第六章〜鮮やかに彩ったこの道を〜

第18話 明日への境界線

人は生まれついた時から平等ではあらず。

弱者は潰され強者は上に立つものなり。

人は争いに負けたのならば代償は支払うものなり。それ即ち「人としての権利」なり。

セカイに神あらず。悪魔あらず。

セカイは人が造り上げるものなり。

敗北者は勝者に歯向かうことあるべからず。


第18話 明日への境界線


「僕に出来ることがあるなら、全力でするよ?」


あの出来事から二時間程度が経った。京香を守りきったことは事実だが、村が崩壊したのもまた事実だ。村を崩壊させたのは間違いなくアレクダルア共和国だ。しかし実行者を見つけたとしても打つ手が無ければどうしようもない。まだまだ課題は山積みだ。シャロット、という名のお偉いさんの娘さんはたまたま偶然だが助けに来たらしく、それそれと重要人物を逃がすわけにも行かないため、監禁とは人疑義が悪いが、少しの間は同行してもらうことにした。アレクのお嬢様だ。いないということに気がつけば、あの圧倒的な物量で、こんなちっぽけな村など消し飛ぶだろう。なにか・・・打つ手があればいいのだが…


「駄目だ...全く浮かばない」

『当たり前だ、なんのためのクソ無能頭だと思ってんだ』

「ちょっと黙ってくんないかなアイル...?」


「仲が良いのですね、」


口を開いたのは他でもなくアレクのお嬢様だった。スラッとしたとても綺麗な体格に、穏やかで清楚な性格。そして可愛い童子顔。ロリコン発動。アレクダルア人じゃなかったら結婚を申し込んでたな。


「まぁな、これでも結構長い中だしな」

『腐れ縁ってやつだ』

「ざけんな」


こうした会話も、相当久しぶりなものだ。最後に話したのももうあのプロジェクトリダイブアッシェントの会話以来だ。・・・?あっ


「なあアイル・・・リダイブアッシェントはどうなったんだ?」


その瞬間にアレクのお嬢様は下を向いた。なにか隠してでもいるのだろうか、やだなぁ、気になるじゃないか。


『あぁ...その件なんだが...』

「なんだ?なんか進展でもあったのか?」


そしてふらっと立ち上がったアイルは京香の前に立ちこう言った。


『京香。お前の血が狙われている。』


おいおい。いきなりストレートパンチアンドアッパー決めてくんなや。まぁ話には聞いていたものの、本当だったとはなぁ...


『しばらくは身を隠した方が良さそうだな』

「え...僕の血?なんですか?」


京香は動揺していた。まぁ無理もないな。


「あぁ、驚いて当然だ。あんな暗黒空間からいきなり外に出てきていきなり あーなたーのちーはねーらわーれてーイマース。って言われたらそれはビックリするな」


お前ってそんなキャラだっけ…


「いや...僕のことはだいじょうぶですよ」

「大丈夫なのか?京香」

「正確には良くないけど...兄さんとかに迷惑かけたくないし…」

「気にしなくていいぞ?お前の兄貴なんだからさ!」

「ありがとう...兄さん...」

『あのさ・・・お前ら兄妹って言うのは分かるけど...会ったばっかりだよな・・・』

「え...?あぁ」

『リア充なのか?』


プォップォォォォォォォ!!!!


『うわぁ!京香の顔がヤカンの沸騰状態みたいになってる!!!』

「お前がよけーな事言うからだよ!!」


横を見ると...


「男同士でも体触るんですね…」ポッ♡


お嬢さん・・・あんた腐女子なのかよ。

って場合かァァァァ!!!



同日の夜。


京香が、俺のところに来て、もう一日が終わろうとしている。俺の人生の歯車は動き出し、俺の人生の色彩は彩り始めた。京香の声が聞けるだけで、俺は幸せな気持ちになる。・・・やっぱりリア充なんか?・・・なわけない。あんなにも辛いことや、悲しいことがあったのに、人ひとりで、こんなに変わるってことを教えてもらえた。感謝&感謝。明日が来るのを拒んでいた俺は、今では明日が来てほしい。明日への境界線は、いとも簡単に突破出来るものなんだと、確信した。だが、京香が狙われている事や、戦争が続いていること、それらは曲がり用のない事実。これにどう立ち向かうのか、難しいなぁ・・・。

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