MAHO×TEEN
夢楼
第1話 ハジマリハジマリ
暑い日光がアスファルトを刺激し、熱の跳ね返った空間は陽炎に包まれて揺らめいている。
街は猛暑、木々が並ぶ堤防のサイクリングロードも木々が日光を遮ってくれるわけもなく決して涼しいわけではない。
耳を劈く蝉の声も、暑苦しい野球部の声も、陽炎に歪ませられて熱に混ざりあっている。
一定の間隔で声を上げるこの蝉たちも、7日経って私たちと同じ世界にいないかもしれないと考えると、いや、もうそんなのどうでもいい。
とにかく、早く暑い日光も陽炎も、煩い蝉の声もない、涼しくて静かな室内に逃げたいものだ。
夏が嫌いなごくごく普通の女子高校生。髪はツインテールをお団子にし毛先を出して、前髪はお気に入りの黄色のピンで留めて。
部活無所属なうららは、同じく部活無所属の同学年仲間4人と一緒に帰宅するのだ。今がまさに、帰宅途中の午後3時45分。
夏の一番暑い時間帯は過ぎたというものの、さすが真夏というだけあって32℃は譲らない。
「うえぇ……暑すぎ……吐きそうゲロでそう…」
ソーダ味の青い氷菓アイスを食べながら口にする言葉は、如何なものか。
「今ゲロったら青なんじゃろ!吐け吐け!青いゲロじゃ!ぎゃははは!」
「れもん言い方、汚いぃー…リバースしても、るなたちは知らないよぉ」
面白がって賛成するは、
そしてまともな反応は、
「お前、こんな暑い中リバースしたらお前の口にリリースするからな。やめろまじで。気持ち悪い。リバース&リリースだからな。」
「りんちゃん!うまいっ!キャッチアンドリリースに掛けているんだね!でもそしたらりんちゃんがキャッチしなきゃないのかな…!」
夏の暑さで吐きそうなうららに、猛暑の中ありがたき冷たい対応。
そしてなにやら訳のわからないことを言うは
幼いころの事故で片目を失明して以来、右目を眼帯で過ごしている
毎日のありふれた日常、真夏の陽炎に揺らがされる街並み、課題に追われる毎日と、授業を乗り越えようというくだらない妄想と。
ふと、そんな日常に笑いかけた時。
蝶が日光を反射させきらきらと
そんな日々なんて、強いようで
蝶のひとはばたきで、世界は変わる。
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