ぱらのいあ~闇い部屋と少女の御話~

蒔田舞莉

序幕

 暗い部屋に私はいる。

 床はくすんだフローリング。壁紙は元は白かったのだろうが、今は汚れが目立ち、茶色に見える。

 部屋の角部分は剥がれ、床のくすみとともに古さを表していた。

 明かりは朽ちかけのスチールデスクに置かれた蝋燭だけ。その他には何もない。

 ただ、その部屋には私以外の人間もいた。

 幼い少女だ。

 少女の顔は青白く、血が通っているのか疑わしくなるほど。腕も足もヒョロヒョロと細長く、病的な印象を与えている。

 服もなんだか古めかしい。光沢のない黒のセーラー服。スカートの丈は当たり前のようにひざ下だ。

 どうしてこの部屋にいるのかはわからない。気がついたらここにいた。

 少女も、気がついたらそこに居た。

 頭がぼぅっとして、まともな思考ができない。


 ――ねえ、貴方


 少女が口を動かした。

 小さな声ではあったが、静寂が支配していたこの場では不気味なほどによく響いた。


 ――少し、お話しない?ああ、返事はいいわ。嫌なら遮ってもいいけれど、そうじゃなければ勝手にしゃべっているから。適当に相槌うって。それも嫌なら、まあいいわ。


 聞く理由がない代わりに、聞かない理由もない。

 私は素直に少女の話を聞くことにした。

 それに、もしかしたら、何かわかるかもしれない。

 それが何のことなのか、そしてわかるべきことなのか、それはわからないけど。

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