試験

サーロスと約束を交わしたその一週間後から、試験が始まった。

入学当初に受けた単位認定試験とは別に、授業を受講をした場合または受講必須の教科は秋と春に試験を受けて単位を取得する仕組みだ。

各教科それぞれの授業の時間に、試験は行わられる。

学院内はいつにも増してピリピリとした雰囲気が漂っていた。

試験開始日目前ともなると、寮の食堂ですら

皆が教科書を持ち込み勉強している姿を見かけたほどだ。

皆の試験に対する思いというものが、よく伝わってくるようだった。


私の場合、一般教養は受講していないので試験も当然ない。

魔法分野の学科についても、幼い頃から相応に勉強し、かつ、授業を真面目に受けているため、問題なし。

唯一魔法実技だけは、試験のことを考えると頭の痛い科目だったのだけれども……。

それもサーロスとの訓練のおかげで、威力の調整ができるようになったので問題がなくなった。


というわけで、このピリピリとした雰囲気の中、私は割とのんびりとさせてもらっていた。


行った試験対策といえば、感覚を忘れないように毎日魔の森で威力を調整した魔法を放つこと……つまり、いつもの訓練と同じということだ。

しかも、サーロスも共に訓練していたので、本当にいつも通りだった。


何でも、サーロスもまた一般教養は学院入学前に騎士団の面々に叩き込まれたらしい。

……知っておいて損はない、むしろ知識は叩き込める時間がある内に叩き込め……とはロンデル様の言葉なのだとか。


そして、試験当日。

実技授業の試験は、授業で学んだ魔法で的を破壊することだ。


私の番が来て、待合室から出て訓練場に足を運ぶ。

普段授業で多くの人がいるここも、今日は試験のため一人で静かだった。


目を閉じて、心を鎮める。


「クラール、始めろ」


教師の言葉に目を開け、そのまま口を開いた。


「火球」


私の放った魔法が、的に当たる。

威力を抑えることに成功したそれは、他のものまでを破壊することなく的だけを粉砕していた。


確かな手ごたえに、内心拳を握る。


その後も幾つか魔法を放ち、それは全て見事に的のみを破壊した。


試験期間はまだ続くけれども、私は今日で全て受け終わった。


ピリピリとした雰囲気が漂う学院内は居心地が悪く、私は早々に帰宅すべく寮へと向かう。


「……あ、サーロス君。貴方も、帰るところですか?」


よくよく考えたら、彼の受けている授業は私と同じく必須科目のみ。

という訳で、帰るタイミングが同じだというのも当然といえば当然だろう。


「うん、そうだよ。すぐそこだけど、一緒に帰ろっか」


「ええ、そうですね」


そうして私たちは寮へと足を進めた。






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