重装令嬢モアネット/さき
角川ビーンズ文庫
登場人物紹介/プロローグ
◆◆◆登場人物紹介◆◆◆
モアネット・アイディラ
幼い時のトラウマから、全身に“鎧”を纏う令嬢。
パーシヴァル・ガレット
王子の護衛騎士。寝ぼけると奇行に走る。
アレクシス・ラウドル
モアネットの元婚約者で、国の第一王子。
エミリア・アイディラ
モアネットの妹。キラキラしたものが好き。
ジーナ・アバルキン
隣国に住む妖艶な魔女
コンチェッタ
ジーナの使い魔。にゃんこ。
◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆
重装令嬢モアネット
「お前みたいな
それが、モアネット・アイディラが彼と初めて顔を合わせた日に言われた言葉である。
そして、モアネット・アイディラが最後に聞いた彼の言葉でもある。
なんて
幼いモアネットはこの言葉に悲しみ、そして傷も
そして、頭の
チチ……と鳴いた鳥の声に、モアネットがつられるように頭上を見上げた。
木々の葉が重なり合い、その
通常であれば目を痛めかねない
「日が
長居しすぎちゃった、そう
両手で
早く帰ろう、そう考えてモアネットが少しだけ足を速めた。鳥の鳴き声と葉音しかしないはずの静かな森の中、ガシャンガシャンと不似合いな鉄の音が
だがこの音が鳴るのも仕方ないだろう。なにせモアネットは鉄の鎧を
そうしてどれほど
なんとも皮肉な渾名ではないか。だが鉄の鎧で覆いつくしたこの姿は重装でしかなく、そして令嬢であるのも事実である。もっとも、令嬢といえど森の奥にある古城に一人で生活しているモアネットには貴族の
だからこそ『重装令嬢』というこの渾名は皮肉めいていて、モアネット自身
勝手に言わせておけばいい、どうせ人と
それに、
「パンにジャム、それに干し肉。来週はワインを持っていってちょっとお金を増やそうかな」
森の中にある古城に着き、買ったものをテーブルに広げる。そうして買い忘れがないことを
パサと
週に一度の市街地までの買い出しは、モアネットにとって酷く
そのうえ市街地に着けば当然だが人がおり、人目に晒されていると考えれば鉄で覆われているというのに冷や
「醜い」と
そんな市街地に対して、この古城はモアネット以外
なんて落ち着くのだろうか。一生この古城の中で暮らせればどんなに良いか。
だけど生きていくためには食べ物が必要である。野菜であればモアネットも多少なり作れるが、パンや加工食品はさすがに一人では補えない。
それを買うためには、やはり市街地に行かねばならないのだ。
「お金を
ふと、自分以外の声を聞いてモアネットが言葉を止めた。次いで足音を
重装令嬢の
さすがにこんな
そんなことを考えつつ用心するように扉のノブに手を
そして、その先に居る人物に目を丸くした。
深い茶色の髪に同色の瞳、目鼻立ちの整った青年。
そんな青年を見た
『お前みたいな醜い女と結婚なんかするもんか!』
と、かつて聞いた幼い少年の言葉が
……そして、反射的に勢いよく扉を閉めた。
それはもう扉が
人間の反射神経とは良く出来たもので、扉が閉まってようやくモアネットが
だが扉の向こうにいる二人も大人しく帰る気はないようで、
「モアネット、君なんだろう! 開けてくれ!」
「
そう
だがそれに対してモアネットは返事をすることもなく、クルリと
この古城には誰も来ていない。誰も扉を叩いていない。誰も訴えていない。そう自分に言い聞かせ、男二人の
「お
「モアネット、君が
「モアネット嬢、どうか少しだけ時間を!」
「紅茶を
「僕を
「モアネット嬢! このさい話どうのは置いてひとまず
「
呼び掛けどころか悲鳴交じりに扉を叩かれ、今まで無視を貫いていたモアネットもこれには「
そんなふうに首を傾げつつ、それでも
彼等を招き入れるのは
だからこそ仕方ないと扉を開ければ、男が二人慌てて飛び込んできた。次いで狼が入り込まないうちにと扉を勢いよく閉める。
よっぽど慌てていたのだろう──まぁ、狼が
麗しく
そんな青年に対し、モアネットは
「お久しぶりです。アレクシス王子」
そうモアネットが告げれば、鉄の鎧がギシと重苦しい音をたてた。
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