提案
「……なあ。クラールさんって、組合に登録をしている……よな?」
それから更に何発もの上級魔法を練習した結果、すっかり魔力を使い切ったらしいサーロスが寝そべりながら私に問いかける。
私はといえば、自由気ままに暴れつつ魔獣を狩ってきてご満悦なルーノを撫でながら近くに座っていた。
「ええ。それは、勿論」
「それなら、今度訓練がてら一緒に討伐系の依頼を受けないか?二人で受けると、効率が上がると思うんだ」
「……ええ、良いわよ」
ルーノの存在は知られてしまっているから、共に依頼を受けることは吝かではない。
何より、テレイアさんのところに仕送りをし過ぎて懐が寂しい私には、むしろありがたい申し出だ。
そもそもしっかりと金銭の管理をしなかった自分が悪いのだけれども、冬が迫る中備蓄を進めなければならないことを考えると、あればある方が良いよなあ……ということで、あるだけ全てテレイアさんに渡してしまった。
……プレアグレアの見舞金という名目の迷惑料をロンメル様所属の騎士団よりいただいて、気が大きくなってしまっていたというのもあるだろうが。
それはともかく、自分の冬支度が必要なことを思い至った時には後の祭り。
今は早急に先立つものを手に入れる必要があるのだ。
……サーロスと共に依頼を受ければいつもの労力の2分の1で達成ができるであろうし、訓練も同時にできて一石二鳥。
「ただし、一つ条件があるの」
そんなありがたい条件を提示してもらっておいて何様だと言ったところだが、それだけは譲れない。
「貴族の依頼は決して受けないこと。それが、条件よ」
まれに、貴族が依頼を出すことがある。
自身が預かる領地のため……ということは勿論なく、魔獣の毛皮や牙を欲してというのが大抵の理由だ。
……どんな理由だろうが、そもそも貴族と関わりたくない私にとっては関係のないことだが。
私の言葉に一瞬サーロスは驚いたように目を見開き、まじまじと様子を伺うように見つめる。
その視線から目を逸らさないようにしていたため、しばらく無言で見つめ合うような状況が続いた。
無言が続く中、不思議と重苦しい雰囲気はなくむしろその静寂が心地よいとすら感じる。
「そっか……うん、それで良いよ」
口を開いたのは、サーロスの方だった。
そう同意した彼の顔に浮かぶのは、苦笑だ。
「じゃあ、次の休日に二人で依頼を受けに行こう」
「ええ、分かったわ。それじゃあ、組合本部の前で待ち合わせね」
「……学院から一緒に行った方が早くないか?」
「貴方と行くと、目立ちそうだもの」
「まあ、別に良いけど……」
「擬態させたルーノを連れて行くから。それを目印にしてちょうだい」
そうして約束を取り付け、その日私たちは解散した。
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