転生したけどアンデット-死んだまま異世界生活-
宵闇崎タケル
第1話 転生、しちゃいました
「現れたな魔物め!これ以上好きにはさせんぞ!」
「男どもは武器を取れっ!村を何とか守るんだ!!!」
目が覚めたらそんな声と共に目の前に剣や斧を持った人がいた。すごい剣幕で俺を睨んでいる。
「待てよ、魔物なんてどこにいるんだよ」
突然のことで訳が分からず、俺は目の前の人に話しかけようとした。そもそも俺は死んだはずだ、大型トラックに轢かれて…
「しゃ、喋った⁉︎魔物の癖に知能は高いのか?」
「聞いたことないぞ、喋る
こちらの問い掛けには答えず勝手に話を進めている。
「おい話を聞けよ。魔物なんてどこにもいないじゃないか」
「何言ってんだこいつ⁉︎魔物の分際で!」
魔物?ロート・ヴァンプ?一体さっきから何を言ってんだこいつら、まるで俺が化け物みたいじゃないか。まぁ取り敢えず話し合いで解決出来ればそれに越したことはない。
「まず落ち着けよお前ら、話し合おう。こちらに敵意はない、ここで一番偉い人を呼んでくれ」
「ふざけるな!何が話し合いだ!ここで殺してやr」
「待て!!その魔物の話を聞いてみてもいいかもしれん…知能もありそうだしのう」
男の言葉を遮り、初老の男性が俺の前に進み出た。
「儂はこの村の長老のガーン・ロットというものじゃ。魔物に名前があるかわからんが、御主に名前はあるか?」
ロット氏には敵意は感じられず、あくまでも対等に接してくれているのがわかった。
「名前か、俺は
「変わった名前じゃのう…まぁ良いじゃろ、端的に言えばじゃな、魔物の反応があってきてみれば御主がいた、というわけじゃよ」
なるほど、侵入者撃退のためか。仕方ないっちゃ仕方ないな。
「だがどうして俺を魔物って呼ぶんだよ」
「ん?もしかしてお主、自分が何なのかわからんのか?」
「ああ、全然わからん」
周りには鏡や水溜りも無いし、自分の姿を確認することもできないから現状が全く理解できない。
「そうか…ほれ、鏡じゃ」
そう言ってロット氏は手鏡を渡してくれた。
「ありがとな。どれどれ…………は?」
鏡を見て俺は固まってしまった。
鏡の中にはボサボサの黒髪に茶色の目をした中性的な外見の俺がそのまま写っていたのだが肌は所々緑色になり、全裸だった。しかも、口を開ければ吸血鬼のような牙が生えていた。そう、まるでアンデットモンスターのような…
「わかったじゃろ、お主を魔物と言った理由が」
「…ア、アンデットォォーー⁉︎」
異世界に来て初の絶叫が村中に響き渡った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は悲しみに打ちひしがれていた。
「俺、もうお婿に行けない!!」
「ま、まぁ…その、なんじゃ……気にするでない。仕方ないっちゃ仕方ないことなのじゃからの」
凄く微妙な空気が場を支配していた。
長老の家に入れてもらい服も貰ったのだが、見られてしまった恥辱と悲しみで俺は黙り込みロットさんに慰められていたのだった。
「話を進めたいんじゃがのう…。見られてしまったものはしょうがないじゃろ?」
ロットさんは話を進めたいらしく口調が早くなってきた。
俺としても状況を確認したいし、この世界の情報も知りたいしな。気分を切り替えよう。
「…確かにしょうがないかぁ…。よし、話し合いを再開しようか」
「立ち直ったのう…もうしばらく掛かるとうんざりしとったわい」
「いやそんな貧弱でも無いし、人のことなんだと思ってんだ」
「はっはっは!貧弱も何もお主
「ハハッ!そりゃそうか」
「「ハハハハハハ!!!」」
なんかこの人とはうまくやっていけそうな気がする。俺の感性がジジイ臭い訳では決して無いはずだ…多分、いや断じて違う!!
「ところでロットさん、聞きたいことってのはなんだ?」
「ああ、そうじゃったそうじゃった。危うく聞きそびれるところじゃった。」
まあ話に流されそうになってたからな、話を戻さないと。
「さて、御主本当はなんじゃ?普通の魔物では無いとは思うが、生まれたばかりの
「普通の魔物とは違うのか?」
「違うも何も生まれたての魔物がそんな風に流暢に喋れるわけないじゃろ。それに御主は気付いてないじゃろうが濃密な魔力をそんなに垂れ流して…普通の魔物、ましてや原種にもこんな奴おらんぞ」
えっ⁉︎マジで⁉︎ガチかよ!!なに、俺そんなおかしいの?魔力だだ漏れってどういう…嗚呼ヤベェ、意識したら魔力出てんのわかったわ。確かにだだ漏れだわ、どうしよ…あっ引っ込んだ。
「魔力制御できたようじゃの」
「ん。意外と簡単だったよ。じゃあ俺の話するけどいい?」
一応確認をとる。まぁこの場にいるのはロットさんだけなのでいらない確認なのだが。
「ああ、良いぞ」
「まずは知性がどうのこうのって話だけど、多分それは俺が違う世界から来たからだと思う」
実際、トラックに轢かれた感触はまだ残ってるというか思い出して来た。
「つまり御主は異世界人、しかも転生者ということか?」
「まぁ多分だけど、てかなんで転生者ってわかんだよ」
「それは今までも召喚者や転移者、転生者や勇者はおったが、誰一人として魔物はいなかったことじゃな。そもそも一回死んで転生でもしない限り、魔物になるなんてこと起こるはずなかろう」
なるほど確かにその通りだ。
「合点がいったわい。なるほど、確かに転生者なら前世の記憶を引き継いだ可能性もある。思えば最初の御主の反応も考えてみれば当然じゃのう」
カラカラとロットさんが笑う。そんなに面白いことか?
「あとは魔力なんだがさっぱりわからん。第一、転生前の世界では魔力だの魔法だのは無かったからな」
「そこは他の転生者や転移者と同じじゃろ。まあ魔物に転生して自我があるということは100パーセント
「ところでさあ、さっきからオリジナルって言ってるけどオリジナルって何?」
「まずそこからか…オリジナルっていうのはじゃな…」
ロットさん曰く、
「どういうわけかその肉体とほぼ同時に転生した御主の精神が人格が生まれる前に入り込み、そのまま定着してしまったと考えているんじゃが本当のことは儂にもわからん」
とのことだった。
「もう一つ質問するけど…」
俺はさっきから気になっていたことを言うことにした。
「ん?なんじゃ」
「ここ何処?」
その問いを聞くとロットさんはニヤリと口を歪めた。
「ああ、まだこの村の名前を教えておらんかったのう。ようこそ、儂らの村『秘境 ヴェール・ウッド』へ」
こうして俺の異世界生活は始まったのであった。
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