でんせつのけものたち
まや2
きょうしゅうえりあ:かざん中腹にて
「……さてセイリュウよ、私の石板はこの辺りにでも置けばいいかの? 風を起こして扇いでるのにあまりの暑さに上も下も蒸れ蒸れでな」
「めくれそうではしたないですよビャッコさん! あともっと奥、奥です……そうそこそこ!」
「わしもこの火口の暑さには参ってしまうのう。早う終わらせて涼し気な歌でも聴きながらのんびり冬眠したいものよ」
「情けないぞゲンブ、その様で我ら四神獣の中で最年長を司る神だとは片腹痛いのじゃ~、ふっふ~ん」
「ピーピー喚くでないスザクよ。たまたまここがわしの苦手でそなたの得意な南方の火の地脈なだけであろうに、舞い上がりおってからに……」
「はいはい、いつものじゃれ合いは後にしてくださいなお二人とも。石板を設置したら力を封印する儀式がまだ残ってるんですから」
「わかったわかった」「ふぇーい」
「……やれやれ、一番の若輩者が一番頼りになるとは。老いては子に従えとは、はてどの獣の諺だったかな」
「遠くにいても聞こえてますよビャッコさん。私を子供扱いするのはやめてくださいね。いくら私達が年代を司るといっても、私達自身に歳の差なんて概念は意味を持たないし、特にこの姿で顕現してからは見た目も大差ないんですから」
「それもそうか。私達も古今東西様々な姿で顕現してきたものだが、この姿は特に気に入っておるよ。何せ可愛いしな。ピラピラ~」
「ほらまたはしたない! いい加減怒りますよ!」
「「……またいつもの痴話喧嘩が始まったな」のじゃ」
「しかし、あの白衣の小娘もなかなかやりおるわ。獣の神として実に誇りに思うぞ」
「まさか自らの苦々しい経験を基に、わしらの力を解析して石板に封印して遠隔管理する術まで編み出してしまうとはな。……人柱という苦い言葉を久方ぶりに思い出したわ」
「カガクという術だと聞いたのじゃ。ただ昔に聞いたそれとは、もはやかなりの別物のようじゃの。けもサイ……なんとかじゃったか」
「あのキツネどもの霊力と入れ知恵が多分にあるようだしな。私達の霊力と組んで東西融合といったところか」
「皆さん雑談はそれくらいにして――そろそろ気合入れて行きますよ!」
「あー終わった終わったのじゃー」
「さて帰って音楽でも聴きながらひと眠りするかの」
「ぬしらちょっと待てい。まだ旅こ……戦いは始まったばかりであろう。」
「そうですよ、次はごこくえりあで観こ……儀式が待ってますよ」
「重要な任務の割にはノリノリだなそなたら。ヒトの文化に毒されたか」
「アイドルに毒されまくってる人に言われたくありませんね。……こっそり歌とダンスの練習してるの知ってるんですから」
「な、なななっ!?」
「火の少ない地は気が乗らないのじゃー」
「そう腐るな。道中でご当地ジャパまん巡りでもしようじゃないか」
「おお、例のお供え物の亜種じゃな? それは行かねばなるまいて」
「大変な時だからこそせめて神生を楽しみませんとね。これはあのやたら前向きなガイドから学んだことでしたね。では皆さん、化身になって移動しますよ。ビャッコさんは……そのままでゲンブさんの甲羅にでも乗った方がいいでしょうか」
「う~む、風の力や虎掻きではせっかくの力を無駄に消耗してしまうからな……ゲンブよ、よろしく頼む」
「はー、はー、ごほん! う、うむ、任せよ」
「それでは、しゅっぱーつ、しんこうー、なのじゃ!」
(後編に続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます