上演

 まずは自己紹介かしらね。

 私はカンナ。見てのとおり、学生よ。

 今から話すのはこの場所に関する話、それとここで起こった出来事なんだけど。

 よくある怪談よ。

 ある人物がここで亡くなったの。自殺だったのか、他殺だったのか、はたまた事故だったのか。その辺りは定かではないけれどね。

 ともかく、その人物は何か心残りがあるらしくてここを彷徨っているの。所謂幽霊、ね。

 ……え?性別?ああ、そうね。普通こういう時は男性、だとか少女、だとか言うものね。いいじゃない、それは一先ず置いておきましょう。


 それで、ここで起こった出来事ね。

 色々あったから全部は覚えていないのだけれど。

 ポルターガイストや血文字はもちろん、得体の知れないものが迫ってきたり、ドアの鍵が勝手に締まったり。

 ホラーと呼ばれる現象は一通り起こったわ。

 怖くなかったか?それなりには怖いわよ。ところで貴方は気付かなかったの?ポルターガイストの時なんて結構派手な音がしていたけれど。

 そう、気付かなかった。じゃあ、やっぱり……

 いえいえ失礼、こっちの話よ。

 今は落ち着いているようだけど、次はいつ起こることかしらね。


 ところで貴方はどうしてここに居るのかしら?

 わからない、ね。

 じゃあ、いつから?

 それもわからない。

 ごめんなさい、責めているつもりはないのよ。

 だけど、何もないのにこんなところにいるわけはないと思うの。

 私はね、貴方が

 ただ、それを教えることはできないの。

 貴方自身で気づかなくては、意味がないから。

 

 え、幽霊の正体が私じゃないかって?

 よく言われるわ、それ。この間も言われたもの。でも違うわ。私は人間。こんなナリだけどね。


 しかしやっぱり思い出せない、か。

 じゃあもう少しお話しましょう。

 幽霊、って一口に行っても色々いるのよ。

 例えば恨みがあって成仏できない者。

 例えば心配事があって成仏できない者。

 それから、自分が死んだと認識できていない者。

 恨みがある幽霊はその恨みを向ける相手が大抵固定されているし、その相手がひどい目に会うなりなんなりすれば成仏する。心配事がある幽霊はなんだかんだ早期に解消されることも多いし。

 だけど、生きていると思い込んでいる幽霊は目的なく彷徨うだけの存在。わからないから成仏も何もないのよね。でも生きているわけではないから、その存在は曖昧なものになっていく。悪霊って、このタイプが実は一番多かったりするの。周りの悪いオーラばかり吸い込んでしまって、本人も無意識に霊障を起こしてしまうの。成仏できない霊は次第に自我を失うのよ。


 ……ええ、そう。よくわかったわね。

 その通り。

 幽霊は貴方よ。

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