ギャンブル学園 確定少年と薄幸少女
新橋九段
プロローグ
三十七分の一。つまりおよそ二・七パーセントがどの程度の確率なのか、人はなかなか想像することができない。ちょっと考えてみよう。
例えば、コインを投げるとする。このコインが四回連続で表を出すと、その確率はおよそ二・八パーセントになる計算だ。絶対にありえないというほどの確率ではない。何度も何度も繰り返せば、いずれは到達する数字。宝くじ売り場で「夢を買う」よりはよっぽど現実的な数字……だけど、やはり確率としては低い。
世の中にはどうしようもなく自分に自信を持っている人間というのがいる。それが自分を大きく見せる戦略にせよ心の底からそう思っているにせよ、僕から見れば痛々しい限りだ。全てのものは根拠に基づくべきであり、自信も例外じゃない。だから「自分は絶対にギャンブルで勝てる」という自信も、言い換えれば特定の事象を自分の都合のいいように引き起こすことができるという妄信であり、根拠のない自信であるはずだ。
しかし、僕の目の前にいるこの男は、鳥羽高校理事長であり五十数年の人生において片手で数えるだけしか賭け事で負けたことのない男は、確固たる根拠と自信をもってこの勝負に臨んでいる。人生という遠大すぎる帰納法をもって、自分がこのギャンブルに勝つと確信している。くるくると回るルーレットが、ランダムに跳ねるボールを自分の都合のいい場所へ運んでくれると信じている。
運命が、僕たちを地獄の底へ叩き落すと信じている。
対する僕たちには、ほんのわずかな根拠と、それを上回る「根拠なき自信」しかなかった。
この勝負、負けるはずがない。
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