組分

「……今日より一週間後、実地訓練を行う!」


ストレス発散兼魔獣討伐をしてから幾日。

女子生徒からの風当たりがキツイこと以外は特に何もなかった、ある日のことだった。


実技の訓練での教師から、そんなお達しがあった。

そしてその内容に、内心私は衝撃を受けているところだ。


……この練度で、魔の森の探索をするの?と。


数チームに分かれて魔の森を探索するだとか、注意事項を延々と教師は言っていたが、そんなのは正直どうでも良い。


何が問題かといえば、生徒たちの練度だ。

ただでさえ魔の森に出没する魔獣の数が増えているというのに、下級の魔獣の討伐がやっとぐらいの実力の彼らが行けば、命が幾つあっても足りない。


「……先生。魔獣が増えているという話を聞きます。実地訓練は止めた方が良いのではないでしょうか」


一応提言したものの、教師はそれを一蹴。

むしろ気概がないだとか、怖気付いたのかなど罵られる始末。


「……僕も聞いていますよ。魔獣の数が増えていると。無理をするよりも、着実に実力をつけた上で実地訓練を行った方が良いのではないでしょうか」


一応サーロスが私を援護するかのような発言をしてくれたけれども、結局教師は『恒例行事』だの『今更カリキュラムを変えることはできない』などと言い訳をするだけして話を強制的に終わらせてしまった。


本当に大丈夫なのか……と内心溜息を吐く。

まあ、誰がどうなろうともどうでも良いかと諦めることにした。


……なのだけれども。


「よろしくね、クラールさん」


教師から言い渡された同じチームの面子に、私は本格的に座実地訓練をサボりたくなった。


まず、サーロス。

少し考えれば実技の成績が底辺を彷徨う私と、実技最高得点を更新し続ける彼が同じチームになるのは分かることだというのに。

全くその考えに行き着かなかった。


「きゃあ!サーロス君、よろしくね」


そして、私に水魔法をお見舞いしてくれた彼女。……名前、何だっけ?


「こちらこそ、よろしくね。ミルズさん」


ああ、ミルズか。


「平民と一緒とは……」


「全く、先が思いやられるな」


そして貴族の坊ちゃん二人。

本当にこのメンバーで闘うのか!?

実力云々もあるけれども、連携のれの字もないようなこのメンバーで果たしてどう戦えと。

思わず、深く溜息を吐いてしまった。



それから一週間、実技の授業の間はチームごとに分かれて連携を確かめ合うのに充てられた。

当初の予想通り、連携も何もあったものではないけれども。


まず貴族の坊ちゃん二人……赤毛のルクセと焦げ茶の髪色のダルメは全くの論外。

連携など必要ない、平民などと協力できるかの一点張りだ。

そのフォローを、さりげなくサーロスがしていることについては凄いと純粋に思う。

彼らに気づかせない技量もさることながら、そもそもで私だったら二人を捨て置くというのにしっかりとフォローしてあげるという心意気もだ。

まあ、凄いと思っても自分もそうなりたいとは思わないけれども。



そしてミルズ。彼女は基本的にサーロスにしか興味ない。ということで、協力などしない。私との連携など考えもしてなさそうだし、むしろ邪魔だと言わんばかりだ。


最後に、協調性のカケラもない私。邪険にされていてそれでも協力しようという精神は残念ながら私の中にはないのだ。


……うん、まともなメンバーがいない。

つまり、このチームはサーロスの力でなんとかチームとしての体面を保っているというわけだ。


……ああ、気が重い。


そうして……訓練になっていない訓練を重ねて、実地訓練の日をむかえた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る