第10話 食事と会話
ネットサーフィンをしていたときに、不意にこんな記事を見たことがある。彼氏のデート中のスマホいじりにイライラしている女性が多いとかなんとか。まあ、僕はまだ誰かとお付き合いしているわけじゃないし、これはデートもどきなわけだから関係ないのかもしれないけれど。でも、街中というか、自分の隣にいるカップル(らしき男女2人組)に目を向けると、2人ともスマホをいじっている。気になって、じっと観察してみると、インスタやらTwitterやらFacebookやら、僕が知っている限りのSNSツールを慣れた手つきで切り替えながら、いじっている。これで広告料とかいろんなお金が動いているなら、まあ仕方ないか。
一方、隣の人物は、まだ寝ているらしい。まあ、寝顔がかわいいからいいか。どうせ、もう呼ばれるだろうし。
「2名でお待ちの、中川様」
「はい」
あれ?さっきまで寝ていませんでした?こんな早く起きれるものなんですか?
店の中に入ると、「おかえりなさい」という言葉が響く。一度も行ったことがないのに、メイドカフェかと一瞬思ってしまう。しかし、眼前の風景はそうではない。ザ・昭和である。通された座敷席には、つまみ式のブラウン管テレビがある。こんなのサザエさんの世界だよな。店内のBGMは笠置シヅ子の買物ブギー。せめて、東京ブギウギにしてくれないと、若い人には絶対わからないよね。まあ、BGMって、そんなもんかもしれないけど。
店員がお冷をテーブルに置く。そのグラスは、バラバラで昔家にあったものにどれも似ている。
「ご注文はお決まりですか?」
ええっと、確か……。
「私が、道産子チキヤサカリーの卯月、トッピングはオクラで、ご飯の量は普通盛で。彼には、同じく道産子チキヤサカリーの如月、トッピングがアボカド。そういえば、佐々木くんは?ご飯の量は?」
そういって彼女が、メニューの一部を指さす。まあ、今日の胃はいろいろあって空っぽだから。
「中盛でお願いします」
「あと、2つともご飯にレモンつけてください。以上でお願いします」
その後、店員が、復唱したあと、離れていく。
「ねえ、ねえ、普段休みの日って何しているの?」
良かった。いや、毎度毎度、こんな調子で会話してていいのか。
「休みの日?勉強したり…」
「いや、勉強以外で」
「あ、そうだよね。うーん。ふらふら買い物行ったり、たまに遊びに行ったり。カラオケとか、映画とか」
「カラオケ行くんだー。あんま、イメージなかったな。何歌うの?」
カラオケ店には、あまり行かないのだが。お風呂で歌うってどこのヒロシとまる子だって話になるし。いや、一人だからあの親子とは違うか。
「特別何か歌うということはないけど……。強いて言えば全部歌えるようになりたいというか。最近の歌も好きだし、自分の知らないおもしろい歌を見つけて歌うのが好きだな。有名な歌だとみんな入れちゃうから、歌詞をよく聴けば、こんな歌、バカみたいって思えるようなのを歌う」
「そうなんだねー。確かに、カラオケっておもしろい曲、いっぱいあるよね。ザ・テレビジョンとか」
「へー。結構、詳しいんだね」
「うん、カラオケ好きだから。この後、行かない?」
「まあ、いいけど…。時間は大丈夫なの?」
「今日1日暇だから。少人数のカラオケって意外とおもしろいんだよ」
2人って少人数のレベルの問題ではないのでは?
そもそも、こんな短い会話じゃお互い飽きちゃうんじゃないのかな。何を話せばいいのやら…。
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