本当の願いは叶う

天風いのり

お見舞い

 未来の自分の事は、何も想像できない。

 将来、どんな仕事をしたいのかなんて、具体的には思いつかない。

 だけど私は、ファッション系の仕事をしたいって、思うんだ。

 私のおじいちゃんは、私がまだずっと小さい時から、入院してた。

 元々、おじいちゃんはすごくガンコで。

 おばあちゃんやお母さんに、どれだけ注意されても、タバコをやめなかったし。

 しょうゆとかソースとかも、ドバドバかけて食べてた。

 そんなおじいちゃんだけど、最初に「入院する」って聞いた時は、さすがに驚いたよ。

 当然と言われれば当然の事だけど、それでもやっぱり、私のおじいちゃんだもん。

 おじいちゃんのジゴウジトクってやつでも、入院するってなったら、心配して当たり前じゃん。

 おじいちゃんは、タバコをやめて、病院のご飯を食べて。

 病気が治るようにって、それからずっと入院したままだった。

 ずっと、ね。

 ある日、私がおじいちゃんのお見舞いに行った時、自分の将来の夢の話をした。

 服が好き。お洒落が好き。

 それだけの、まだちっぽけな理由で話した私の夢を、おじいちゃんは珍しく真剣に聞いてくれて、教えくれたの。

「七夕ってあるだろ? あれは、裁縫や機織りが上達するように願う風習から来てるんだ。お前が本当にファッションとやらを目指すのなら、七夕の日に願えばいい。ま、本気だったらの話だがな」

 おじいちゃんは、私の事をちょっと心配していたのかもしれない。

 普段のおじいちゃんなら、私は全然話せないのに、おじいちゃんばかりペチャクチャ喋る。

 それが、この時は違ったんだ。

 おじいちゃんは私が、本気になって夢を追いかけてるのかどうかって所を、ずっと聞いてくれていたけれど。

 私自身、自分がこの夢に本気かどうかなんて、分かってなくて。

 おじいちゃんを、うっとうしいなあ、ってね。

 なのになぜか、おじいちゃんが話してくれた七夕祭りの話が、心に引っかかったんだ。

 私はその年から、七夕の夜、星に願った。

 ━━夢が叶いますように。

 何の夢を、とは言わないで、夜空を見上げる。

 でも今年だけ、私は願い事を変える事にした。

 ・・・・・・おじいちゃんの病気が、悪くなってるんだって。

 お母さんは心配そう。

 おばあちゃんも、なんだか不安そうにしてる。

 タイクツな日々が流れてく。

 もうすぐで七月だ。

 私は、七夕かざりを作り始めた。

 お母さんに手伝ってもらいながら、おりづるや、くずかごや、神衣かみこなどを作る。

 神衣だけは、お母さんの力を借りないで、自分の力だけで作った。

 七夕かざりを教えてくれたのは、おばあちゃん。

 作り方も、おばあちゃんが教えてくれた。

 お母さんは、なんだか、なつかしそうで。

 一緒に仲良く、小さな笹にかざりつけをしたんだよ。

 たんざくには、みんなでおんなじ願い事を書いた。

 ━━おじいちゃんが、早く退院できますように。

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