ。遥か昔、我らが初めてこの星に顕現した大陸……のはずじゃからの」

「スザクの記憶がおぼろげなのも無理はなかろう。ヒトがようやくわしらの存在に気付いたから姿を見せただけであって、私達は元々、どこにもいなくてどこにでもいるようなものだからな」

「ゲンブが我をフォローするとは今宵は吹雪かの。そういえば、きょうしゅうの結界が崩れたのは確かお前の方角が原因じゃったよな? あれしきのことで崩れるとは、守りを司る甲羅ももーろくなったもんじゃのっ」

「うるさいわ、言葉遊びの好きなフレンズらの影響を受けよってからに。あの火山は暑すぎて本来の力が出せなかっただけぞ。そなたとて、ほっかいの氷湖の結界が崩壊した原因であろうに」

「我は寒いのは苦手なーのーじゃーっ!」

「はいはい、痴話喧嘩はそれくらいにして、お二人も準備はできてますよね? では、皆さん行きますよ!」



「ようやく合流できたのじゃ。それにしても、ヒトのカガクの進歩は目を見張るものがあるが、今や半無人のその力に頼り切らねばならなくなったとは、我らの力もめっきり衰えたもんじゃのー」

「この姿はサンドスターによって顕現したものとはいえ、わしらの力の根源はあくまでファンの声援…ゴホン、ヒトの信仰にあるからな」

「ヒトが私達を頼り、私達が力を貸す。ヒトが私達を信じ、私達が力を得る。そんな素敵な共生関係も、あくまでヒトの繁栄あってのことですからね」

「どちらが卵かニワトリかはわからんが、今の私達にできる精一杯のことをする。ただそれだけだな」

「ヒトといえば、合流する前に途中の廃村でこのようなものを拾ったのじゃ」

「これは……私達の姿を模した開運の印章や偶像やお守りですね。確か……バッジやフィギュアやチャームと言いましたっけ」

「日焼けや腐食でボロボロになってはいるが、少なくとも異変やセルリアンによる破損ではないようだな」

「常に肌身離さず持ち歩いていたか、縄張りに飾ってくれていた、というわけか。わしらもアイドル冥利に尽き……ゴホンゴホン。その、なんだ、わしらもその時代時代のヒトの望む様々な姿で顕現しては、絵画や小物の形で分身が作られ遺されてきたわけだが……自分のグッズを自分で見るというのは、やはりいつになっても照れくさいものだな」

「いかな私達と言えど、目に触れぬ倉庫に長年しまい込まれた状態では、信仰を得ることも気力を分け与えることもできぬからな。あのツチノコがあれだけの力を秘めていたのも、ヒトが伝承を絶やさず探し求め続けたからかもしれんな」

「これらのグッズからは長年に渡り蓄積された輝きを感じるのじゃ。触れて眺めているだけで力が湧き上がってきて、戦いの疲れも一瞬で吹っ飛ぶというもんじゃ。ありがたやありがたや」

「たったこれだけでまた頑張れちゃうなんて、私達も俗世に染まったものですね。そうだ、せっかくこの地に来たのですから、今夜は麻雀でパジャマパーティーとでも洒落込みましょうか」

「我の眷属であるスズメの名を冠した遊戯で負けるわけにはいかないのじゃ。あやつもヒトに寄り添うように数を減らしていって、ついにサンドスターに選ばれたようじゃの」

「いずれはヒトも選ばれるやもしれぬな。わしらも精一杯守護はするが、種の繁栄はあくまで自らの力で成し遂げてもらわぬことにはな」

「自らフレンズになって共存共栄を図ろうとする面白い娘もいるくらいだしな、ハッハッハ。あのような者たちが支えている限り、ヒトの未来の風が止むことはないだろう。そうそう、風牌は全て私のものだからな、誰にも鳴かせんぞ」

「いくら風を司るからって、一人占めはダメよビャッコさん。私だって東を集めたい……じゃなくて、打ち方を決め打ちしたらつまらないでしょ」

「我は一索を集めるのじゃ。我に似たあの娘の面影は譲れないのじゃ」

「セイリュウよ、無理強いは良くないぞ。誰しも譲れないものがあるのだ。わしは役の方だがな」

「ああ、その役はゲンブさんだけでなく守護獣であるこの面子ならみんな好きですよ。これも言葉遊びに過ぎませんけど」

「掛詞というものもあるし、同じ韻や字には僅かに力が備わるものだよ。私の名を冠したけものは強かったぞ。早上がりできるのも速さを求める私には魅力だしな」

「仕方ありませんね、各自好み全開で打ち合う、でいいでしょう。では、始める前に少し祈っておきましょうか」



「「「「この世界が平和でありますように」」」」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る